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第80話
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◆二之宮凪沙 視点◆
監禁から救出されて以来『こんなはずじゃなかった』と言う事ばかりが頭の中を駆け巡っていた。
冬樹と夏休みを一緒に過ごし、文化祭や体育祭に修学旅行と学校のイベントを恋人として過ごすはずだった・・・結果からすれば一緒どころか連絡すらできない状況で、学校へ登校しなくなった上に引っ越したために、どこにいるのかさえわからない状況になってしまっている。
大変不愉快なことだけど、今は冬樹との接点は岸元さんのお姉さんの美晴さんくらいしかないし、強いて言うなら岸元さんか高梨先生が可能性があるくらい。
しかも、美晴さんは私を警戒しているのか事務的な対応しかしてくれないので、冬樹のことは全然知ることができない。
そういう状況なので、不自然ではあるけれど岸元さんへメッセージを送って様子をうかがってみることにした。
【お久しぶりです。二学期になりましたけど、学校はどうされていますか?】
【私と同じで登校しないでも塚田先生がフォローしてくれることになっていると聞きました】
【お久しぶりです。二之宮さんからメッセージなんて珍しいですね】
【わたしは学校へは行っていません。襲われていた時の動画を見られていると思ったらとても行く気になれないです】
【そうですよね。私も登校する気になれないですが、教室へ行かなくても学校の様子を見たい気持ちがあります】
【たしかに、それはあるかも。でも今はやめておいた方が良いと思う】
【春華ちゃんやうちのクラスは冬樹の冤罪を主導して広めた犯人という扱いで学校中から白い目で見られてしまっているみたい】
【そうなんですね。それはそれで要らぬトラブルに巻き込まれそうですね】
【そう。だから行くなら気を付けて】
【あと、トラブルと言えば二之宮さんは先週まで監禁されてたって聞いたけど、もう大丈夫なの?】
【さすがに堪えていますけど、過去のことを見ててもどうにもならないですから】
【そうなんだ、二之宮さんは強いね】
【強いつもりはないですけど、岸元さんは何か悩みでもあるのですか?】
【あると言えばあるかな、一学期は馬鹿なことをしたなぁって】
【それは私も思っていますね】
【やり直せるならやり直したいと】
【でも、過去には戻れないですからね】
【これからのことをどうするか考えないと】
【そうだね。なら、わたしは高卒認定の試験勉強を頑張るかな】
【高卒認定試験を受けるのですか?】
【うん。今は学校中から敵視されていて不登校中の春華ちゃんと一緒に勉強してるよ】
【神坂君の妹さんと一緒に勉強しているのね】
【そうやって一緒に勉強できる友達がいるのは羨ましいわ】
【たしかにわたしは恵まれてると思う。今は出ていっちゃったけど冬樹と3人で同じ学年で、一個上には夏菜お姉ちゃんがいるのが当たり前だったけど、最近は改めて実感してるよ】
【そうだ。もし良かったら一緒に勉強しない?】
【いま春華ちゃんに聞いたら、二之宮さんが一緒でも良いって】
これはチャンスだ。岸元さんや冬樹の家へ行けば生徒会長にも会えるだろうし、冬樹について何かしら知ることができるかもしれない。
【それはぜひお願いしたいわ。やはり一人で勉強しているのは行き詰まる時があるので助かるわ】
さっそく明日から勉強会に参加させてもらうことになり、明日は春華さんのお部屋でやるとのことで、生まれて初めて冬樹の家へ行くことが決まった。
今まで冬樹の側にいるのが当たり前の態度で憎たらしかった岸元さんだけど、初めて感謝しても良いと思った。
◆岸元美波 視点◆
二之宮さんから来たメッセージのやり取りをした結果、わたしと春華ちゃんの勉強会に二之宮さんも参加することになった。
正直なところあまり好かれていない様な気がしていたけど、一学期に遭った境遇が近かったからなのか好意的な感じになっている様に思う。
踏ん切りをつけて学校へ通うにせよ、このまま高卒認定から大学受験を目指すにせよ、二之宮さんとは良い関係を築いていた方が良いだろうし、どことなくミステリアスなところがある大人びた美人だから仲良くしたいというのもある。
