162 / 252
第162話
しおりを挟む
◆高梨百合恵 視点◆
二之宮さんがわたしに会いたいと言ってくれていることに応えるべく、早めに学校を出て二之宮さんが身を寄せている鷺ノ宮君のお姉さんと住んでいるアパートへ訪問した。
幸いわたしのマンションもみゆきの職場の関係で神奈川に近い方なので、帰りに寄るには悪くない場所になる。
「お久しぶりです、二之宮さん」
「仕事帰りにご足労いただきありがとうございます。
玄関で話すのも難ですので上がってください」
「お言葉に甘えてお邪魔させていただきますね」
中へ通されると、外見から想像していた通り狭い部屋で、鷺ノ宮君の家が元は裕福だったという話を思い出し事件の顛末で大変な思いをしたのかを察した。
「初めまして、鷺ノ宮隆史の姉で那奈と申します。
今は凪沙さんの養育者として保護させていただいております」
「本日はお邪魔させていただき申し訳ございません。
秀優高校で音楽科の担当をしております高梨百合恵と申します」
「いえいえ、もう学校と関係がなくなっている凪沙さんの希望に応じていただいて感謝いたします」
「わたしも二之宮さんのことが気になっており渡りに船でしたので、むしろ会いたいと思ってもらえて嬉しく思います」
二之宮さんと那奈さんとの話は最初に二之宮さんの懺悔とも言える謝罪の気持ちとその事に気付かせてくれた那奈さんへの感謝・・・その話の時の那奈さんは耳が赤くなるほど恥ずかしがっていた・・・に、那奈さんによると二之宮さんがそうなってしまった背景と思われる家庭事情の話で、それらを聞いてある意味で納得がいった。
家庭の影響で性格が捻じ曲がってしまって、頭が良く行動力もある二之宮さんが暴走してしまったのだろうという背景が透けて見えてきた。
そして、那奈さんが聖人君子なのではないかと思えるくらいにの懐の広さを垣間見せている。弟の隆史君のみならず、那奈さん自身やご両親も人生を大きく狂わされたであろうに、その元凶とも言える二之宮さんの保護を買って出るなんてわたしには真似ができないと思う。
隆史君は期間工として地方の工場にて住み込みで働きつつ高卒認定試験を受けて大学への進学を目指しているそうで、知らない生徒ではないので大学や受験の資料集めなど手伝ってあげられることがあるなら協力すると請け負った。
二之宮さんも今は迷っているみたいだけど、彼女も頭が良いしちゃんと取り組んで目指せば良い大学へ入れると思うので、彼女へ対しても求めてくれるなら協力をすると約束した。
また、那奈さんは隆史君と一緒に問題を起こした生徒たちについてもある程度把握していて、それぞれの近況を聞くとみな一様に悲惨なものだった。特に3年生は今から卒業は難しい上に高卒認定試験も終わっているので最低でも留年はするし、当然行った事についての世間からの厳しい目も向けられるので大変だと思う。いくら唆されてしまったのだとしても、行ったことは重大な犯罪なので悔い改めて禊を済ませて社会へ復帰して欲しいと思う。
話が落ち着いたところでお暇をさせてもらうと言ったら、二之宮さんが駅まで送ってくれると言うので断ろうと思ったけど、那奈さんに聞かれたくない話があるかと思い、近くまでで良いと告げてアパートを後にした。
二之宮さんは少し話し難そうにしていたもののポツポツと話し出した内容は那奈さんについてで、隆史君の影響でお父さんと那奈さんは仕事を追われ、更には結婚式の日程まで決まっていたのに婚約を解消し式のキャンセル料は自分で負担したとのこと。
その上隆史君の不法行為の請求などでお金がかかってしまうことから那奈さんは性風俗のお店で働いていたとのことで、それはその後お父さんが海外赴任の仕事をする様になったことで解消したので一応辞めたらしいけど、今後の状況次第では再入店するかもしれない余地があるということだ。
事故とは言え二之宮さんが那奈さんを怪我させてしまったこともあったそうで、後悔を顔に滲ませて語ってくれた。
