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七章
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頭書きにはこう書かれていた。
〝そこにいるシャンリンメイは、俺が尻を嗅いだと言うだろうが、それは猫の姿の話であり、人の姿の時の話ではない〟
それを読んだカイナは、シャンリンメイを一瞥して言う。
「シャンリンメイさん、猫の姿に成れたりするの?」
「もちろんニャ~」
そう言って猫の姿に変わった彼女は机に飛び上がって、ニャ~と鳴いてみせた。
そして、手紙の続きを読んだカイナはクスっと鼻で笑ってしまう。
〝こう書いておけとホウデンシコウがうるさいため、一応報告しておくとする、俺が嗅いだのは猫の尻だ、しかも無理矢理にだ〟
カイナはその様子を頭に思い浮かべて、ロウの困った顔が浮かぶと声に出して笑ってしまう。
シャンリンメイは、何か面白いことでもあったのかニャ?と言って興味津々でカイナの方を見ていた。
手紙には、今はロウが南西の方角にいる事、そして、カロナの成長を想像で書き綴られていて、カロナの為にスイリュウの護石を首飾りにして送ったと書いていた。
「これのことね、ロウがカロナのために……きっとカロナも喜ぶわ」
手紙を読み進めると、カイナにも贈り物があると書かれていて、それが二つある事を知るとカイナは疑問をシャンリンメイにぶつけた。
「シャンリンメイさん、私への贈り物をまだ貰っていないんですけど……」
ピタッと動きを止めるシャンリンメイは、徐に自身の服を脱いで、地肌に着けていた毛皮の上着らしき物を脱いで手渡し、左手首に着けていた木製の腕輪も手渡す。
「忘れてたニャ~この毛皮とこの木の腕輪だニャ~」
なぜに身に着けていた!とツッコミたい気持ちを抑えて、カイナはそれらを受け取り机に置く。そして、視線を手紙に戻すと続きを読み始めた。
〝一つは毛皮で一つは腕輪だ、腕輪は俺が付けていた物でキリンの加護が付いてある。それで、もう一つは、俺が生皮を剥がされた時の毛皮だ〟
ん?俺が?生皮を?剥がされた?んん?
カイナは自身の読解力が足りないのかと一瞬思い、もう一度読み返した。だが、そこには確かに、ロウが生皮を剥がされたと書かれていた。
カイナは全身にゾワゾワと鳥肌が立ち、背中に力が入るとそのまま血の気がサーと引いて、正座した状態から後ろにバタンと倒れてしまう。
愛する狼姿のロウが、生きた状態で生皮を剥がされる様を思い浮かべて、その痛みや苦しみを想像してしまった結果の気絶だ。
カイナが倒れる様を見ていたシャンリンメイは、冷め始めたお茶に指を突っ込みながら言う。
「感受性の高い子ニャ~、うニャ!この熱さなら!あニャ!まだ熱いのニャ~飲めないの辛いニャ~」
しばらく気を失っていたカイナが目を覚ますと、頭の後ろに柔らかいクッションを感じて、視界を動かすとシャンリンメイが顔を覗き込むようにして視界に現れた。
「大丈夫ニャ?カイニャ」
「膝枕……してくれてたんですか?」
「特別ニャ~、ニャーの膝枕は師父とロウとカイニャ」
カイナをカイニャって言っちゃうんだ~カワイイ~。
ホッコリしたカイナは頭を起こすと、毛皮が目に入り深呼吸しながらそれを手に取る。
「ロウの毛皮……私が抱き締めたり、撫でたり、毛繕いしてきた毛……」
不思議ともうそれに触れても、愛おしさ以外は感じなくなっていたカイナ。
触れると何だか懐かしい、ロウの毛を梳いていた頃を思い出すな~。
微笑むカイナをジッと見ていたシャンリンメイは、小さく呟く、ロウが好きになったのも理解できるな、そうカイナには聞こえない声で。
「そうだシャンリンメイさん、これからお昼を作るんだけど食べる?」
「食べるニャ~!でも猫だから鍋とかは無理ニャ~」
仙人とは一癖も二癖もある、そうと知らないカイナではないが、シャンリンメイはその範囲には収まらない。
「ニャ~カイニャ、カロナはいつ頃帰ってくるのかニャ~」
カロナはカロニャってならないのか~カワイイな~。
「カロナ?そうだな~もしあるとすれば、あと三年くらいは帰ってこないかな~。あの子薬学院に受かってね、これから三年間は寮生活なの~」
シャンリンメイはそれを聞いた瞬間、その場で崩れるように体を床に伏せて、深い溜め息を一度だけ吐いた。
「はぁ~ロウの子どもに気に入られてロウが無視できない立ち位置に今のうちに至るつもりだったのに……三年もいないとかマジ――」
「はい?何か言った?」
「な~んでもないニャ~飯~まだかニャ~」
