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第239話
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◆鷺ノ宮那奈 視点◆
火事に遭ってしまったことをきっかけに一時的に同居することになった高梨先生とそのご友人の赤堀さん。
高梨先生は隆史や凪沙がお世話になっていてその人となりが善良な方なのはわかっていたし、その高梨先生が同居するくらい仲が良い方ということで赤堀さんについても同居することには不安がなかった。
実際に同居すると気さくで押しの強さを感じさせつつも、それが押し付けすぎることもなく、むしろ『私に姉という立場の人がいたらこんな感じだったのではないかしら?』と思わされるくらいには頼もしさを感じさせる雰囲気がある人で、でも実際にはひとりっこだというのだから意外でもあった。
そんな赤堀さんが夜遅くにお酒を飲みながらしんみりしていらっしゃったのでお声をかけると高梨先生が元の旦那さんと楽しそうに電話をされていたことから色々思い悩まれているようだった。
近々ではまたふたりでルームシェアを前提に部屋を借りて住むことを前提に物件を探しているのに、そのパートナーである高梨先生が復縁して元の旦那さんと再び一緒に暮らすかもしれないとなるとたしかに悩ましくなると思う。
赤堀さんの自分自身が高梨先生の足枷になりたくないという気持ちは特に理解できる。
仲が良くて特別な絆がある様に思っていたけれど、思っていた以上に赤堀さんの想いは強くて、本人は錯覚だと言っていたけど御本人が言っていたように同性愛だったのだと思う。
同性愛とひとことで言っても、恋愛対象以外には興味がないパターンもあるし、赤堀さんはその恋愛対象である高梨先生以外には興味がないだけのパターンだったようにも見える・・・邪推だし考えるのも失礼だと思うけど、赤堀さんと高梨先生の出会いからのエピソードを話される赤堀さんからは特別な情を感じざるを得ないし、それが愛だと言われてもストンと納得できるくらいの大きさを感じた。
赤堀さんと夜更けに話をしていたのもあって少し寝不足を感じる翌日、仕事をしていると来客があると呼び出されて、応接室へ行くと義之さんと先週末に凪沙と買い物へ出ていたその出先で倒れて救急車で病院まで搬送されたおじいさんがいらっしゃっていた。
「義之さん、どうなされたのですか?
それにお隣の方は・・・」
「ああ、こちらは中条が昔からお世話になっている伊集院家の御当主の宗一郎様だ。
那奈が救護をしてくれたから病院での処置もすぐに行われたので無事に元気になられて、お礼を言いたいとわざわざお越しくださった」
「先日はわしが倒れていたところを救ってくれてありがとう。
主治医によれば迅速な対応がなかったら命も危うかったらしい・・・つまり、那奈さんが命の恩人だ」
「いえ、あの時は救急車が来るまで一緒に対応してくださっていた看護師の御婦人がほとんどやってくださっていましたし、私は一一九番通報して救急車を呼んだだけです」
「そうは言うが、その時の看護師さんに話を聞いたところ、那奈さんとお連れのお嬢さんが率先して周囲に協力を呼び掛けてくれたから自身も気付けたと言うし、那奈さんがAEDをすぐに持ってきてくれたらスムーズに救護活動ができたとも言ってくれている。
主治医も初動が良かったからすぐに回復できたし後遺症も出ずに済んでいるとも言ってくれている」
「私のおかげというのは恐縮ですけど、ご無事だったのは何よりです」
「事件性がないこともあって警察が関わることもなく、わしが救急車で運ばれてから手掛かりがないままいなくなってしまっていたので、お礼を言いたくて失礼ながら探させてもらった。
防犯カメラに映っていた映像を頼りに知り合いに探してもらっていたら、中条家の義之君の婚約者だと知って取り次いでもらった次第だ」
伊集院様にどう伝わっているのかはわからないものの、すでに義之さんの婚約者ではなくなっているので訂正をしたいけれど、この場の空気を壊すようなことを言いづらい。