物心付いた頃からピアノ一筋で他の人との関わりもあまりなかったわたしには二之宮さんにかけてあげられる言葉などないように思えたけど、何も言わないわけにもいかないと思い口を開いた。
「申し訳ないのですけど、わたしは家族とも良好な関係で好きなピアノをずっとやらせてもらっていて、それを仕事にさせてもらえているくらいに幸せなので、本当の意味で二之宮さんのことを理解することはできないと思います。
でも、わたしにとって二之宮さんも大事な教え子のひとりですから心配はしますし、できることはしてあげたいと思うのは偽らざる気持ちです。
なので、愚痴を聞いて欲しいとか那奈さんにはしづらい相談がしたいとか、その他なんでも困った時にはわたしを思い出してください。
ドラマに出てくる先生みたいに瞬く間に問題を解決するなんて格好良いことはできませんけど、ちゃんと二之宮さんと一緒に考えて良い方向へ進めるようには協力します。ですから、その時は遠慮なく連絡をしてくださいね」
そう言って意識的に微笑んで二之宮さんの顔を見つめたら、二之宮さんが抱き着きわたしの胸に顔を埋めて声を殺しながら泣き出したので、そっと頭を撫でてあげた。
実際にはそれほど経ってはいないけど長く感じた時間が終わり、二之宮さんが恥ずかしそうにわたしから離れて微笑んでくれた。
「ありがとうございます。その時は先生に相談させてもらいます」
◆塚田智 視点◆
高梨先生が早々と帰り支度をして職員室を出ていこうとしたのを見て気になってしまい、僕も慌てて片付けをして高梨先生の後を追うことにした。
もちろんこの様に後ろから気付かれないように着いていく行為はストーカー規制法に抵触しかねないことは理解しているが、条文を読む限り被害者に知られなければ該当しないとも解釈できるし、そもそも1回位ついていったところで知られることはないだろう。
電車に乗り、以前聞いていた住所とは真逆の方へ向かっていき、とうとう東京都から神奈川県へ入りようやく下車した。
駅からは地図アプリを見ているようで、スマホを見ながら移動しているので恐らくほとんど来たことがない場所なのだろう。進む内に商店が見えなくなり住宅街の中をスマホを確認しながら進んでいくので、目的地は個人宅なのかもしれない。
駅から10分以上歩いて目的地と思われる場所に着いたようで、スマホを確認してから目の前の古いアパートへ入っていった。
高梨先生が一室へ入っていったのを確認してから気付かれないようにその部屋の前まで進み表札を見ると『鷺ノ宮』と書かれていた。問題を起こし退学したあの鷺ノ宮の現在の住まいなのだろうか?
それとも同じ苗字なだけで関係のない別人なのだろうか?
わからないものの、ここへ居ても何もわからないと判断し、アパートの出入り口が見える場所へ移動し様子を伺っていた。
待っている間に警察官に声を掛けられ、不審人物が立ち止まっているという通報がされたという。幸い職員の身分証を見せ、目的のアパートに退学した生徒が住んでいるので会いに来たのだけど、今は在宅していないみたいで帰ってくるのを待っていると説明をしたら納得してくれた。
更に待っていると、高梨先生が二之宮さんと一緒に建物から出てきた。
なぜ鷺ノ宮の表札があるアパートに二之宮さんが居たのかはわからないけど、こうなるとあの元教え子の鷺ノ宮が住んでいるというのは恐らく間違いではないだろうと思う。
ともかく、ふたりで何かを話しながら駅の方へ向かって歩いているので追いかけていくことにした。
ふたりは途中で立ち止まり二之宮さんが高梨先生へ抱き着いて声を殺しながら泣きはじめ、高梨先生はあやす様に頭を撫で始めて数分後に落ち着いて移動を再開し駅へ向かって歩き始め、商店が多い通りまで戻ったところで高梨先生と二之宮さんが別れ、二之宮さんは元の道を戻っていき、高梨先生は駅へ向かって歩き出したので高梨先生を追おうとしたところで学校から電話がかかってきた。
『もしもし、田中です。塚田先生ですか?
