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第二部
62.
しおりを挟む恐怖の対象がいなくなった始まりし街のホーム。
「こんな……人をなんだと思っているんだ」
カイトはヤトの手を額に当て、身体の震えを止めようとしていた。
「危険なのはギルドに加入している人たちだけど、……一番危険なのはギルドの幹部」
幻影の地平線のアスランとナナ。
クラウンのヘイザーとレイネシア。
オーダーのケージェイとクラウ。
ファミリアのビージェイとオツイチ。
「特に、ビージェイさんはテスターじゃない。他のギルドマスターより狙われる危険性が一番高い」
カイトは、非戦闘員の子どもやその近くで世話している人たちが、どのギルドにも参加していないことが唯一の救いだと思ってしまう。
そう――唯一の。
「……ある意味、ギルドに加入してない人も危ないかもしれない。恐怖は伝染するし、〝殺られる前に殺る〟って考えの人だって現れてしまうかもしれない」
カイトの言葉は間違いではなかった。
数日後、始まりし街の外で一番最初に犠牲になったのは、ギルドのプレイヤーたちと鉢合わせたソロのブラックプレイヤーだった。
その後、ギルド間の戦闘が増えて、非テスターが街の外へ出ることも減り、トップギルドの動きも警戒を強めていった。
その中で街中を堂々と歩いているのは、アスランとナナそれにビージェイたちぐらいだった。
「本当に出歩いて大丈夫なんですか?」
ギルドメンバーに心配されるビージェイは、笑顔を浮かべて言う。
「何、心配するだけ無駄さ、俺たちがこうやって歩いているだけでこの辺のプレイヤーは安心できるだろ?俺たちを支持してくれているギルドもかなりいるしな」
「と言っても、ビージェイさんはテスターでもないし」
一緒に行動している別のギルドメンバーの言葉にも、ビージェイは笑顔を返す。
「だな、だからこそ、お前らみたいな非テスターのギルドから信頼されてる。それに、堂々と歩いてるとほら、〝狙われているのに堂々としてカッコイイ~〟って女の子に思われるかもだろ、カッコイイって思われたいじゃん?」
「……ははっですかね――」
笑顔のビージェイに比べ、後ろに並ぶファミリアのメンバーは、表情に警戒の色が窺える。
そんなメンバーも、ビージェイが笑顔で道行くプレイヤーに挨拶している姿を見て、表情を緩めていく。
しかしこの時、ビージェイのことをジッと見つめる視線があった、が、彼がそれに気付くことはない。そして、こんな状況で、いや、こんな状況だからこそ彼が目を覚ます。
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