学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

したらき

文字の大きさ
188 / 252

第188話

しおりを挟む
二之宮凪沙にのみやなぎさ 視点◆

美波みなみさんから直接話をしたいことがあるとメッセージをもらい、私も話をしたい気持ちがあったのですぐに了解の旨を返信したら、待ちきれなかったのかメッセージを送信した直後に通話着信がきた。


『もしもし、急にごめんね?大丈夫だった?』


「ええ、勉強をしていただけですから大丈夫ですよ。
 高卒認定試験の結果が届きましたか?」


『うん、今日届いてたし、全部合格してた』


「私もです。あとは大学受験に向けて勉強していくだけですね。
 お互いに頑張りましょう」


『うん、お互い無事に合格してて良かったよね。
 でも、今日話したかったのは別のことなんだ』


てっきり高卒認定試験の合否の話で今後のことについて相談したかったのかと思ったのですが違ったようです。


「そうだったのですか。では学校で何かトラブルでもありましたか?」


『トラブルはあったし、嫌な思いをしたりもしたけど話したいのは別のことなんだ』


「そうなのですか。先読みして横槍を入れるような事を言ってすみませんでした」


『気にしないで、わたしの話し方が良くなかったのだと思うし。
 それで、凪沙さんに話したかったことなんだけど、うちのお姉ちゃんが妊娠したんだ』


「それは・・・『おめでとうございます』と申し上げても良いのでしょうか?」


『うん、お姉ちゃんは『想定よりものすごく早かったけど嬉しい』って言っていたし・・・』


「という事はお相手は冬樹ふゆきさんですね?」


『うん・・・そう、冬樹が相手で、昨日うちに来て婚約をして、冬樹が18歳になったら正式に入籍するって言われた』


美波さんの声音こわねは硬く、無理に明るく振る舞おうとしているけどうまく誤魔化せていない様に感じられる。逆に私はスッキリとした気持ちになっている・・・少し前までものすごく執着していたのに、かけた迷惑が少しは赦された様な感覚にもなっている・・・もちろん何も赦されてはいないけれど、冬樹には幸せになって欲しいと思えているのは不思議でもあり嬉しくもある。

そう思える様になったのも那奈ななさんが些細なことでも気に掛けて無償の愛を与えてくれているからだと思うので、この点でも那奈さんには感謝しかない。


「私にとっては残念なことですが、良かったと思います。今は素直に祝福する気持ちですね」


をしたのにずいぶんしおらしいことを言うんだね』


美波さんにしては珍しく私へ怒気を込めた言い方をしてきた。


「そうですね。本当にをした私が言えた義理ではないですけど、那奈さんの事を思うと悪い感情を持つことが申し訳なくなってしまうのです」


『ごめん、今の言い方は悪かったね。聞き流してもらえるとありがたいかな』


「大丈夫ですよ。そもそも美波さんは冬樹さんとお付き合いできたかもしれなかったですし、それを身勝手な行動で捻じ曲げた張本人が綺麗事を口にしたら毒突きたくなるのも理解できます。
 むしろ、今になってもこの件で美波さんから罵られたって已む無しだと思います。そもそも美波さんを意に染まない状況へ追いやった私に対して、こうやって友好的でいてくれるのは美波さんの性格の良さだと思いますよ」


『ううん、たしかに凪沙さんが発端だったのだと思うけど、その後の選択はわたしがした事でその責任はわたしが取らないといけないんだよ。
 わたしはバカだから冬樹の言い分をちゃんと聞こうとしなかったし、鷺ノ宮さぎのみや君に誘われた時だって彼のことを良いなと思っていたり、そもそもに興味があって初めてを捧げたのだし・・・その後のことは完全に想定外だったけど、振り返って考えてみればあの時の鷺ノ宮君はおかしかったし、そんな事にも気付けなかったのだから・・・』


「これも私が言えた義理ではないですけど、あんな事は普通想像できないと思います。あまり思い詰めないでください」


『うん・・・そうだね。過去のことばかり見ててもしょうがないよね・・・難しいかもしれないけど、将来のことを考えるようにするよ』


「すみません・・・本当に・・・
 あと、いただいた電話で申し訳ないのですけど・・・これは夏菜かなさんと春華はるかさんへは言わないの欲しいのですが、一昨日の絵画モデルの仕事が終わって駅へ向かっている途中に参加された方に声を掛けられて、例の動画を知っていた様でその事を黙っていて欲しかったらどうのと言う事を言われました。
 私の方が圧倒的に多いですから杞憂かもしれませんが、美波さんも気を付けてください」


『気遣ってくれてありがとう。それと、そう言った事があって愚痴を言いたかったらわたしに言ってくれていいからね。いくら将来のことを考えようって言っても、嫌なことがあった時は口に出して発散しないと溜め込んで精神的に良くないからね。
 それと夏菜お姉ちゃん達に・・・というか誰にも言わないよ。特に夏菜お姉ちゃんは紹介したっていうのもあるし責任感もあるから気に病むだろうし・・・』


「こちらこそ気遣いありがとうございます。美波さんのおっしゃるように紹介してくれた夏菜さんには申し訳ないですから知られないようにしてください。
 それと、那奈さんへの誕生日プレゼント選びに付き合って欲しいのですけどお願いできますか?」


『もちろん良いよ!』



重要な話が終わり、後は雑談をしばらくしてから通話を終え、改めて噛みしめる・・・美波さんは基本的に前向きで良い性格だと思う。容姿も学力も冬樹と釣り合いだって取れていたし、生まれてからずっと築いていた関係だって良好だったのに、それを壊した私に対して恨み言を言ってこないどころか友人だと言ってくれる。さすがに美晴みはるさんとの関係を引き裂いてまで冬樹と恋人同士になる様には協力できないけど、できるだけ良い未来を拓ける様には手助けしたいし、この関係をもっと良いものにしていきたい。

それにしても、美波さんは冬樹が目指すからと一緒にお姉さんと同じ日本一難関の国立大学への進学を目指すと言うのは驚きました。冬樹が目指すからと言って愚直に同じ大学を目指すのは微笑ましくもあり、羨ましくもあり・・・私もそれを第一目標にこれからの1年ちょっとを頑張ってみよう。



◆鷺ノ宮那奈 視点◆

凪沙ちゃんが通話をしていた。話を盗み聞く気はないのだけど安普請で壁が薄いアパートなので声が漏れて聞こえてきてしまうし、特に声が張った瞬間だったり、カクテルパーティー効果で馴染みのある単語が含まれていると聞き取れてしまうところもあった。

相手は今唯一凪沙ちゃんと懇意にしている岸元きしもと美波さんで、凪沙ちゃんの保護者的な立場としては本当にありがたい存在だ。凪沙ちゃんのせいでひどい目にあったにも関わらず過去のこととして赦しているし、負い目を感じさせないように対等の立場を意識して対しているのが感じられる。色々と聡い凪沙ちゃんでも人間関係は不得手な様でその気遣いには気付けていないようだけど、まだ心の傷が癒えきれていないかさぶたの様な状況の今はそれが良いと思う。


それにしても、先日の絵画モデルの件は嬉しかった。親権者同意書にサインした時は夏菜さんから引き合いがあったと言っていたけど、本当は私へのプレゼントを買うために自分でお金を稼ぎたかったから紹介してもらっていたというのはいじらしくて思わず抱きしめに行きたい衝動に駆られた。さすがに私へ秘密にしようとしている気持ちを台無しにしたくないので知らないふりをするつもりだけど、隠しきれるか不安になるくらい嬉しくて鏡を見て練習をしてしまったくらいだ。


ご両親がちゃんと愛情をそそいであげていたら良かったのに、それが残念でならないけど、それを埋められるように私が愛情をそそいで導いてあげられたらと思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...