ついさっき川崎の警察署から電話があって塚田先生を職務質問したけど、本当に本校の塚田先生ですかという問い合わせがあったのですよ。
今、川崎にいらっしゃるんですか?』
「あ、はい。例の二之宮さんが今こちらに暮らしているみたいで気になったので訪問してました」
『そうですか。でも、ただでさえ評判が落ちているんですから不用意な行動で更に評判を落とすようなことはしないでくださいね』
「はい、それはもちろん」
学年主任の田中先生からの電話に気を取られていたら高梨先生も二之宮さんも見失ったので、そのまま帰宅することにした。
◆二之宮凪沙 視点◆
先日連絡が取れた高梨先生が来てくれた。先日連絡を取り合ってからすぐのことなのに時間を作ってくれたことは嬉しく思う。
言い訳ができないほど残酷で多くの人に迷惑をかけたというのに、嫌味ひとつ言うことなく心から私を心配してくれている様子は那奈さんに通じるものがあり、今になって良い先生なのだと気付いた。
その高梨先生に那奈さんには聞かれたくない話をするために駅まで送ると一緒にアパートを出て歩きながら話を聞いてもらい、思わず泣き出してしまって慰めてもらった。
すごく気恥ずかしいけれども悪い気持ちは全然なかった。
これ以上迷惑をかけたくない気持ちもあるけれど、お言葉に甘えて何かあった時には相談に乗ってもらおうと思う。
そんな高梨先生と別れてアパートへ戻りかけたところで、元の担任である塚田先生が電話をしていた。
偶然なのか、隆史か私に会いに来たのか・・・それとも高梨先生を尾行して来たのか・・・不審に思って、塚田先生の様子を見ていたら電話が終わってきょろきょろ見渡して、何かを見失ったかのような素振りから諦めて帰るという雰囲気で駅へ向かって歩き始めたのを見て、駅まで尾行したらそのまま改札をくぐっていった。
恐らく高梨先生を尾行してきて、運悪く電話がかかってきて応対している間に見失ってしまって諦めて引き返したのだろう。
塚田先生は前から薄気味悪いところがあったけど、30代後半でも独身で陰気なので離婚したばかりの高梨先生との交際を狙っているのかもしれない・・・ただ、確証がないから迂闊なことは言えないけど、私も高梨先生のために何とかしたいと思う。
二之宮さんがわたしに会いたいと言ってくれていることに応えるべく、早めに学校を出て二之宮さんが身を寄せている鷺ノ宮君のお姉さんと住んでいるアパートへ訪問した。
幸いわたしのマンションもみゆきの職場の関係で神奈川に近い方なので、帰りに寄るには悪くない場所になる。
「お久しぶりです、二之宮さん」
「仕事帰りにご足労いただきありがとうございます。
玄関で話すのも難ですので上がってください」
「お言葉に甘えてお邪魔させていただきますね」
中へ通されると、外見から想像していた通り狭い部屋で、鷺ノ宮君の家が元は裕福だったという話を思い出し事件の顛末で大変な思いをしたのかを察した。
「初めまして、鷺ノ宮隆史の姉で那奈と申します。
今は凪沙さんの養育者として保護させていただいております」
「本日はお邪魔させていただき申し訳ございません。
秀優高校で音楽科の担当をしております高梨百合恵と申します」
「いえいえ、もう学校と関係がなくなっている凪沙さんの希望に応じていただいて感謝いたします」
「わたしも二之宮さんのことが気になっており渡りに船でしたので、むしろ会いたいと思ってもらえて嬉しく思います」
二之宮さんと那奈さんとの話は最初に二之宮さんの懺悔とも言える謝罪の気持ちとその事に気付かせてくれた那奈さんへの感謝・・・その話の時の那奈さんは耳が赤くなるほど恥ずかしがっていた・・・に、那奈さんによると二之宮さんがそうなってしまった背景と思われる家庭事情の話で、それらを聞いてある意味で納得がいった。
家庭の影響で性格が捻じ曲がってしまって、頭が良く行動力もある二之宮さんが暴走してしまったのだろうという背景が透けて見えてきた。
そして、那奈さんが聖人君子なのではないかと思えるくらいにの懐の広さを垣間見せている。弟の隆史君のみならず、那奈さん自身やご両親も人生を大きく狂わされたであろうに、その元凶とも言える二之宮さんの保護を買って出るなんてわたしには真似ができないと思う。
隆史君は期間工として地方の工場にて住み込みで働きつつ高卒認定試験を受けて大学への進学を目指しているそうで、知らない生徒ではないので大学や受験の資料集めなど手伝ってあげられることがあるなら協力すると請け負った。