いずれにしても、明日は大事な新しい関係の始まる日になりそうだ。
◆神坂春華 視点◆
学校でのトラブルで救急車で病院に運ばれ、昨日退院してきたお姉は頭に巻かれた包帯が痛々しかったけど、それ以外はいつもと変わらない様子で家を出ていった。
それから30分くらい経ったら美波ちゃんが二之宮さんを伴ってやってきた。
「おはようございます、春華さん。勉強会に参加させてくれてありがとうございます」
「そんな畏まらないでよ。あたしも一緒に勉強する仲間が多い方が助かるから良かったよ」
「そう言ってもらえて嬉しいわ」
「いつまでも玄関にても難だし、中へ入って」
「春華ちゃん、今日はリビング?」
「うん。あたしの部屋だと緊張しちゃうかなって思ったから」
「春華さんのお部屋は何かあるのかしら?」
「別に特に変わったものがあるとかじゃないんだけど、あたしが慣れていない友達の家へ行く時はリビングの方が気が楽だからその方が良いと思っただけ」
「たしかにそうかもしれないわね」
「春華ちゃん、ちゃんと考えているんだね。
わたしはそんなところに気が回ってなかったよ。
週明けはうちの予定だけど、リビングの方が良いかな?」
「どちらでも大丈夫ですよ。私はお邪魔させてもらっている立場だし、一緒に勉強させてもらえるだけで助かっているんですから」
「じゃあ、月曜はわたしの部屋に招待するね」
それから勉強を始めたのだけど、あたしも美波ちゃんも二之宮さんもできる方だから教え合うこともほとんどなく、それぞれがたまに休憩を取りつつお昼になったので食事の用意を始めた。
「二之宮さん、何か苦手な物とかある?」
「特にはないですよ」
「じゃあ、ササッと冷蔵庫のもので作れそうなの適当に作っちゃうね」
あたしが炒飯を作っている間に美波ちゃんと二之宮さんにサラダを用意してもらって配膳が終わったら食べ始めた。
「春華さん、この炒飯すごく美味しいです」
「そう?良かった。フユからコツを教えてもらっているから自信があるんだ」
「冬樹君が?」
「そう!冬樹すごく料理が上手なんだよ!ね、春華ちゃん!」
「うん、あたしらのお母さん達やうちのお姉や美晴お姉よりも上手いよ」
「それはぜひ食べてみたいわね」
「そう思うよね。まぁ、あたしは近いうちに食べられるかもしれないけど」
「え!?春華ちゃん、それはどうして!?」
「ほら、一昨日お姉がトラブルで病院へ運ばれたじゃない。
その時フユがお見舞いに来てくれて普通に話してたんだよ。
美晴お姉が一緒なら大丈夫かもしれないから、今度ふたりで来てくれるって言ってくれたんだよ」
「春華ちゃん、それわたし聞いてない!」
「ごめんごめん、お姉のことが心配だったから今の今まで忘れてたんだよ」
「たしかに夏菜お姉ちゃんの怪我の方が気になるよね・・・」
美波ちゃんとそんなやり取りをしていた中、一瞬二之宮さんの雰囲気が重苦しい感じに変わった気がしたので、ふと二之宮さんを見ると特に変わった様子もなく食事をしていた。
「春華さん、私の方を見てどうかされましたか?」
「いや、うーんと、量足りたかなって」
「全然大丈夫ですよ。むしろちょっと多かったくらいです」
「それなら良かった。無理に食べないで残してくれても良かったんだよ」
「いえ、美味しかったですから全部食べたかったんですよ」
「それなら良かった」
「ところで、冬樹君と美晴さんってどんな関係なのかしら?」
「美晴お姉はね、美波ちゃんだけじゃなくうちの姉弟妹にとっても本物のお姉ちゃんみたいな人で、フユとも姉と弟って感じかな。
でも、フユがすごくしっかりしているからしっかり者同士で支え合えるような感じもあるかな。
年の差はあるけど良いカップルになりそうな感じだよ」
「それって春華さんの感想ですよね?」
「まぁ、そうだけど・・・」
「岸元さんから見てはどうですか?」
「そうだなぁ、やっぱり姉弟って感じかなぁ。
冬樹はしっかり者だけど抜けているところがあったりするし、良い弟って感じかなぁ。
お姉ちゃんはずっと一歩引いた感じだったしカップルというのは違うかなぁ」
「そうかなぁ、お似合いだと思うけど」
「それって春華ちゃんの感想だよね?」
「いや、そうだけど・・・美波ちゃん、まだフユのこと諦めてないの?」
「ちょっと、春華ちゃん!
