竜帝は番を見つける

紫宛

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本編

夜会

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時刻は少し遡り、謁見室。

「おい、アレを持ってこい」

王は、兵士にくるよう命じた。
兵士は、がなんなのか知っていてに行った。

暫くして、兵士が戻ってきた。
その手に名無しを担いで。

名無しナナシ、お前に竜帝の世話係を命ずる」

ナナシと呼ばれた少女は、ひとつ頷く。

「あんな化け物に、使える人間など居らんからな。ナナシ、まずは......朝の仕事は朝食を部屋に持って行け。儂らと共に食すなど、吐き気がするわ!出掛けたいと言ったら、付いていけ。夜の世話も忘れるでないぞ」

一つ一つ命令する。
その度に頷くナナシ。

は、命令でなければ動けぬ欠陥品だ。

「化け物、気が合うであろうよ。だが、無駄話はするな。一切口を聞くでないぞ。よいな?!」

少女は、またひとつ頷いた。
そもそも、声など出ない。

言葉も知らない少女に、話す事は出来ないと言うことを王たちは忘れていた。

「ならば行け!奴らが帰るまで、離れるな!」

また頷き、謁見室を出ていった。



夜、竜帝陛下を迎えた宴が開かれた。
壁際には、バイキング形式の食事が用意されていた。テーブルの左右には、立食と着座の両方の机が用意されていた。

ナナシと呼ばれた少女は、宴の裏方を手伝わされていた。倉庫から食材を取ってきたり、洗い物をしたり。
誰もやりたがらない仕事をこなしていた。

されたから。


この時も、足りなくなった食材を取りに倉庫まで行った帰りだった。
小麦粉や米など、どれも重たいものだが、表情には出なかった。

途中、中庭を通ると1人の男の人が座り込んでいた。命令以外の行動は、普段しないのだが、何故か…惹かれた。

﹣行かないと﹣

????

よく分からない衝動に駆られ、男の人の元に向かった。
肩を叩いて、振り返った男性は驚いたような顔をしていた。

「?」

顔色は悪くない。
なら大丈夫だと、ナナシはその場を離れようとした。

けれど、男の人がナナシの腕を握った。

「??」

ナナシは、悩んだ。
命令違反は、【仕置き】が待っている。
だから、ナナシは握られても、その場を離れようとした。

いつもなら、握られても。だが、今回は


彼女は知らなかったが、相手はライオネルだった。力は、全種族のトップだ。

「?、??、???」

振っても離れない、動けない。
だから少女は、諦めた。

【仕置き】は、いつもの事だからだ。

例え自分が物と認識していても、無理なものは無理だと分かっていた。
そういう時は、諦めるのが1番だと理解もしていた。

「お前……」

男の人が、何か喋った。
少女の腕を強く握り、少女の頬に手を伸ばした。

「ライ!!」
「っ」

少女の頬に触れることなく、ライオネルは声のした方に顔を向けた。

「あれ?この子は?……灰色?金目?」

もう1人現れた男性は、少女の手を握る男性に目を止めた。物申すような視線に耐えられなくなった男の人が、瞳を逸らし少女の腕を離した。

「大丈夫か?悪かったな、ライが」
「……?」

男性が何を言ったのか理解出来なかった。なぜ謝るのか、心配されるのか…。

自分は物だ、傷つき壊れても代わりがある。
だから、心配する必要は無いのだ。

それを伝えようとしたが、話してはならぬという【命令】がある。命令が無くても話せないが。

少女は、立ち上がり頭を下げると、その場を去っていった。



※※※

「なぁ、あの子か?」
「ああ、間違いない」



大広間でライオネルは、令嬢に辟易していた。派手な衣装を身にまとった令嬢達に、ダンスを請われたからだ。断ってもしつこく付き纏う姿勢は、賞賛に値するがいい迷惑である。

彼女達は俺の身分に群がっているが、他所で竜人は化け物と罵っている。そんな奴らの相手は疲れる…こう言うのはフェルの方が得意だが、別の事を頼んでいるため、ここには居ない。

仕方が無いから、中庭に避難していたら、後ろから肩を叩かれた。

「っ!!」

見つかった!!

と思ったが、違ったようだ……使用人か?
この俺が、気配に気付かないとは……人間の気配なら、絶対に間違えないはずなのに…。

なぜだ?

俺が悩んでいる間に、幼い見た目の少女は離れようとした。
だが、無意識に彼女の手を取ってしまった。

「……」

だが、彼女手を取った瞬間に気が付いた。
分かってしまった。

この少女が……俺の、番いだと!

少女は、頭を捻りながらも離れようとした。俺に掴まれたまま……

(いや、無理だろ……)

動けないと気付いたのか、振り解こうしたが、そんな事で俺が離すわけもない。

フェルの登場で少女の手を離してしまったが……あの子は、俺の番で間違いないだろう。離れていく姿にどうしようもなく、心が騒ぐ。

﹣今すぐ、追いかけろ。心の向くままに抱き締めろ﹣

と、心が彼女を求めてやまない。
心の衝動のまま、触れて抱き締めたくて堪らない。

「…っ!これが、番いという事か」
「そうだ、離れると辛いだろ?……どうする?」

フェルの言いたい事は、俺が国を出る前に言ったことを気にしてるんだろう。

『国を乱す者を……』

「何となくだが、あの子は、大丈夫な気がする」
「ああ、それは俺も思ってる」
「何か、感じたか?」
「…いや、…感情がない……」
「そうか……」

匂いは微かにしか薫らず、触れても何も読み取れなかった。それでも、魂の繋がりのお陰で気付けたが……まさか、何の感情も読み取れないとは……思わなかった。

「また、会えると良いな」
「そうだな」


なんて、話していたのに…呆気なく、その願いは叶えられた。彼女が、宛てがわれた俺の部屋の前に立っていたからだ。

驚き固まる俺の隣でフェリドは、ニヤニヤと笑って「良かったな」と言った。

ああ、俺の心が喜びに震える。


彼女を俺のものにする……
俺に惚れされる…絶対に……

ライオネルは、心に決めたのだった。
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