二之宮さんも今は迷っているみたいだけど、彼女も頭が良いしちゃんと取り組んで目指せば良い大学へ入れると思うので、彼女へ対しても求めてくれるなら協力をすると約束した。
また、那奈さんは隆史君と一緒に問題を起こした生徒たちについてもある程度把握していて、それぞれの近況を聞くとみな一様に悲惨なものだった。特に3年生は今から卒業は難しい上に高卒認定試験も終わっているので最低でも留年はするし、当然行った事についての世間からの厳しい目も向けられるので大変だと思う。いくら唆されてしまったのだとしても、行ったことは重大な犯罪なので悔い改めて禊を済ませて社会へ復帰して欲しいと思う。
話が落ち着いたところでお暇をさせてもらうと言ったら、二之宮さんが駅まで送ってくれると言うので断ろうと思ったけど、那奈さんに聞かれたくない話があるかと思い、近くまでで良いと告げてアパートを後にした。
二之宮さんは少し話し難そうにしていたもののポツポツと話し出した内容は那奈さんについてで、隆史君の影響でお父さんと那奈さんは仕事を追われ、更には結婚式の日程まで決まっていたのに婚約を解消し式のキャンセル料は自分で負担したとのこと。
その上隆史君の不法行為の請求などでお金がかかってしまうことから那奈さんは性風俗のお店で働いていたとのことで、それはその後お父さんが海外赴任の仕事をする様になったことで解消したので一応辞めたらしいけど、今後の状況次第では再入店するかもしれない余地があるということだ。
事故とは言え二之宮さんが那奈さんを怪我させてしまったこともあったそうで、後悔を顔に滲ませて語ってくれた。
物心付いた頃からピアノ一筋で他の人との関わりもあまりなかったわたしには二之宮さんにかけてあげられる言葉などないように思えたけど、何も言わないわけにもいかないと思い口を開いた。
「申し訳ないのですけど、わたしは家族とも良好な関係で好きなピアノをずっとやらせてもらっていて、それを仕事にさせてもらえているくらいに幸せなので、本当の意味で二之宮さんのことを理解することはできないと思います。
でも、わたしにとって二之宮さんも大事な教え子のひとりですから心配はしますし、できることはしてあげたいと思うのは偽らざる気持ちです。
なので、愚痴を聞いて欲しいとか那奈さんにはしづらい相談がしたいとか、その他なんでも困った時にはわたしを思い出してください。
ドラマに出てくる先生みたいに瞬く間に問題を解決するなんて格好良いことはできませんけど、ちゃんと二之宮さんと一緒に考えて良い方向へ進めるようには協力します。ですから、その時は遠慮なく連絡をしてくださいね」
そう言って意識的に微笑んで二之宮さんの顔を見つめたら、二之宮さんが抱き着きわたしの胸に顔を埋めて声を殺しながら泣き出したので、そっと頭を撫でてあげた。
実際にはそれほど経ってはいないけど長く感じた時間が終わり、二之宮さんが恥ずかしそうにわたしから離れて微笑んでくれた。
「ありがとうございます。その時は先生に相談させてもらいます」
◆塚田智 視点◆
高梨先生が早々と帰り支度をして職員室を出ていこうとしたのを見て気になってしまい、僕も慌てて片付けをして高梨先生の後を追うことにした。
もちろんこの様に後ろから気付かれないように着いていく行為はストーカー規制法に抵触しかねないことは理解しているが、条文を読む限り被害者に知られなければ該当しないとも解釈できるし、そもそも1回位ついていったところで知られることはないだろう。
電車に乗り、以前聞いていた住所とは真逆の方へ向かっていき、とうとう東京都から神奈川県へ入りようやく下車した。
駅からは地図アプリを見ているようで、スマホを見ながら移動しているので恐らくほとんど来たことがない場所なのだろう。進む内に商店が見えなくなり住宅街の中をスマホを確認しながら進んでいくので、目的地は個人宅なのかもしれない。
駅から10分以上歩いて目的地と思われる場所に着いたようで、スマホを確認してから目の前の古いアパートへ入っていった。
高梨先生が一室へ入っていったのを確認してから気付かれないようにその部屋の前まで進み表札を見ると『鷺ノ宮』と書かれていた。問題を起こし退学したあの鷺ノ宮の現在の住まいなのだろうか?
