聖獣物語~人狼の森のロウとカイナ~

tobu_neko_kawaii

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七章

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 ホウデンシコウとは数年一緒にいたため、カイナは彼をコウと呼んだが、シャンリンメイとはたった二日、とてもではないがメイと呼べるほどには関係が深まっていなかった。

 時間もあるが、シャンリンメイ自身がカイナと仲良くなりたいようには見えなかったことも、カイナが親しげにしない理由でもある。

「お休みなさい」
「……待つニャ」

 シャンリンメイは客間である隣の建物から、自身の部屋へと帰ろうとするカイナの腕を掴む。

「少しだけ話をするニャ、とりあえず一緒に寝るニャ」
「……え?話をするんだよね?どうして寝るの?え?どういう事?」

 訳も分からないまま、布団へと連れ込まれるカイナは、今朝のことを思い返して身構える。

「わ、私にはロウって夫がいるから!こういうことは――」
「聞くニャ、いいえ……聞いて欲しいの」

 口調の変化に加え、声のトーンの違いにカイナは口を閉じる。

「本当は話さないでおこうと思ってたけど、私がシャンリンメイになる前。シャンというところのリンの娘メイであるもっと前、私は……リナという人狼だったの」

 そうしてシャンリンメイは、自分がリナであることと、ロウを愛していること、結ばれたいと想っていること、ロウとの過去をカイナに話した。

 カイナは静かに聞いていて、話終えたシャンリンメイの顔をロウソクの明かりの中で見つめていた。

「ロウはきっと私のことを知ったら優しく受け入れてくれると思うの、きっとそう……ロウは優しいから」

「……そうだね、ロウはシャンリンメイ……いいえ、リナという女の子の想いに答えると思うわ。たとえ私を愛していても、カロナを愛していても、それには答えると思う」
「そうなったら、カイナはロウを許す?それとも許さない?」

 カイナの背中に話しかけるシャンリンメイは、その小さな背中にゆっくり触れる。

「私は許さなくてもいい、でも、そうなった時にはロウを責めないでいてあげてほしいの」
「……」

 カイナはしばらく何も答えなかった。そして、次に彼女が話し始めた時、それをシャンリンメイは受け入れようと心に決めていた。

「……私は、私が特別だって考えたことはないの。リナさんがロウを想っている気持ちは心から分かるから、できれば、ロウのしたいようにさせてあげたいし、二人がそうなった時に、私が誰かを恨むことはないよ。だって、人の好きという気持ちは必ず互いのためになるから、だから、ロウの為になるなら、それなら私はそれを恨んだりしないよ」

 カイナはそう言うと、体をゴロンと寝返らせ、シャンリンメイに向き合う。

「あなたがリナだろうがシャンリンメイだろうが、ロウを好きで、それにロウが答えたなら、私は受け入れる」
「カイナ……」

「もちろん嫉妬もするけどね」
「嫉妬するニャ?」

「します、女の子は好きな男の子が他の女の子と仲良くしてたら嫉妬します」

 そう言い切るカイナに、シャンリンメイはカイナの手を掴むと、ゆっくりと額に当てて言う。

「誓ってカイナの知らないところでロウと関係を持ったりしない、誓ってロウを苦しめることはしない、ロウが拒絶したなら私は身を退く」

「……約束ですね」
「約束ニャ」

 そう言うと二人は互いに目を閉じた。

 そのまま、二人が眠ると、カイナはロウの夢を見て、また、シャンリンメイもロウの夢を見て、互いに幸福な気持ちの夜を過ごした。

 そうして、翌朝、アシュがカイナの元を訪れて、カロナへの荷物を受け取りにきたのだが、その荷物には不自然な白猫が傍にいた。

「カイナさん……この白猫は?」
「あ、その子もカロナの届けて、名前はメイちゃんです」

 アシュはその白猫を不思議そうに見るが、すぐに受け入れてカイナの言う通り、大切そうに荷物の上へと乗せて馬車を走らせる。

「またね~メイちゃ~ん」

 シャンリンメイが猫の姿であることを理由に、メイちゃんと呼ぶカイナは、少しだけそう呼べたことに微笑んでいた。

 カロナの腕に着けられた木の腕輪を見るシャンリンメイは、カイナを守ってね、とそう呟いて、アシュは一瞬振り返るが、そこには白猫一匹だけであるため、小首を傾げて前を見た。

 カイナが付けた腕輪はキリンの加護が無くなって、ガクライによって仙器として力が込められた物。アレはあらゆる外敵からカイナを守るけど、壊れたり破れたりするとガクライにもその影響ができる仕組みになっている。

「カイナの身に危険が迫ったらガクライの力で障壁が張られ、もしもその壁を壊すほどの脅威なら、あの腕輪の破壊と引き換えにガクライがカイナの元へ現れる仙器。この世界の何者もカイナを傷つける可能性はないわ」

 その呟きで再び後ろを向くアシュに、シャンリンメイは白猫に相応しい猫なで声で言う。

「ニャ~」
「……だよな、猫だけだよな……気のせいさ、猫が喋るわけがない……働き過ぎかな?」

 自身の空耳と思い込むアシュは、安全にいつも通りに、カロナの待つテンへと馬を操る。
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