シャンリンメイは猫ではなく、猫付きの人であり、その語尾や仕草は基本的に後付けである事実は、後にホウデンシコウから聞くことになるが、この時のカイナはまだ知らない事だ。
〝そこにいるシャンリンメイは、俺が尻を嗅いだと言うだろうが、それは猫の姿の話であり、人の姿の時の話ではない〟
それを読んだカイナは、シャンリンメイを一瞥して言う。
「シャンリンメイさん、猫の姿に成れたりするの?」
「もちろんニャ~」
そう言って猫の姿に変わった彼女は机に飛び上がって、ニャ~と鳴いてみせた。
そして、手紙の続きを読んだカイナはクスっと鼻で笑ってしまう。
〝こう書いておけとホウデンシコウがうるさいため、一応報告しておくとする、俺が嗅いだのは猫の尻だ、しかも無理矢理にだ〟
カイナはその様子を頭に思い浮かべて、ロウの困った顔が浮かぶと声に出して笑ってしまう。
シャンリンメイは、何か面白いことでもあったのかニャ?と言って興味津々でカイナの方を見ていた。
手紙には、今はロウが南西の方角にいる事、そして、カロナの成長を想像で書き綴られていて、カロナの為にスイリュウの護石を首飾りにして送ったと書いていた。
「これのことね、ロウがカロナのために……きっとカロナも喜ぶわ」
手紙を読み進めると、カイナにも贈り物があると書かれていて、それが二つある事を知るとカイナは疑問をシャンリンメイにぶつけた。
「シャンリンメイさん、私への贈り物をまだ貰っていないんですけど……」
ピタッと動きを止めるシャンリンメイは、徐に自身の服を脱いで、地肌に着けていた毛皮の上着らしき物を脱いで手渡し、左手首に着けていた木製の腕輪も手渡す。
「忘れてたニャ~この毛皮とこの木の腕輪だニャ~」
なぜに身に着けていた!とツッコミたい気持ちを抑えて、カイナはそれらを受け取り机に置く。そして、視線を手紙に戻すと続きを読み始めた。
〝一つは毛皮で一つは腕輪だ、腕輪は俺が付けていた物でキリンの加護が付いてある。それで、もう一つは、俺が生皮を剥がされた時の毛皮だ〟
ん?俺が?生皮を?剥がされた?んん?
カイナは自身の読解力が足りないのかと一瞬思い、もう一度読み返した。だが、そこには確かに、ロウが生皮を剥がされたと書かれていた。
カイナは全身にゾワゾワと鳥肌が立ち、背中に力が入るとそのまま血の気がサーと引いて、正座した状態から後ろにバタンと倒れてしまう。
愛する狼姿のロウが、生きた状態で生皮を剥がされる様を思い浮かべて、その痛みや苦しみを想像してしまった結果の気絶だ。
カイナが倒れる様を見ていたシャンリンメイは、冷め始めたお茶に指を突っ込みながら言う。
「感受性の高い子ニャ~、うニャ!この熱さなら!あニャ!まだ熱いのニャ~飲めないの辛いニャ~」
しばらく気を失っていたカイナが目を覚ますと、頭の後ろに柔らかいクッションを感じて、視界を動かすとシャンリンメイが顔を覗き込むようにして視界に現れた。
「大丈夫ニャ?カイニャ」
「膝枕……してくれてたんですか?」
「特別ニャ~、ニャーの膝枕は師父とロウとカイニャ」
カイナをカイニャって言っちゃうんだ~カワイイ~。
ホッコリしたカイナは頭を起こすと、毛皮が目に入り深呼吸しながらそれを手に取る。
「ロウの毛皮……私が抱き締めたり、撫でたり、毛繕いしてきた毛……」
不思議ともうそれに触れても、愛おしさ以外は感じなくなっていたカイナ。
触れると何だか懐かしい、ロウの毛を梳いていた頃を思い出すな~。
微笑むカイナをジッと見ていたシャンリンメイは、小さく呟く、ロウが好きになったのも理解できるな、そうカイナには聞こえない声で。
「そうだシャンリンメイさん、これからお昼を作るんだけど食べる?」
「食べるニャ~!でも猫だから鍋とかは無理ニャ~」
仙人とは一癖も二癖もある、そうと知らないカイナではないが、シャンリンメイはその範囲には収まらない。
「ニャ~カイニャ、カロナはいつ頃帰ってくるのかニャ~」
カロナはカロニャってならないのか~カワイイな~。
「カロナ?そうだな~もしあるとすれば、あと三年くらいは帰ってこないかな~。あの子薬学院に受かってね、これから三年間は寮生活なの~」
シャンリンメイはそれを聞いた瞬間、その場で崩れるように体を床に伏せて、深い溜め息を一度だけ吐いた。
「はぁ~ロウの子どもに気に入られてロウが無視できない立ち位置に今のうちに至るつもりだったのに……三年もいないとかマジ――」
「はい?何か言った?」
「な~んでもないニャ~飯~まだかニャ~」
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