学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

したらき

文字の大きさ
199 / 252

第199話

しおりを挟む
二之宮凪沙にのみやなぎさ 視点◆

『知らない天井だ』・・・私が生まれるよりずっと前に放送されていたアニメの有名なセリフらしい・・・いつだったかラブホテルでセックスをした後そのまま眠ってしまったが目を覚ました時に天井へ視線を向けたままそんな事を口にし、無反応だった私に対してその様な説明をしてくれた。

その時はただただに相槌を打ち気分を損ねずいる事で少しでも多くのお小遣いをもらう事だけを考えて聞き流していたけれど、いざ自分がその様な天井を見ると言いたくなる気持ちが少し理解できた。


意識に靄がかかり違和感があるのは間違いなく、何かの事故に巻き込まれてしまったのかここで寝かされている理由も分からなかったけれど頬と頭に鈍い痛みを感じるので怪我をしたのは間違いないと思う。引き裂かれるような痛みは感じないので傷付いて醜悪な顔になっていないだろうと楽観してみたものの不安を感じる・・・醜くなったら何のために努力してきたのか・・・冬樹ふゆきを振り向かせることができなくなる・・・


おかしい・・・冬樹のことを考えているのに心が凪いでいる・・・いつもなら冬樹の顔を想像するだけで心臓が早鐘を打つ様な感覚になるのに、驚くほど気持ちが動かない・・・



自分のおかしさに困惑していたら巡回に来た看護師さんが私が目を覚ましていることに気付いて『痛いところがないか』『気分は悪くないか』など尋ねた後にお医者様を呼んできて、今の状況を確認し概ね問題がないだろうという判断をされ、あとで改めて検査をすると言い医師せんせいは去っていき、同伴していた看護師さんが『ご家族へ連絡してきます』と言ってナースステーションへ戻って行き、再度病室まで来てくれてから『ご家族へ連絡をしたらすぐに来てくれると言ってくれましたので待っていてくださいね。すごく心配してくれていましたよ』と言われたものの、両親がすごく心配してくれるというのが想像できなくて、看護師さんのリップサービスかと思った。


スマホが手元になく、看護師さんに尋ねると貴重品だからと家族が一度持ち帰っていてこれから持ってきてくれるとのことらしい。

また暖房が入っていることや他の人の服装を見て違和感を覚えたので、看護師さんに今日がいつなのかを尋ねたら12月だということにも混乱し、追加でその事を伝えたら医師せんせいを呼んできてくれて、緊急でMRIやCTを用いた本格的な検査をしてもらったところ、脳には異常がなさそうなものの衝撃を受けた際に一時的に記憶の一部を喪失してしまう一過性全健忘になったのではないかという推測をし、しばらく様子を見るということになった。



検査が終わり病室へ戻ると大人っぽい女性が待っていて、その女性が誰なのかわからなかったけど顔を見たらすごく安心する気持ちになれた。


凪沙なぎささん!良かった!」


その女性は私を見るなり相好を崩し安堵の表情を見せ話しかけてくれ、そのまま近寄ってきて抱き締めてくれた。


「あ、あの。失礼ですが、どなた様でしょうか?」


私が困惑しつつそう尋ねると女性の身体が固まり、少しだけ身体を離して私と顔を見合わせる。


「私のことがわからないのですね・・・看護師さんから伺ってはいましたが・・・」


その女性が悲痛の表情を見せ、病室まで同伴してくれた看護師さんが間に入り説明をしてくれた。




「そうですか・・・おそらく待っていれば記憶は戻るだろうということですね?」


「はい、ですのであまり気を落とさず見守っていていただければと思います」


「わかりました、ありがとうございます」



20代後半と思われる優しげな雰囲気をまとった女性は看護師さんが説明を終えて去っていくと、私へ向かって記憶のすり合わせや説明をするために話を始めてくれた。



女性・・・鷺ノ宮那奈さぎのみやななさんと話を始めてから記憶が整理されてきて、自分が忘れていた事を思い出してきた。この感覚はとても不思議なもので、靄がかっていたものが晴れると言った感じで、元々知っていた事をもう一度知る妙な体験でもあった。

ただ、那奈さんには記憶が戻ってきていることを告げず、記憶を失っている振る舞いを続けた。

心の底から心配してくれている那奈さんには申し訳ないと思いながら今回のことは私が騒動の種を無数にバラ撒いてきていたことの芽が出てきただけだと痛感しているし、まだまだ不安の種は尽きていない。

今回は私が1人の時で私だけが殴られるだけで済んだから良かったけれど、次の時には那奈さんを巻き込んでしまうかもしれない・・・そもそも既に巻き込んでいて、婚約していて式まで秒読みだったところを破談へ追い込み、一連で背負わされた借金や家族のために風俗で働かざるを得ない状況へ追い込んだし、全治2ヶ月の怪我もさせた・・・私は那奈さんの側にいてはいけない人間なのだと再認識させられる思いだ。

・・・このまましばらく記憶が戻らない振りをして退院し、見ず知らずの人と一緒に暮らすのは居心地が悪いからとでも理由をつけて川崎のアパートを離れ、神待ちでもしながら日々を繋いで18歳になったら風俗みたいな学卒や身元を問われない仕事に就いて生きていけば良いと思う・・・もう那奈さんを巻き込みたくないから・・・



高梨先生がお見舞いにお越しになってくれて、那奈さんよりもより深く記憶のすり合わせをするための会話をしている・・・恐らく最近の記憶がない二之宮にのみや凪沙として振る舞うことができていると思う。



更に、美波みなみさんも来てくれて、那奈さんや高梨先生と一緒に気遣ってくれる・・・この人たちをこれ以上巻き込まないためには一緒に居てはいけないと思うのだけれど、気持ちが温かなこの人たちと離れるのは嫌だと思ったら涙が湧き出てきて視界がぼやけてしまった。

それに気付いた那奈さん達は私に近付いてそれぞれが気遣う言葉をかけてくれて、それが一層涙を誘うことになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...