それとも同じ苗字なだけで関係のない別人なのだろうか?
わからないものの、ここへ居ても何もわからないと判断し、アパートの出入り口が見える場所へ移動し様子を伺っていた。
待っている間に警察官に声を掛けられ、不審人物が立ち止まっているという通報がされたという。幸い職員の身分証を見せ、目的のアパートに退学した生徒が住んでいるので会いに来たのだけど、今は在宅していないみたいで帰ってくるのを待っていると説明をしたら納得してくれた。
更に待っていると、高梨先生が二之宮さんと一緒に建物から出てきた。
なぜ鷺ノ宮の表札があるアパートに二之宮さんが居たのかはわからないけど、こうなるとあの元教え子の鷺ノ宮が住んでいるというのは恐らく間違いではないだろうと思う。
ともかく、ふたりで何かを話しながら駅の方へ向かって歩いているので追いかけていくことにした。
ふたりは途中で立ち止まり二之宮さんが高梨先生へ抱き着いて声を殺しながら泣きはじめ、高梨先生はあやす様に頭を撫で始めて数分後に落ち着いて移動を再開し駅へ向かって歩き始め、商店が多い通りまで戻ったところで高梨先生と二之宮さんが別れ、二之宮さんは元の道を戻っていき、高梨先生は駅へ向かって歩き出したので高梨先生を追おうとしたところで学校から電話がかかってきた。
『もしもし、田中です。塚田先生ですか?
ついさっき川崎の警察署から電話があって塚田先生を職務質問したけど、本当に本校の塚田先生ですかという問い合わせがあったのですよ。
今、川崎にいらっしゃるんですか?』
「あ、はい。例の二之宮さんが今こちらに暮らしているみたいで気になったので訪問してました」
『そうですか。でも、ただでさえ評判が落ちているんですから不用意な行動で更に評判を落とすようなことはしないでくださいね』
「はい、それはもちろん」
学年主任の田中先生からの電話に気を取られていたら高梨先生も二之宮さんも見失ったので、そのまま帰宅することにした。
◆二之宮凪沙 視点◆
先日連絡が取れた高梨先生が来てくれた。先日連絡を取り合ってからすぐのことなのに時間を作ってくれたことは嬉しく思う。
言い訳ができないほど残酷で多くの人に迷惑をかけたというのに、嫌味ひとつ言うことなく心から私を心配してくれている様子は那奈さんに通じるものがあり、今になって良い先生なのだと気付いた。
その高梨先生に那奈さんには聞かれたくない話をするために駅まで送ると一緒にアパートを出て歩きながら話を聞いてもらい、思わず泣き出してしまって慰めてもらった。
すごく気恥ずかしいけれども悪い気持ちは全然なかった。
これ以上迷惑をかけたくない気持ちもあるけれど、お言葉に甘えて何かあった時には相談に乗ってもらおうと思う。
そんな高梨先生と別れてアパートへ戻りかけたところで、元の担任である塚田先生が電話をしていた。
偶然なのか、隆史か私に会いに来たのか・・・それとも高梨先生を尾行して来たのか・・・不審に思って、塚田先生の様子を見ていたら電話が終わってきょろきょろ見渡して、何かを見失ったかのような素振りから諦めて帰るという雰囲気で駅へ向かって歩き始めたのを見て、駅まで尾行したらそのまま改札をくぐっていった。
恐らく高梨先生を尾行してきて、運悪く電話がかかってきて応対している間に見失ってしまって諦めて引き返したのだろう。
塚田先生は前から薄気味悪いところがあったけど、30代後半でも独身で陰気なので離婚したばかりの高梨先生との交際を狙っているのかもしれない・・・ただ、確証がないから迂闊なことは言えないけど、私も高梨先生のために何とかしたいと思う。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話
頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。
綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。
だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。
中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。
とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。
高嶺の花。
そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。
だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。
しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。
それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。
他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。
存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。
両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。
拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。
そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。
それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。
イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。
付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる