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第183話
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◆岸元美波 視点◆
昨日は午後になって急に日頃わたしへ対して不躾な視線を送ってきている男子が呼び出しを受け、しかもそのまま停学になって教室へも姿を見せないままになり『年内は登校しない』とだけSHRで発表された。
それを告げた高梨先生の表情はとても暗いもので、春華ちゃんは先生へ元気付ける言葉をかけたみたいだったけど、それでも表情は暗いままで優しい方なので気に病まないか心配だ。
もしかすると春華ちゃんが関わっているのかもしれないけど、わたしへの配慮かそもそも関係がないのかわたしが何か質問されることはなかったので知らないふりをする事にしたし、春華ちゃんもこの件には触れないので春華ちゃんがどこまで知っているのかもわからない。
冬樹へは春華ちゃんから3人が停学になったことを伝えたけど、冬樹も返答は『わかった。教えてくれてありがとう』とだけで興味がないのかあえて無視しているのかと言ったものだった。
逆に冬樹とお姉ちゃんからは今日の夜に岸元と神坂の家族に話をしたいことがあるから訪問するという連絡があった。考えられるのは歓迎会の日の一件に関わる何かで、その結果として冬樹は学校を自主退学するつもりなのかもしれない・・・せっかく高校生活を取り戻せたのにそうならば残念だし悔しい。特にきっかけがあの停学になった男子や悪口を言っている生徒たちなら尚更だ。
「ねぇ、春華ちゃん、夏菜お姉ちゃん。お姉ちゃんと冬樹が話したい事ってなんだろう?」
通学の電車内、春華ちゃん達に疑問をぶつけてみた。
「うーん、やっぱり学校を辞めちゃうのかなぁ。もしそうなら、せっかく同じクラスになって3年も同じになれるってなったから残念だよね」
「そうだよね。やっぱり学校を辞めるって話なのかな?」
「二人とも、そう結論を先走っても良くないだろう。
案外まったく違う話じゃないかと思うぞ・・・そうだな、ちゃんと婚約をしたいとか言うことかもしれない。
冬樹も美晴さんもそう言ったところをキチッとしたがる性格だし、今まで済し崩しで同居をしていたからその辺りをちゃんとしたいとか言うのも考えられる」
「あー、たしかにフユと美晴お姉ならそういうのちゃんとしたがりそう」
「そう言われてみればそうだね。何かキッカケがあってそういう話が出てきたのかもしれないね。
どちらにしても、聞いてみないことにはわからないか・・・でも、学校を辞めるって話じゃないと良いよね」
「そうだね。想像で悶々としててもしょうがないしこの話はここまでってことにして、そう言えば二之宮さんとは連絡したの?」
「うん、凪沙さんに絵画モデルが無事できたかメッセージで聞いてみたんだけど、姿勢を保つのが疲れたけどちゃんとできたって。次もまたやって欲しいって言ってもらったそうだよ。
あと、紹介してくれた夏菜お姉ちゃんにも感謝してるって」
「そうか。私は人に見られるのが苦手だから断ってしまっていたけど、縁を結び付けられたのなら良かったな。
二之宮さんに対しては思うところがあるけど、更生すると言うなら助力も吝かではない」
「そうだね。あたしもまだスッキリしない気持ちもあるけど、前を向いて頑張るって言うならそれはうまくいって欲しいよね」
「二人は凪沙さんに対して厳しいよね・・・って、冬樹を巻き込んだんだし当然か」
「むしろ、あたしは美波ちゃんがそんなに友好的なことの方が解せないよ。
二之宮さんが余計なことをしなかったらフユを傷付けることがなかったのもそうだし、美波ちゃんだって・・・」
「たしかにそれはあるよね。自分でもよくわからないんだ。論理的に考えたら憎んでいて当然とも思うけど、話をして色々な面を見たから絆されてしまってるのかも?
