学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

したらき

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第81話

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神坂夏菜かみさかかな 視点◆

学校へ向かい最寄り駅へ着くとクラスの友人に出会った。


「おはよう、夏菜ちゃん。もう怪我は大丈夫なの?」


「ああ、おはよう。包帯こそ巻いているけど傷は浅いし、他も問題ないよ。
 昨日は念のための検査があったから学校は休んだけど身体は元気なものだ」


「そうなんだ、よかったね。怪我させた五十嵐いがらしが言っていたんだけど、夏菜ちゃんは五十嵐のこと許したんだって?」


「まぁ、許したと言うか不幸な事故みたいなものだったからな。
 たまたま振った腕が触れたけど力なんか全然入っていなかったし、運悪く私が踏ん張れなくて転んでしまってその先に机があったというだけだ。
 彼も怪我をさせるつもりはなかったわけだし、すぐにお母様と謝罪に来てくれたんだから、それ以上何か言ったら可哀想だよ」


「夏菜ちゃんって、普段は男子に厳しいのに今回は甘いね」


「わざとじゃないなら私だってあれこれ言わないよ。
 だいたい私が何か注意をする時は本人が悪いからだ」


「たしかに、そう言われると納得かも」


「そうだぞ。だいたい五十嵐君は文化祭のクラス展示のジオラマをすごく頑張って準備してくれていたんだ。
 夏休みだってかなり学校へ登校してたんだから中止と言われたら動揺もするだろうし、生徒会長わたしに物を申したくなる気持ちもわかる」


「そうなんだ。よくそこまで知ってたね」


「まぁ、私の性分だからな」



などと話しながら学校へ向かい、その道中で遭遇した顔見知りに同じ様に声を掛けられて何度も同じ説明を繰り返した。



教室へ着くとやはり注目を浴び、すぐに取り囲まれた。


「もう大丈夫なの?」


「神坂さん、ごめん。神坂さんのせいじゃないのに詰め寄ったりして」


一昨日とは違って心配や謝罪ばかりで責める様な声はなかった。


「心配してくれてありがとう。私は元気だし、五十嵐君のことは不幸な事故で彼に悪い感情は持っていない。
 むしろ五十嵐君は文化祭の展示のジオラマ作りを誰よりも取り組んでくれていたのに、それを無にするような状況に対して何もできずに申し訳なかったと思っている。
 だから、みんなも五十嵐君を責める様な事はしないで欲しい」


「ホントに五十嵐が言っていた通りだな。会長のこと見直したよ」


「夏菜、前から大人びてると思ってたけど思ってた以上だな」


「神坂さん、俺のためにありがとう!
 一昨日も言ったけど、神坂さんのために何でもするから言ってくれ!」


思っていたことを皆に伝えるとわかってくれたようで空気が和らいで良かった。

それにしても、五十嵐君はちょっと感激し過ぎじゃないか?




今日はずっと事情を知らない人に会うたびに説明を繰り返す一日だった。

文化祭中止については予定通り昨日全校集会で説明がされたらしく、不満の声が燻っているものの騒ぎは沈静化している様だった。

再度、校長先生に面会を求め中止の撤回を考えてもらえないかお願いをしたが、逆に理事会が絶対に譲ってくれないという話をされてしまいそれ以上は言えなかった。


また、文化祭中止の話が影響しているのか3学年では私が冬樹ふゆきの冤罪を助長していたという空気は霧散している様に感じ、2学年の様子を見にいったところ冬樹のクラスを責める様な雰囲気はまだ少し残っていたが、春華のクラスメイトはむしろ春華を心配してくれている様子だった。




帰宅をすると、春華と美波みなみの他にもう一人二之宮凪沙にのみやなぎさが居た。

二之宮凪沙と接点ができていたのは誤算だ。今までほとんど縁がなかった人間だから油断していた。

変に意識させては良くないかと思って、冬樹のことを絡め手で陥れて孤立させて付き合いたいと動いていた事を春華には伝えていなかったのが裏目に出てしまったようだ。


「ただいま。二之宮さんも来てたんだね」


「はい、お邪魔してます。
 ひとりで勉強をすると詰まってしまう時もあるので、春華さん達に加えてもらったんです。
 怪我の様子は大丈夫なのですか?」


「ああ、包帯は巻いているが問題はない。それで勉強は捗ったか?」


「ええ、お陰様で有意義な時間を過ごさせてもらいました」


「それは良かった。その勉強会だが・・・春華、来週から学校へ行かないか?
 学校の雰囲気は文化祭が中止になった影響でけっこう変わっていて、春華のクラスメイトはお前のことを心配していたぞ」


「そうなの・・・でも、怖いよ」


「無理強いするつもりはないが、行けるなら学校へ行った方が良いぞ。
 美波と二之宮さんには悪いが春華にとって良い方向へ状況が動いているから、とりあえず月曜だけでも行かないか?」


