119 / 252
第119話
しおりを挟む
◆二之宮凪沙 視点◆
岸元さんが冬樹と一緒に出掛ける様な素振りを見せていたので、朝早くから岸元さんのマンションに来て様子を見ていた。
思いのほか早い時間におしゃれを決め込んだ岸元さん、それに春華さんと生徒会長が一緒に出てきたので、そのままこっそりついて行ったら予想通り冬樹と美晴さんと待ち合わせていた。
そこで岸元さんと春華さんのじゃれ合いを見ていた冬樹が・・・私が初めて見た時と同じ様な・・・笑顔を見せていた。
衝撃的だった。ただでさえ理知的で優しげでカッコよい冬樹が神々しく見えた。
それと同時に、そんな風に見てもらえる岸元さん達が恨めしく思えてならなかった。
『その笑顔を私に向けて欲しい』
心の奥底からそう思った。
でも、どうすれば良いのか皆目見当が付かない・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
一瞬だったのか、数分経っていたのか意識を取り戻した時には冬樹たちは視界から居なくなっていた。
少し周囲を探してみたけれど、冬樹たちを見付けることはできなかった。
◆鷺ノ宮那奈 視点◆
月のものが来たため、今の職場で働くようになって初めてまとまって休む事になった。
幸い軽い方なので動くのには支障がない上に何もしないことが落ち着かなかったので、隆史のことについて手掛かりを得られないかと思い二之宮さんのお宅へ訪問してみた。
急に思い付いてのアポイントがない訪問だったのでしょうがないのだけど、誰も在宅しておらず空振りになってしまったため、帰ろうとしたところで声を掛けられた。
「うちに何か御用ですか?」
見た目高校生か大学生くらいの女の子。もしかすると、二之宮凪沙さんかも知れない
「二之宮凪沙さんとお話をしたくて、伺わせていただいたのだけど、あなたが凪沙さんかしら?」
「はい、そうですが、お姉さんは何者ですか?」
「ごめんなさい。名乗るのが遅れてしまったわね。
鷺ノ宮隆史の姉、鷺ノ宮那奈と言います」
「そうですか・・・お姉さんが私に会いに来たということは隆史から話を聞いたのでしょうか?」
「ええ、あなたについて興味深い話を聞いたわ」
「わかりました。ここで話をするのは難なので、近くのカフェかなにかでいいですか?」
「押し掛けたのは私の方だし、お話をしてもらえるなら構わないですよ」
二之宮凪沙さんと近くのファミレスまで移動し、ふたり分の飲み物を注文し終えるまでほとんど口を開かず、飲み物が用意されたところで話を切り出した。
「二之宮さんが隆史の弱みを作って、逆らえなくなった隆史に一連の事件を起こさせたと聞いたのだけど本当かしら?」
「仮にそれが本当だとして、私が『はい』とでも言うと思いますか?」
「きっと言わないでしょうね。
でも、それでもわかることがあるわ」
「お伺いしても?」
「あなたは隆史の姉である私が目の前に現れたというのに、恨み言のひとつも言うことなく応じた。
そして、特に気負うことなく『隆史』という名前を口にしている」
「既にご両親からの謝罪はいただいていますし、付き合いがあった時の呼び方を変えないのは普通ではないですか?」
「そうかもしれませんね。それでいいと思います。
私は神坂冬樹さんにこの事をお話しするだけですから」
「それ、どういう意味ですか?」
思っていた通り、神坂さんの名前を出したら雰囲気が豹変し睨み付けてきた。
「どうもこうも今言った通りです。
私は神坂さんと情報交換を行っていて、わかったことは共有しているのですよ。
なので、私が二之宮さんと会ってこういうお話をしましたと言うだけです。
それを聞いた神坂さんがどう思われるかは、私の知るところではないですよ」
私の中で直感的に二之宮さんが元凶であるということを感じ取り、恨みの感情も乗ってキツイ言い方をしてしまったけれども、しょうがないところがあると思う。
二之宮さんは睨み続けるだけで言葉を発さない状態になったので、用が済んだとばかりに席を立つことにした。
「お聞きしたいことは聞けたので、私はこれで失礼しますね。
二之宮さんの分も代金は払っていきますので、良かったらゆっくりしていってください」
岸元さんが冬樹と一緒に出掛ける様な素振りを見せていたので、朝早くから岸元さんのマンションに来て様子を見ていた。
思いのほか早い時間におしゃれを決め込んだ岸元さん、それに春華さんと生徒会長が一緒に出てきたので、そのままこっそりついて行ったら予想通り冬樹と美晴さんと待ち合わせていた。
そこで岸元さんと春華さんのじゃれ合いを見ていた冬樹が・・・私が初めて見た時と同じ様な・・・笑顔を見せていた。
衝撃的だった。ただでさえ理知的で優しげでカッコよい冬樹が神々しく見えた。
それと同時に、そんな風に見てもらえる岸元さん達が恨めしく思えてならなかった。
『その笑顔を私に向けて欲しい』
心の奥底からそう思った。
でも、どうすれば良いのか皆目見当が付かない・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
一瞬だったのか、数分経っていたのか意識を取り戻した時には冬樹たちは視界から居なくなっていた。
少し周囲を探してみたけれど、冬樹たちを見付けることはできなかった。
◆鷺ノ宮那奈 視点◆
月のものが来たため、今の職場で働くようになって初めてまとまって休む事になった。
