イケメンが目当てですが、何か、問題でも?

紫宛

文字の大きさ
22 / 22
本編

第14話 ハプニング

しおりを挟む
今は、アーリアが会場の壇上で新しい聖女として紹介されている。大聖女になれる素質を持ち歴代最高の力を持つ彼女は、この国だけじゃなくて他国からも注目を集めていた。

「見た目だけなら、素敵な聖女様なのに……」

桜色のふわふわした綺麗な髪に、ふくよかな胸、華奢な身体からだ……どれをとっても、アーリアは主人公に相応しい姿をしている。

壇上に立つその姿は堂々としてるし、更に身に付けたローブが彼女を引き立てているのよね。黙って立っていれば、誰もが振り返る可憐な少女なのに……

「喋らなきゃなぁ……」

あれが、レオン様やシルヴァン様達を前にすると…途端に崩れ、清楚な雰囲気も何もあったもんじゃない。

「シュリ」

壇上のアーリアを見ながら、険しくなる表情を必死に取り繕っていると……隣に立つ誰か……

顔を見なくてもわかる。

「シルヴァン様……」
「疲れたのか?」
「ええ、まぁ……」

当然ですよ。
徹夜……は、まぁ、私が勝手にやった事ですから仕方ないですけど…でもその後の、アーリアの支度の手伝いと挨拶の仕方を教え、さらに道中と……本当に疲れたわ…

ひとつも私達の言う事を聞いてくれないんだからっ

まだまだこの後も、アーリアの傍についてなきゃいけないなんて……なんて地獄よぉ!!

「レオン様に言って、休ませてもらうか?」
「無理ですよ、その間誰がアーリアを止めるんですか……」

なんて敬称を付けたくはなかったけど……公の場というか他の人がいる場(だけじゃないけど)では、敬称を付けなければ私が処罰されるのよねぇ……

ふぅ……そりゃ、離れられるなら離れたいけど…そしたら、誰が暴走したアーリアを止めるのさ。

ハルト様やグレイグ様は、ライラシア様とシンシア様のエスコートでアーリアに注意を払えないだろうし。レオン様がいるけど……王太子である彼は、このあと挨拶回りでアーリアの傍を離れなきゃいけない。

前にも言ったけど、ジーク様は女性に基本触れられない。シルヴァン様は女性嫌い……特に男に媚びを売る女が嫌いで、アーリアはその類の人物……

「それとも、シルヴァン様が……止めて下さるんですか?」

軽く腰を曲げ、シルヴァン様の顔を下から覗き込むように見つめた。

「……」
「冗談ですよ。最後まで、ちゃんと頑張ります」

小さく微笑み、シルヴァン様の顔を最後まで見ずに、サッと顔を上げ冗談だと言って話を終わらせた。

壇上ではアーリアの紹介が終わり、皆が給仕からグラスを受け取り始めていた。

会場に居るものは、誰1人例外なくグラスを手に取る。騎士も侍女や給仕すらも……もちろん私もシルヴァン様もグラスを手に取り、乾杯した。

……一口だけ頂き、残りは給仕に戻しました。
仕事があるから仕方ないよねぇ…乾杯は強制参加とはいえ。

「シュリ」

(ん?)

周りの喧騒に紛れ、シルヴァン様の声が聞こえたきがした。アーリアの元に行こうとした足を止め、後ろを振り返ると「無理そうなら助ける」と……彼は私に背を向けながら言った。

なに無理なこと言ってるんですか……触れられもしないくせに。と、その時の私は思っていた。

でもまさか本当に、シルヴァン様に助けて貰う事になるなんて……




乾杯から時間が経ち、何人かの貴族が帰りお開きまであと少しとなった。アーリアが、攻略キャラ達に突進する事以外は何事もなく無事に終えられそうだった…

しかし……

「ちょっと!あんた何様のつもりなの?!」
「!!?」

もう少しで終わるなと、少し俯いていた時だった。アーリアの怒鳴る声と、小さな悲鳴が聞こえたのは…

(な、何事?!)