「うーん、お姉がそこまで言うなら月曜日は行くだけ行ってみる。
 美波ちゃん、二之宮さん、ごめんね」


「わたしに遠慮なんかしないでよ。学校へ行って大丈夫なら行った方が良いよ。
 それに、春華ちゃんは今年の高卒認定の申し込みしてないんだから尚更行った方が良いと思うよ」


「そうですね。私も学校へ行けるのだったら行った方が良いと思います。
 ただ、せっかく一緒に勉強する仲になったのだから、これからも家で勉強する時はご一緒させてほしいです」


「ふたりともありがとう。
 お姉、そういう事だから月曜はよろしくね」


とりあえず月曜日は引き離すことができたみたいだ。二之宮凪沙を押し付ける様で美波には悪いが、やはり血の繋がった妹の方が大事だ。

何とかしてこのまま春華を復学させて二之宮凪沙との接触は減らしたい。そうでなくても、こうなった以上は春華にも二之宮凪沙の本性を言わないわけにはいかないな。



ほどなくして、美波と二之宮凪沙は帰っていった。



◆神坂春華 視点◆

美波ちゃんと二之宮さんが帰っていき、夕ご飯を食べてからお姉が大事な話があると言ってきたので従いリビングのテーブルで向かい合った。


「実はな、二之宮さんについてなんだが、冬樹の冤罪事件の首謀者のようだ」


「ええ?何で?二之宮さんも被害者なんだよね?」


「ああ、表向きにはそうなっているが、どうやら違うようだ。
 夏休みの終わりに美晴さんと私で鷺ノ宮隆史さぎのみやたかしに話を聞きに行ったんだが、二之宮さんに脅されて従っていたと言っていた。
 もちろん鷺ノ宮隆史が嘘をついている可能性はあるが、話していた時の様子を見る限り嘘をついているようには見えなかったし、それを真実とした場合は辻褄が合うんだ」


「そんな・・・あたし達を滅茶苦茶にしたのは二之宮さんなの?」


「あくまで冬樹が集めた情報と鷺ノ宮隆史の証言からの推論だから絶対にそうだとは言い切れないが、警戒して然るべきだと思う。
 確証がなかったし不確かな状態でお前に言うのは良くないと思って黙っていたが、接点を持ったとなれば言わないわけにはいかないと思ったんだ」


「それはわかるけど、美波ちゃんにはどう伝えるの?」


「それは相談したかった。今まで接点がなかったのにいきなり来ていたからな、情報が欲しいんだ。
 鷺ノ宮隆史の言う通りなら春華や美波に接触してきたのはその先に冬樹に近付きたいという狙いがあるだろうが、どういう経緯で一緒に勉強することになったんだ?」


「二之宮さんが美波ちゃんにメッセージを送ってきて、あたしと一緒に勉強している事を伝えたら羨ましいって返ってきたから、一緒に勉強したら良いんじゃないかって美波ちゃんが思ったらしくて、二之宮さんも一緒に勉強して良いかって聞いてきたから、あたしは良いよって返事したの。
 そうしたら二之宮さんも一緒に勉強したいって返ってきたから一緒に勉強することになったの」


「そうか、二之宮さんから連絡してきて、話の流れで美波が言い出したのか・・・」


「美波ちゃんには明日話さない?」


お姉は何か考えているようだけど、注意しないといけないならそれは絶対伝えるべきだと思う。

お姉は美波ちゃんの事をどこか『他人』として見ているところがあって、妹の扱ってはいるけどあくまで『様に』が付いていて、いざとなったらあたしやフユのために切り捨てる様な感覚があるから、このまま黙っていてあたしだけを二之宮さんから引き離す一方で美波ちゃんに押し付ける事も考えているのではないかと思う。

あたしやフユを大事に思ってくれているのは嬉しいけど、あたしにとっては双子の姉妹だという感覚がある美波ちゃんを切り捨てるようなことをして欲しくない。


「そうだな・・・話さないわけにはいかないよな。
 都合を聞いてもらっていいか?
 私は明日はいつでも時間が取れる」


「うん、わかった。美波ちゃんに聞いてみるね」



岸元きしもと美波 視点◆

春華ちゃんと二之宮さんと勉強してきて疲れ切っていた。

二之宮さんは今まで接点があまりなかった人なので、いくら黙々と勉強している時間が長かったとは言え精神的にけっこう疲れてしまっていて、お風呂の準備も面倒になってシャワーで済ませ、夕飯も摂らずにベッドに横になったら意識が遠のいた。



◆二之宮凪沙 視点◆

冬樹の家から帰る途中で、知らない番号から電話がかかってきた。内容は加害者とされているサッカー部の男子の1人が梅毒に罹患してしまっていたので、私に検査をして欲しいという内容だった。

自分で言うのは変だけど不特定多数と関わってきていたのだからある意味必然かもしれないし、驚くことはない。問題はこれでまたお母さんに小言を言われてしまうだろうと言うことだ。

新宿の歌舞伎町に匿名かつ無料で検査できる場所があるということなので行ってこようと思うけど、に出会うかも知れないから今は歌舞伎町は行きたくないのよね。
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