聖獣物語~人狼の森のロウとカイナ~

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八章

八章ノ弐『中学年クラス』2

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 トスルは食堂から離れてすぐ立ち止まると、二人の様子を確認する。

「大丈夫かい?ノノ」
「……ご、ごめんなさい、ダメかもです、でも、泣かないです!泣かないと決めてます!」

 ノノは怖くて仕方がなかった様子だが、カロナは平然としている、そうトスルは
思っていた。

「カロナは大丈夫かい?」
「……うん、大丈夫だよ」

 そう言うカロナの手は少し震えていて、トスルは自身の認識を改める。

 そうか、カロナは怖くても、周りを心配させないように怖くないと虚勢を張る娘なんだ。

「もう、心配ないよカロナ、こう見えても僕は男だからね」

 そう彼が言うと、カロナもようやく震えが止まる。

 カロナはロウの子であり、その身体能力は人狼で、守杜の加護があるが、心は少女でしかなく、絶対に傷つけられることがなくとも、恐怖を覚えることもあるのだ。

 白猫は、トスルの意外な漢気に関心しつつ、同時にカロナの可愛さに自身の娘の如き愛情を感じていた。

 そして、そのトスルへの白猫の感覚と同等の想いをノノは彼に感じていた。

 三人は食事後、午後の授業に向かう前に、教諭から言われていた教材を取りに学院の南西にある倉庫へと向かった。

 教諭が持ってくるように言われた教材は、絶滅した薬草の、または希少な薬草の標本。

 年中鍵のかかっていないその倉庫の内、一番北側の二つの東側の倉庫にあると聞いて三人は入って行く。

「ほ、埃っぽいね」
「ですね、それにカビ臭いです」
「く、臭いね、ちょっと私、気分が悪くなってきたかも」

 カロナの嗅覚は人の姿でも常人の何倍はニオイに敏感であり、彼女が苦悶の表情を浮かべるのも無理はないほどに、その倉庫は臭っていた。

 その理由が、アンモニアであることは白猫は知っていたが、ノノやトスルは常人の嗅覚であるため、その少量のアンモニア臭には気が付かないでいた。

 しばらく探していた三人だったが、カロナが我慢の限界を迎えて外へと飛び出す。

「も、もう無理~」
「か、カロナちゃん?」

 そうして飛び出したカロナは、ドンっと誰かにぶつかって、白い安紙がその場に広がった。

「きゃっ!」
「あ、ごめんなさい」

 カロナがぶつかって立っていられるのは、その身体能力の高さ故であり、体格的に大きな倒れた女は少し疑問に思い呟いた。

「あ、あなた小さいのに頑丈なのね」
「ほ、本当にごめんなさい、ルナイ先生」

 彼女はルナイ女性教諭、学院長の愛人である彼女は、教諭という立場でありつつも、倉庫番のような扱いを受けていて、その事実はカロナたちにはまだ理解の及ばない事柄だった。

「本当は教諭と呼ばなければならないのだけれど、先生でいいわ、で、そんなに慌ててどうしたのかしら」

 カロナが経緯を話ながら紙を拾い上げると、ルナイも同じように紙を拾っていて、互いの尻がぶつかり、何故かまたルナイだけ転ぶ。

「きゃ!ま、また私だけ?何でかしら」
「ご、ごめんなさい」

 そうしていると、ノノとトスルも心配して倉庫から出てくる。

「大丈夫カロナちゃん?」
「ん?ルナイ教諭?大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ、あなたたちも標本探し?でもごめんなさいね、その標本は倉庫にはないの。最近破損個所の修理で私の部屋にあるのよ、取りに来てくれる?」

 そう言われて、三人はルナイの部屋へ向かう。

 倉庫の南側にひっそりと建つ建物は、まるで、隠れ家のように建っていて、その中が彼女の部屋になる。

 ルナイは、待っててと言うと、その建物に入り、次に出てきた時にはその手に標本を手にしていた。

「どうぞ、持って行って」
「ありがとうございます」

 カロナが受け取ろうとそれに触れると、その一瞬にルナイは彼女に耳打ちする。

「あなた、綺麗だから気を付けなさいよ」
「?……はい」

 訳も分からずそう返事したカロナ。トスルとノノはその時の返事の意味を理解できず、カロナに声をかける。

「どうしたの?カロナちゃん」
「……う、うん、なんでもない」

 こういう時、周囲を心配させまいとするカロナの行動は良くもあり、悪くもあると、後々自覚していくのだった。
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