二之宮さんも居るのに余計なこと言わないでよ!」
「岸元さん、冬樹君のことお好きなんですか?」
「好きよ。16年間一緒だった絆だってあるんだし、同い年だし、一学期にはちょっとだけ行き違いもあったけど、神坂家以外では一番深い繋がりがあるのは私なんだから」
「幼なじみだからってその関係に胡座をかいていたら、後から来た人に付き合われてしまうってよく聞きますけど?」
「それは禁句!」
「・・・美波ちゃんは自分ですべり台のある公園へ行ったから」
「春華ちゃん!昔からすべり台がどうのって言うけど、それの元ネタ知ってるんだからね!」
「知ってたんだ・・・派生系の澤●・すべり台・英●々とかも?」
「それっ!ホントに腹が立ったんだからねっ!」
「ごめんね。うちと岸元家でアニメやマンガが趣味なのってあたしだけじゃん。
だから寂しかったんだよ、棒読み」
「全然悪いと思ってないよね!」
からかい過ぎたせいで、美波ちゃんの手が出てきた。もちろん本気ではないけど、これが地味に痛い。
「ほんとにごめんって、もう言わないから」
「もうっ、春華ちゃんは。
でも、そんな感じの春華ちゃん久しぶりだよね」
「たしかに、フユの一件があってから余裕がなかったから。春アニメは途中から見てないし、夏アニメとか何やっているのか全然チェックしてないし、ホントどうしよ?」
「それは知らないけど、やっと余裕が出てきた感じなのは良かったよね」
「うん、ほんと良かったと思う。
それと、二之宮さん。美波ちゃんとだけで盛り上がって、ごめんなさい」
「良いのよ、ふたりが幼なじみで仲が良いのはわかっていて混ぜてもらったんだし、むしろ春華さんが気遣ってくれて嬉しいわ」
「そう言ってもらえると助かるよ。
ところで二之宮さんはアニメとかマンガは見る人?」
「たまにマンガを読むくらいでアニメは見ていないわね」
「そっかぁ」
「ところで、岸元さんの趣味は何なのですか?」
「わたしはファッションとか美容とかコスメが好きで研究してる」
「なら私と気が合いそうね。私も美容とかコスメとか好きなの」
「そうなんだ、でも納得。二之宮さんすごく綺麗だもの」
「そう言ってもらえるのは嬉しいわ」
二之宮さんは近寄りがたい印象だったけど、今日一日でもずいぶん仲良くなれた気がする。
これからが楽しみだ。
◆鷺ノ宮隆史 視点◆
「梅毒ってなんですか?」
「性病の一種で、性交することで感染する病気だよ。
それで、君の友人が発症したから、君にも感染していないか検査をしないといけないんだ」
監禁から救出されて以来『こんなはずじゃなかった』と言う事ばかりが頭の中を駆け巡っていた。
冬樹と夏休みを一緒に過ごし、文化祭や体育祭に修学旅行と学校のイベントを恋人として過ごすはずだった・・・結果からすれば一緒どころか連絡すらできない状況で、学校へ登校しなくなった上に引っ越したために、どこにいるのかさえわからない状況になってしまっている。
大変不愉快なことだけど、今は冬樹との接点は岸元さんのお姉さんの美晴さんくらいしかないし、強いて言うなら岸元さんか高梨先生が可能性があるくらい。
しかも、美晴さんは私を警戒しているのか事務的な対応しかしてくれないので、冬樹のことは全然知ることができない。
そういう状況なので、不自然ではあるけれど岸元さんへメッセージを送って様子をうかがってみることにした。
【お久しぶりです。二学期になりましたけど、学校はどうされていますか?】
【私と同じで登校しないでも塚田先生がフォローしてくれることになっていると聞きました】
【お久しぶりです。二之宮さんからメッセージなんて珍しいですね】
【わたしは学校へは行っていません。襲われていた時の動画を見られていると思ったらとても行く気になれないです】
【そうですよね。私も登校する気になれないですが、教室へ行かなくても学校の様子を見たい気持ちがあります】
【たしかに、それはあるかも。でも今はやめておいた方が良いと思う】
【春華ちゃんやうちのクラスは冬樹の冤罪を主導して広めた犯人という扱いで学校中から白い目で見られてしまっているみたい】
【そうなんですね。それはそれで要らぬトラブルに巻き込まれそうですね】
【そう。だから行くなら気を付けて】
【あと、トラブルと言えば二之宮さんは先週まで監禁されてたって聞いたけど、もう大丈夫なの?】
【さすがに堪えていますけど、過去のことを見ててもどうにもならないですから】
【そうなんだ、二之宮さんは強いね】