そう考えると、わたしってチョロいのかもしれないね」
「たしかに美波は昔からそういうところがあるな。実際、痛い目を見たんだからもっと気を付けてくれよ」
「そうだよ!ちゃんとしないとダメだよ」
それから学校へ着くまでずっと夏菜お姉ちゃんと春華ちゃんにお説教される事になったけど、二人は凪沙さんのことは悪く言わないし心配してくれている気持ちが伝わるってくるので嫌な気はしなかった。
◆岸元美晴 視点◆
昨日は病院での検査、その結果を冬樹くんへ伝え、今後どうするかなど怒涛の展開となっていて、話が落ち着いたところで急な眠気が押し寄せ、先に休ませてもらった。わざわざ来てくれていたみゆきさんや玲香さんには申し訳なかったけど、無理に起きていようとしたら自分とお腹の赤ちゃんを最優先するようにと窘められ素直に従わせてもらっていた。
「それじゃあ、みはるん。また大学でね」
「何かあったらすぐに私に連絡するのよ。駆け付けるから」
みゆきさんも玲香さんも朝になって冬樹くんが用意した朝ごはんを食べたら帰られた。
「おふたりとも本当に良い人たちですよね」
「ほんとにそうね。今年は良い出会いがあったわ。
玲香さんに対しては入学した時からずっと苦手意識を持っていたけど、そんな偏見を持っていたのが恥ずかしいわ」
「人は見かけによらないとは言いますよね。
ところで、美晴さん・・・」
そこまで言って冬樹くんは数秒何かを考えてから、真剣な表情を作った。
「僕と結婚してください。お腹のこどもと合わせて、全力で幸せにする様に頑張ります」
そこまで言うと相貌を崩して照れ隠しの笑みを浮かべた。
「・・・昨日はみゆきさん達が居て今後どうしていくかなどの話を先にしてしまいましたけど、ちゃんとお願いをしていなかったので・・・本当は真っ先に言わないといけなかったのですよね」
「あはは、先を越されちゃった。でも、私こそ冬樹くんにお願いするね。私と結婚してください・・・私の方がずっとずっと昔から冬樹くんのことが好きでその気持ちだって絶対に私の方が大きいんだから、そこは譲ってくれないかな?」
「え?あ、はい。では、よろしくお願いします。
僕も気持ちで美晴さんに負けないように頑張ります」
そうしてふたりで笑ってからどちらからともなく抱き合って口付けを交わした・・・
・・・何時間も経過したような感覚から唇を離して、お互いに照れ笑いを浮かべて、私は恥ずかしさを誤魔化したくて顔を冬樹くんの胸に埋めた。
「美晴さん、時間があるなら今日実家へ行く前に指輪を買いに行きませんか?」
耳元で冬樹くんが囁いた言葉を聞きますます幸せな気持ちが膨らんだ。
「うん、行きたい」
逸る思いから端的に気持ちを口にしてしまった・・・もっと余裕を見せてお姉さんぶりたい思いもあったけど、幸せだし不満は全く無い。
昨日は午後になって急に日頃わたしへ対して不躾な視線を送ってきている男子が呼び出しを受け、しかもそのまま停学になって教室へも姿を見せないままになり『年内は登校しない』とだけSHRで発表された。
それを告げた高梨先生の表情はとても暗いもので、春華ちゃんは先生へ元気付ける言葉をかけたみたいだったけど、それでも表情は暗いままで優しい方なので気に病まないか心配だ。
もしかすると春華ちゃんが関わっているのかもしれないけど、わたしへの配慮かそもそも関係がないのかわたしが何か質問されることはなかったので知らないふりをする事にしたし、春華ちゃんもこの件には触れないので春華ちゃんがどこまで知っているのかもわからない。
冬樹へは春華ちゃんから3人が停学になったことを伝えたけど、冬樹も返答は『わかった。教えてくれてありがとう』とだけで興味がないのかあえて無視しているのかと言ったものだった。
逆に冬樹とお姉ちゃんからは今日の夜に岸元と神坂の家族に話をしたいことがあるから訪問するという連絡があった。考えられるのは歓迎会の日の一件に関わる何かで、その結果として冬樹は学校を自主退学するつもりなのかもしれない・・・せっかく高校生活を取り戻せたのにそうならば残念だし悔しい。特にきっかけがあの停学になった男子や悪口を言っている生徒たちなら尚更だ。
「ねぇ、春華ちゃん、夏菜お姉ちゃん。お姉ちゃんと冬樹が話したい事ってなんだろう?」
通学の電車内、春華ちゃん達に疑問をぶつけてみた。
「うーん、やっぱり学校を辞めちゃうのかなぁ。もしそうなら、せっかく同じクラスになって3年も同じになれるってなったから残念だよね」
「そうだよね。やっぱり学校を辞めるって話なのかな?」
「二人とも、そう結論を先走っても良くないだろう。
案外まったく違う話じゃないかと思うぞ・・・そうだな、ちゃんと婚約をしたいとか言うことかもしれない。
冬樹も美晴さんもそう言ったところをキチッとしたがる性格だし、今まで済し崩しで同居をしていたからその辺りをちゃんとしたいとか言うのも考えられる」
「あー、たしかにフユと美晴お姉ならそういうのちゃんとしたがりそう」
「そう言われてみればそうだね。何かキッカケがあってそういう話が出てきたのかもしれないね。
どちらにしても、聞いてみないことにはわからないか・・・でも、学校を辞めるって話じゃないと良いよね」
「そうだね。想像で悶々としててもしょうがないしこの話はここまでってことにして、そう言えば二之宮さんとは連絡したの?」
「うん、凪沙さんに絵画モデルが無事できたかメッセージで聞いてみたんだけど、姿勢を保つのが疲れたけどちゃんとできたって。次もまたやって欲しいって言ってもらったそうだよ。
あと、紹介してくれた夏菜お姉ちゃんにも感謝してるって」
「そうか。私は人に見られるのが苦手だから断ってしまっていたけど、縁を結び付けられたのなら良かったな。
二之宮さんに対しては思うところがあるけど、更生すると言うなら助力も吝かではない」
「そうだね。あたしもまだスッキリしない気持ちもあるけど、前を向いて頑張るって言うならそれはうまくいって欲しいよね」
「二人は凪沙さんに対して厳しいよね・・・って、冬樹を巻き込んだんだし当然か」
「むしろ、あたしは美波ちゃんがそんなに友好的なことの方が解せないよ。
二之宮さんが余計なことをしなかったらフユを傷付けることがなかったのもそうだし、美波ちゃんだって・・・」
「たしかにそれはあるよね。自分でもよくわからないんだ。論理的に考えたら憎んでいて当然とも思うけど、話をして色々な面を見たから絆されてしまってるのかも?
そう考えると、わたしってチョロいのかもしれないね」
「たしかに美波は昔からそういうところがあるな。実際、痛い目を見たんだからもっと気を付けてくれよ」
「そうだよ!ちゃんとしないとダメだよ」
それから学校へ着くまでずっと夏菜お姉ちゃんと春華ちゃんにお説教される事になったけど、二人は凪沙さんのことは悪く言わないし心配してくれている気持ちが伝わるってくるので嫌な気はしなかった。
◆岸元美晴 視点◆
昨日は病院での検査、その結果を冬樹くんへ伝え、今後どうするかなど怒涛の展開となっていて、話が落ち着いたところで急な眠気が押し寄せ、先に休ませてもらった。わざわざ来てくれていたみゆきさんや玲香さんには申し訳なかったけど、無理に起きていようとしたら自分とお腹の赤ちゃんを最優先するようにと窘められ素直に従わせてもらっていた。
「それじゃあ、みはるん。また大学でね」
「何かあったらすぐに私に連絡するのよ。駆け付けるから」
みゆきさんも玲香さんも朝になって冬樹くんが用意した朝ごはんを食べたら帰られた。
「おふたりとも本当に良い人たちですよね」
「ほんとにそうね。今年は良い出会いがあったわ。
玲香さんに対しては入学した時からずっと苦手意識を持っていたけど、そんな偏見を持っていたのが恥ずかしいわ」
「人は見かけによらないとは言いますよね。
ところで、美晴さん・・・」
そこまで言って冬樹くんは数秒何かを考えてから、真剣な表情を作った。
「僕と結婚してください。お腹のこどもと合わせて、全力で幸せにする様に頑張ります」
そこまで言うと相貌を崩して照れ隠しの笑みを浮かべた。
「・・・昨日はみゆきさん達が居て今後どうしていくかなどの話を先にしてしまいましたけど、ちゃんとお願いをしていなかったので・・・本当は真っ先に言わないといけなかったのですよね」
「あはは、先を越されちゃった。でも、私こそ冬樹くんにお願いするね。私と結婚してください・・・私の方がずっとずっと昔から冬樹くんのことが好きでその気持ちだって絶対に私の方が大きいんだから、そこは譲ってくれないかな?」
「え?あ、はい。では、よろしくお願いします。
僕も気持ちで美晴さんに負けないように頑張ります」
そうしてふたりで笑ってからどちらからともなく抱き合って口付けを交わした・・・
・・・何時間も経過したような感覚から唇を離して、お互いに照れ笑いを浮かべて、私は恥ずかしさを誤魔化したくて顔を冬樹くんの胸に埋めた。
「美晴さん、時間があるなら今日実家へ行く前に指輪を買いに行きませんか?」
耳元で冬樹くんが囁いた言葉を聞きますます幸せな気持ちが膨らんだ。
「うん、行きたい」
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