幸い軽い方なので動くのには支障がない上に何もしないことが落ち着かなかったので、隆史のことについて手掛かりを得られないかと思い二之宮さんのお宅へ訪問してみた。
急に思い付いてのアポイントがない訪問だったのでしょうがないのだけど、誰も在宅しておらず空振りになってしまったため、帰ろうとしたところで声を掛けられた。
「うちに何か御用ですか?」
見た目高校生か大学生くらいの女の子。もしかすると、二之宮凪沙さんかも知れない
「二之宮凪沙さんとお話をしたくて、伺わせていただいたのだけど、あなたが凪沙さんかしら?」
「はい、そうですが、お姉さんは何者ですか?」
「ごめんなさい。名乗るのが遅れてしまったわね。
鷺ノ宮隆史の姉、鷺ノ宮那奈と言います」
「そうですか・・・お姉さんが私に会いに来たということは隆史から話を聞いたのでしょうか?」
「ええ、あなたについて興味深い話を聞いたわ」
「わかりました。ここで話をするのは難なので、近くのカフェかなにかでいいですか?」
「押し掛けたのは私の方だし、お話をしてもらえるなら構わないですよ」
二之宮凪沙さんと近くのファミレスまで移動し、ふたり分の飲み物を注文し終えるまでほとんど口を開かず、飲み物が用意されたところで話を切り出した。
「二之宮さんが隆史の弱みを作って、逆らえなくなった隆史に一連の事件を起こさせたと聞いたのだけど本当かしら?」
「仮にそれが本当だとして、私が『はい』とでも言うと思いますか?」
「きっと言わないでしょうね。
でも、それでもわかることがあるわ」
「お伺いしても?」
「あなたは隆史の姉である私が目の前に現れたというのに、恨み言のひとつも言うことなく応じた。
そして、特に気負うことなく『隆史』という名前を口にしている」
「既にご両親からの謝罪はいただいていますし、付き合いがあった時の呼び方を変えないのは普通ではないですか?」
「そうかもしれませんね。それでいいと思います。
私は神坂冬樹さんにこの事をお話しするだけですから」
「それ、どういう意味ですか?」
思っていた通り、神坂さんの名前を出したら雰囲気が豹変し睨み付けてきた。
「どうもこうも今言った通りです。
私は神坂さんと情報交換を行っていて、わかったことは共有しているのですよ。
なので、私が二之宮さんと会ってこういうお話をしましたと言うだけです。
それを聞いた神坂さんがどう思われるかは、私の知るところではないですよ」
私の中で直感的に二之宮さんが元凶であるということを感じ取り、恨みの感情も乗ってキツイ言い方をしてしまったけれども、しょうがないところがあると思う。
二之宮さんは睨み続けるだけで言葉を発さない状態になったので、用が済んだとばかりに席を立つことにした。
「お聞きしたいことは聞けたので、私はこれで失礼しますね。
二之宮さんの分も代金は払っていきますので、良かったらゆっくりしていってください」
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話
頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。
綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。
だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。
中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。
とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。
高嶺の花。
そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。
だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。
しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。
それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。
他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。
存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。
両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。
拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。
そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。
それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。
イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。
付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる