学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

したらき

文字の大きさ
65 / 252

第65話

しおりを挟む
神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆

「婆ちゃん、ごめん。待たせた?」


「なに言ってるんだい?
 まだ待ち合わせ時間になってないだろ?」


「でも、こっちからお願いして出てきてもらっているのに待たせるのは嫌だなって」


「ふふっ、相変わらず生真面目だね、冬樹は。
 そちらは美晴みはるさんだね。小さい時に会ったきりだけど、あたしのこと覚えているかしら?」


「ご無沙汰してます。ちゃんと覚えていますよ。
 それにしても昔と変わらずお元気そうですね」


「まぁ、元気だけが取り柄の年寄りだからね。
 それにしても、美晴さんは見違えるような美人さんになったねぇ。
 冬樹もこんな美人なお姉さんに面倒を見てもらえて幸せだろう」


「そ、それは、すごくありがたいと思っているよ。
 もちろん美人だと思っているけど、それ以上に今一緒にいて安心できるひとだよ」


「たしかに。夏菜かな春華はるかも悪いじゃないんだけど、軽率だったからねぇ」


「頭ではわかっているつもりなんだ。電話で話した通りハルが近くにいて身体が言う事を聞かなくなってさ」


「こころの問題はしょうがないからね」


「ところでお婆様、どうして最初から冬樹くんを信じてあげられたんですか?」


「別に最初から全部信じてたわけじゃないよ。
 とりあえず手を貸しながら裏取りをして、冬樹が正しいって行き着いたんだよ。
 部分的な情報だけで判断したら春華たちと変わらないだろ?カカッ」


「そうですね。でも、お婆様が手を差し伸べてくださっていたから今の程度で済んでいたのだと思うので感謝してます」


「なにいっているんだ。感謝してもし足りないのはあたしの方だよ。
 あたしの孫を支えてくれてありがとう。これからも面倒をかけると思うけど、よろしくお願いね」


「もちろんです。私にとって大事な男性ひとなので」


「そうかい、それは嬉しいねぇ」


「あっ、あのさ、こんなところで立ち話してても難だし、もう行かない?」


「おやおや、照れ隠しかい。まぁ、たしかにこんな暑いところで立ち話も難だね。じゃあ、いこうか」



興信所では元々身辺調査の依頼を検討していた鷺ノ宮さぎのみやの調査をできないかを相談し、更に周囲の関係者の依頼もできないかも合わせて行えないか尋ねてみた。

俺の冤罪に直接関わっていない人間を調査するのは探偵業法で認められた範囲から外れそうということで依頼を受けてもらえなかったが、鷺ノ宮の他に二之宮にのみやさんは直接俺に危害を加えた相手なので調査の対象にできると判断して良いだろうということで依頼した。

興信所での契約が終わったら近所のレストランで昼食を摂りつつ今後の方針の共有と転居に伴う協力をお願いして婆ちゃんに助けてもらう約束をしてもらえた。



「それじゃあ、婆ちゃん、また連絡するね」


「ああ、美晴さんも冬樹のことをよろしくね」


「はい!」



婆ちゃんと別れた後は今のマンションを購入した時に仲介をしてくれた不動産会社の営業所へ顔を出した。


「神坂様、ようこそいらっしゃいました。お住まいに何か問題でもございましたでしょうか?」


「こんにちは。マンションに問題はないのですけど、できるだけ早く引っ越したい状況になりまして、また仲介をお願いできないかとご相談させてもらいにきました」


「そうでございましたか・・・

 ・・・説明は以上になります。今回も精一杯お手伝いさせていただきますのでよろしくお願いいたします」


「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」



今のマンションの売却と新しいマンションの購入の仲介の依頼を行った。


「冬樹くん、ほんとにすごいね。大人の営業さんと具体的な話をできて。
 私は隣で聞いてても、意味がわからないことがたくさんあったよ」


「僕は2回目ですしね。前回はあれこれ補足説明をしてもらいながら話をしてましたよ」


「それにしたって、たぶん私は次に聞いてもわからないと思うよ」


「あと、自分のお金にかかわる話ですから、頭に残りやすいんですよ。
 ほら、誰だって損をしたくないじゃないですか」


「それもそう、今のところも安く買っていたと言っていたけど、次のところも相場より安く売り出してるってすごいよね」


「それは持ち主が売り急いでいたら早くお金を引き渡すことを条件に割引させやすいんですよ」


「言われてみればそうなんだなっていうのはわかるけど・・・」


「でも、ほんとラッキーでしたよ。今日の今日で内見できて、しかも条件にピッタリの物件が相場よりも安く買えるのは。
 美晴姉さんにも気に入ってもらえたみたいだし・・・」




興信所と不動産会社に行った日からは特に大きな動きもなかった。

学校は学費免除で籍だけ残してくれて登校しない分は進級に必要な授業時間が足りなくなるので、高卒認定試験の合格をもって充当させてくれるとのことだった。

正直どちらでも良かったけど、美晴姉さんから同じ秀優しゅうゆう高校の卒業生になって欲しそうな雰囲気を感じたのでその申し出の通りにすることにした。

新しいマンションへの引っ越しも問題なく終わり、俺の生活も落ち着いてきた。


近しい人では、高梨たかなし先生は旦那さんと一定の距離を置くことでなんとか生活を続けているとのことで、今のところ俺が手助けできることはなさそうだ。


家族や美波みなみは話を聞く限りでは特に変わりがないようだけど、間に入ってくれている美晴姉さんもメッセージでのやり取りだけなので詳しいことはわからないそうだ。


学校の他の生徒がどうなっているのかはほとんど知らないし、興味もない。





そして、世間がお盆の期間を終えてすぐのある日、興信所から連絡を受けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...