急いで周囲を見回せば、少し離れた所でアーリアと座り込む貴族の女性がいた。

(いつの間に…?!さっきまでここにいたのに!!)

「あんた、私が誰か分かってるの?」
「……せ、聖女、様です……」
「そうよ。大聖女になる私に、こんな事してただで済むと思ってんの?」

何が起きたのか理解が追いつかなかった私は、近くにいた他のアーリアの侍女を捕まえた。話しを聞けば、アーリアが侯爵令嬢達と話していた所、たまたま通りかかった下位貴族の少女が少しぶつかってしまったらしい。

アーリアが大きな声で喚くので、この周りだけじゃなく離れた所にいる方々が興味を持ち始めている。

(早く、収めないと……)

各国の要人も多くいるこの会場で、聖女が問題を起こせば他国に付け入る隙を与えるだけ!もうっ、どうして最後まで大人しくしてくれないのっ!

「アーリア様、注目を集めています。少し落ち着いて下さい」
「はぁ?!アンタには関係ないでしょ!」
「関係はあります。私は、あなたの侍女ですから。さぁ、貴方も立って」

下位貴族の少女を立たせ、文句を言うアーリアの背を押し、とにかくこの場を離れるよう会場の外に向けて歩き始めた。

周りに注意を払い、アーリアを見ていなかった私は……彼女が、近くにいた給仕からワインが入ったグラスを手に取った事に全く気付かなかった。

気が付いたのは……彼女の背を押しながら急ぎ足で歩いていた私の顔に、ワインをぶっかけられた時だった。

「え……」

顔や髪から滴り落ちる赤い水……

「ホント、うざいのよアンタ!」

ワインをかけられた私は、呆然と自分の髪から流れる落ちるワインと、ワインによって赤く染まる自分の侍女服を見ていた。

アーリアは私にワインをかけて溜飲が下がったのか、他の侍女を連れて下がっていった。アーリアが出て行くのを確認し自分も下がろうしたら、軽く目眩に襲われた。

「大丈夫ですか?!」と声をかけてくれる少女に「大丈夫です」と答え歩き始めるけど…

「うぅ、ワインかけられただけなのに……」

何故か、すごくフワフワする気がする。ワインを飲んだ訳じゃないのに……

壁に手を付き会場を離れようとすれば、何事だと駆けつけた近衛兵に捕まってしまった。

どうしてもっと早く来てくれなかったのよもうっ!と心の中で文句を言いつつ、フラフラする体に鞭打って近衛兵に付いていく。付いていかないという選択肢が無いからだ。

あーもう、早く戻って休みたい…

「シュリ?どうした?大丈夫か?」

近衛兵が立ち止まったから、私も倣って立ち止まるとレオン様の声が頭の上にかかった。顔を上げろとレオン様は言うけれど……

ごめん無理そうかな……

なんか……凄く疲れちゃったのよ……

私の意識は、そこで途絶えた。
「シュリっ!」と呼ぶシルヴァン様と慌てたように近付くレオン様を見た気がした……








しおりを挟む
感想 18

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(18件)

2023.04.08 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2023.04.09 紫宛

ありがとうございます(* ᴗ͈ˬᴗ͈)”

直ぐにとは言えないのですが、更新の予定はあります。早ければ今月末、遅くても来月から、いま更新が止まっている他の作品も合わせて更新していく予定です。

なので、
もう少しお待ち頂けたらなと思います(*•̀ㅂ•́)و✧

解除
pocky
2022.05.05 pocky

やっぱり何回みてもこの作品が好きです

シュリがアーリアに疲れちゃってる
頑張って!
レオン様たちもシュリを手伝ってあげて欲しいな〜

解除
そらるん
2022.04.21 そらるん


別の更新中「大国に売られた聖女」のが、まだで他の作品が読みたくなって、片っ端から読んでます。
シュリちゃんの健気さ真面目さに共感持って読んでます。
シュリちゃん、大丈夫ですか?

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。