【強いつもりはないですけど、岸元さんは何か悩みでもあるのですか?】
【あると言えばあるかな、一学期は馬鹿なことをしたなぁって】
【それは私も思っていますね】
【やり直せるならやり直したいと】
【でも、過去には戻れないですからね】
【これからのことをどうするか考えないと】
【そうだね。なら、わたしは高卒認定の試験勉強を頑張るかな】
【高卒認定試験を受けるのですか?】
【うん。今は学校中から敵視されていて不登校中の春華ちゃんと一緒に勉強してるよ】
【神坂君の妹さんと一緒に勉強しているのね】
【そうやって一緒に勉強できる友達がいるのは羨ましいわ】
【たしかにわたしは恵まれてると思う。今は出ていっちゃったけど冬樹と3人で同じ学年で、一個上には夏菜お姉ちゃんがいるのが当たり前だったけど、最近は改めて実感してるよ】
【そうだ。もし良かったら一緒に勉強しない?】
【いま春華ちゃんに聞いたら、二之宮さんが一緒でも良いって】
これはチャンスだ。岸元さんや冬樹の家へ行けば生徒会長にも会えるだろうし、冬樹について何かしら知ることができるかもしれない。
【それはぜひお願いしたいわ。やはり一人で勉強しているのは行き詰まる時があるので助かるわ】
さっそく明日から勉強会に参加させてもらうことになり、明日は春華さんのお部屋でやるとのことで、生まれて初めて冬樹の家へ行くことが決まった。
今まで冬樹の側にいるのが当たり前の態度で憎たらしかった岸元さんだけど、初めて感謝しても良いと思った。
◆岸元美波 視点◆
二之宮さんから来たメッセージのやり取りをした結果、わたしと春華ちゃんの勉強会に二之宮さんも参加することになった。
正直なところあまり好かれていない様な気がしていたけど、一学期に遭った境遇が近かったからなのか好意的な感じになっている様に思う。
踏ん切りをつけて学校へ通うにせよ、このまま高卒認定から大学受験を目指すにせよ、二之宮さんとは良い関係を築いていた方が良いだろうし、どことなくミステリアスなところがある大人びた美人だから仲良くしたいというのもある。
いずれにしても、明日は大事な新しい関係の始まる日になりそうだ。
◆神坂春華 視点◆
学校でのトラブルで救急車で病院に運ばれ、昨日退院してきたお姉は頭に巻かれた包帯が痛々しかったけど、それ以外はいつもと変わらない様子で家を出ていった。
それから30分くらい経ったら美波ちゃんが二之宮さんを伴ってやってきた。
「おはようございます、春華さん。勉強会に参加させてくれてありがとうございます」
「そんな畏まらないでよ。あたしも一緒に勉強する仲間が多い方が助かるから良かったよ」
「そう言ってもらえて嬉しいわ」
「いつまでも玄関にても難だし、中へ入って」
「春華ちゃん、今日はリビング?」
「うん。あたしの部屋だと緊張しちゃうかなって思ったから」
「春華さんのお部屋は何かあるのかしら?」
「別に特に変わったものがあるとかじゃないんだけど、あたしが慣れていない友達の家へ行く時はリビングの方が気が楽だからその方が良いと思っただけ」
「たしかにそうかもしれないわね」
「春華ちゃん、ちゃんと考えているんだね。
わたしはそんなところに気が回ってなかったよ。
週明けはうちの予定だけど、リビングの方が良いかな?」
「どちらでも大丈夫ですよ。私はお邪魔させてもらっている立場だし、一緒に勉強させてもらえるだけで助かっているんですから」
「じゃあ、月曜はわたしの部屋に招待するね」
それから勉強を始めたのだけど、あたしも美波ちゃんも二之宮さんもできる方だから教え合うこともほとんどなく、それぞれがたまに休憩を取りつつお昼になったので食事の用意を始めた。
「二之宮さん、何か苦手な物とかある?」
「特にはないですよ」
「じゃあ、ササッと冷蔵庫のもので作れそうなの適当に作っちゃうね」
あたしが炒飯を作っている間に美波ちゃんと二之宮さんにサラダを用意してもらって配膳が終わったら食べ始めた。
「春華さん、この炒飯すごく美味しいです」
「そう?良かった。フユからコツを教えてもらっているから自信があるんだ」
「冬樹君が?」
「そう!冬樹すごく料理が上手なんだよ!ね、春華ちゃん!」
「うん、あたしらのお母さん達やうちのお姉や美晴お姉よりも上手いよ」
「それはぜひ食べてみたいわね」
「そう思うよね。まぁ、あたしは近いうちに食べられるかもしれないけど」
「え!?春華ちゃん、それはどうして!?」
「ほら、一昨日お姉がトラブルで病院へ運ばれたじゃない。
その時フユがお見舞いに来てくれて普通に話してたんだよ。
美晴お姉が一緒なら大丈夫かもしれないから、今度ふたりで来てくれるって言ってくれたんだよ」
「春華ちゃん、それわたし聞いてない!」
「ごめんごめん、お姉のことが心配だったから今の今まで忘れてたんだよ」
「たしかに夏菜お姉ちゃんの怪我の方が気になるよね・・・」
美波ちゃんとそんなやり取りをしていた中、一瞬二之宮さんの雰囲気が重苦しい感じに変わった気がしたので、ふと二之宮さんを見ると特に変わった様子もなく食事をしていた。
「春華さん、私の方を見てどうかされましたか?」
「いや、うーんと、量足りたかなって」
「全然大丈夫ですよ。むしろちょっと多かったくらいです」
「それなら良かった。無理に食べないで残してくれても良かったんだよ」
「いえ、美味しかったですから全部食べたかったんですよ」
「それなら良かった」
「ところで、冬樹君と美晴さんってどんな関係なのかしら?」
「美晴お姉はね、美波ちゃんだけじゃなくうちの姉弟妹にとっても本物のお姉ちゃんみたいな人で、フユとも姉と弟って感じかな。
でも、フユがすごくしっかりしているからしっかり者同士で支え合えるような感じもあるかな。
年の差はあるけど良いカップルになりそうな感じだよ」
「それって春華さんの感想ですよね?」
「まぁ、そうだけど・・・」
「岸元さんから見てはどうですか?」
「そうだなぁ、やっぱり姉弟って感じかなぁ。
冬樹はしっかり者だけど抜けているところがあったりするし、良い弟って感じかなぁ。
お姉ちゃんはずっと一歩引いた感じだったしカップルというのは違うかなぁ」
「そうかなぁ、お似合いだと思うけど」
「それって春華ちゃんの感想だよね?」
「いや、そうだけど・・・美波ちゃん、まだフユのこと諦めてないの?」
「ちょっと、春華ちゃん!
二之宮さんも居るのに余計なこと言わないでよ!」
「岸元さん、冬樹君のことお好きなんですか?」
「好きよ。16年間一緒だった絆だってあるんだし、同い年だし、一学期にはちょっとだけ行き違いもあったけど、神坂家以外では一番深い繋がりがあるのは私なんだから」
「幼なじみだからってその関係に胡座をかいていたら、後から来た人に付き合われてしまうってよく聞きますけど?」
「それは禁句!」
「・・・美波ちゃんは自分ですべり台のある公園へ行ったから」
「春華ちゃん!昔からすべり台がどうのって言うけど、それの元ネタ知ってるんだからね!」
「知ってたんだ・・・派生系の澤●・すべり台・英●々とかも?」
「それっ!ホントに腹が立ったんだからねっ!」
「ごめんね。うちと岸元家でアニメやマンガが趣味なのってあたしだけじゃん。
だから寂しかったんだよ、棒読み」
「全然悪いと思ってないよね!」
からかい過ぎたせいで、美波ちゃんの手が出てきた。もちろん本気ではないけど、これが地味に痛い。
「ほんとにごめんって、もう言わないから」
「もうっ、春華ちゃんは。
でも、そんな感じの春華ちゃん久しぶりだよね」
「たしかに、フユの一件があってから余裕がなかったから。春アニメは途中から見てないし、夏アニメとか何やっているのか全然チェックしてないし、ホントどうしよ?」
「それは知らないけど、やっと余裕が出てきた感じなのは良かったよね」
「うん、ほんと良かったと思う。
それと、二之宮さん。美波ちゃんとだけで盛り上がって、ごめんなさい」
「良いのよ、ふたりが幼なじみで仲が良いのはわかっていて混ぜてもらったんだし、むしろ春華さんが気遣ってくれて嬉しいわ」
「そう言ってもらえると助かるよ。
ところで二之宮さんはアニメとかマンガは見る人?」
「たまにマンガを読むくらいでアニメは見ていないわね」
「そっかぁ」
「ところで、岸元さんの趣味は何なのですか?」
「わたしはファッションとか美容とかコスメが好きで研究してる」
「なら私と気が合いそうね。私も美容とかコスメとか好きなの」
「そうなんだ、でも納得。二之宮さんすごく綺麗だもの」
「そう言ってもらえるのは嬉しいわ」
二之宮さんは近寄りがたい印象だったけど、今日一日でもずいぶん仲良くなれた気がする。
これからが楽しみだ。
◆鷺ノ宮隆史 視点◆
「梅毒ってなんですか?」
「性病の一種で、性交することで感染する病気だよ。
それで、君の友人が発症したから、君にも感染していないか検査をしないといけないんだ」
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