「当然のことをしたまでです。
たまたまその場にいただけの私のことをわざわざ探し出してお越しいただいただけで恐縮です」
「慎ましい人柄じゃな。
恩人ということもあるが、那奈さんそのものも好ましく思う。
どうだろう。義之君との婚姻にわしからも祝福させてはもらえないかな?」
「ありがとうございます!」
伊集院様の申し出に義之さんがすぐさま深いお辞儀とともにお礼の言葉を述べた。
しかし、既に婚約を解消しているのでこのまま祝福をお受けするわけにはいかないので意を決して口を挟ませてもらうことにした。
「あのっ、ご厚意は大変ありがたいのですが、私と義之さんの婚約は・・・」
「那奈さん、言わんで良い。
申し訳ないが、義之君から話は聞いている。
那奈さんは義之君のことを愛してないのか?」
その問いへの回答は当然否定になる・・・ただ、汚れた私の様な女が義之さんの伴侶になる訳にはいかない。
「話をお聞きになられたのでしたら・・・」
「だから、言わんで良い。
わしは那奈さんの気持ちを聞かせてもらいたい」
「・・・義之さんのことを、愛しています」
真剣な眼差しで問いへの答えしか許さないという意思が感じられたので、搾り出すように声を出した。
「ならば良いではないか。
なに、那奈さん自身に落ち度があったわけではないし、中条家もわしの恩人を新しい家族に迎えられて喜ぶのではないか?
なぁ、義之君」
「はい、宗一郎様が恩人とおっしゃる那奈を両親も祖父も歓迎しますし、拒むはずがありません」
伊集院様が言外に後ろ盾になるから心配しないようにと言う説明をしてくれて義之さん。
「あの・・・本当に・・・義之さんと一緒になっても・・・迷惑をかけることはないのでしょうか?」
「ああ、それだけはわしが保証しよう」
「那奈!」
私は力が抜けてその場で崩れてしまったら義之さんが駆け寄り立たせてくれた。
「もういい・・・もう大丈夫だから・・・今度こそ余計なことは考えずに俺と結婚してくれ」
義之さんはそのまま私を抱きしめてくれて感極まって涙が溢れてきてしまった。
音にならないかすれた声で義之さんの名前を呼び胸に顔をうずめしばらくそうしていた。
落ち着いてくると、伊集院様もいらっしゃることを思い出して急に恥ずかしくなってしまい、義之さんの胸を押して身体を離そうとしたけれど抵抗され、小声で伊集院様がいらっしゃることを言うと意図を察して離れてくれた。
「申し訳ございません。つい勢いで、お恥ずかしいところをお見せしてしまいました」
「いや、いいんじゃよ。命の恩人に礼を返せたと満足しておる。
それにしても、ずいぶんと熱い抱擁じゃったな、かかっ」
義之さんは取り繕うように頭を下げながらお詫びの言葉を述べると、伊集院様は笑いながら流してくださった。
話が終わると義之さん達はそのまま帰っていき、私も職場へ戻った。
義之さんがまだ私とやり直したいと思っていてくれたからそれは良かったけれど、落ち着いてから考えれば一度白紙になった話をもう一度やりなおすことになるから、考えないといけないことは多い。
特に凪沙はまだひとりにさせるのは心配だし、そもそも私が養育者になると言ってご両親から引き取ったのだから無責任な事はできない。
あまりに急な話だったので今でも本当に手を取って良いのかという困惑もしているし、改めて本当に義之さんや中条の皆様にご迷惑をかけないのかという不安もある・・・けれど、義之さんを拒むことができなかった・・・今は義之さんと添い遂げさせてもらえる様に手を差し伸べていただいたことに感謝しかない。
火事に遭ってしまったことをきっかけに一時的に同居することになった高梨先生とそのご友人の赤堀さん。
高梨先生は隆史や凪沙がお世話になっていてその人となりが善良な方なのはわかっていたし、その高梨先生が同居するくらい仲が良い方ということで赤堀さんについても同居することには不安がなかった。
実際に同居すると気さくで押しの強さを感じさせつつも、それが押し付けすぎることもなく、むしろ『私に姉という立場の人がいたらこんな感じだったのではないかしら?』と思わされるくらいには頼もしさを感じさせる雰囲気がある人で、でも実際にはひとりっこだというのだから意外でもあった。
そんな赤堀さんが夜遅くにお酒を飲みながらしんみりしていらっしゃったのでお声をかけると高梨先生が元の旦那さんと楽しそうに電話をされていたことから色々思い悩まれているようだった。
近々ではまたふたりでルームシェアを前提に部屋を借りて住むことを前提に物件を探しているのに、そのパートナーである高梨先生が復縁して元の旦那さんと再び一緒に暮らすかもしれないとなるとたしかに悩ましくなると思う。
赤堀さんの自分自身が高梨先生の足枷になりたくないという気持ちは特に理解できる。
仲が良くて特別な絆がある様に思っていたけれど、思っていた以上に赤堀さんの想いは強くて、本人は錯覚だと言っていたけど御本人が言っていたように同性愛だったのだと思う。
同性愛とひとことで言っても、恋愛対象以外には興味がないパターンもあるし、赤堀さんはその恋愛対象である高梨先生以外には興味がないだけのパターンだったようにも見える・・・邪推だし考えるのも失礼だと思うけど、赤堀さんと高梨先生の出会いからのエピソードを話される赤堀さんからは特別な情を感じざるを得ないし、それが愛だと言われてもストンと納得できるくらいの大きさを感じた。
赤堀さんと夜更けに話をしていたのもあって少し寝不足を感じる翌日、仕事をしていると来客があると呼び出されて、応接室へ行くと義之さんと先週末に凪沙と買い物へ出ていたその出先で倒れて救急車で病院まで搬送されたおじいさんがいらっしゃっていた。
「義之さん、どうなされたのですか?
それにお隣の方は・・・」
「ああ、こちらは中条が昔からお世話になっている伊集院家の御当主の宗一郎様だ。
那奈が救護をしてくれたから病院での処置もすぐに行われたので無事に元気になられて、お礼を言いたいとわざわざお越しくださった」
「先日はわしが倒れていたところを救ってくれてありがとう。
主治医によれば迅速な対応がなかったら命も危うかったらしい・・・つまり、那奈さんが命の恩人だ」
「いえ、あの時は救急車が来るまで一緒に対応してくださっていた看護師の御婦人がほとんどやってくださっていましたし、私は一一九番通報して救急車を呼んだだけです」
「そうは言うが、その時の看護師さんに話を聞いたところ、那奈さんとお連れのお嬢さんが率先して周囲に協力を呼び掛けてくれたから自身も気付けたと言うし、那奈さんがAEDをすぐに持ってきてくれたらスムーズに救護活動ができたとも言ってくれている。
主治医も初動が良かったからすぐに回復できたし後遺症も出ずに済んでいるとも言ってくれている」
「私のおかげというのは恐縮ですけど、ご無事だったのは何よりです」
「事件性がないこともあって警察が関わることもなく、わしが救急車で運ばれてから手掛かりがないままいなくなってしまっていたので、お礼を言いたくて失礼ながら探させてもらった。
防犯カメラに映っていた映像を頼りに知り合いに探してもらっていたら、中条家の義之君の婚約者だと知って取り次いでもらった次第だ」
伊集院様にどう伝わっているのかはわからないものの、すでに義之さんの婚約者ではなくなっているので訂正をしたいけれど、この場の空気を壊すようなことを言いづらい。
「当然のことをしたまでです。
たまたまその場にいただけの私のことをわざわざ探し出してお越しいただいただけで恐縮です」
「慎ましい人柄じゃな。
恩人ということもあるが、那奈さんそのものも好ましく思う。
どうだろう。義之君との婚姻にわしからも祝福させてはもらえないかな?」
「ありがとうございます!」
伊集院様の申し出に義之さんがすぐさま深いお辞儀とともにお礼の言葉を述べた。
しかし、既に婚約を解消しているのでこのまま祝福をお受けするわけにはいかないので意を決して口を挟ませてもらうことにした。
「あのっ、ご厚意は大変ありがたいのですが、私と義之さんの婚約は・・・」
「那奈さん、言わんで良い。
申し訳ないが、義之君から話は聞いている。
那奈さんは義之君のことを愛してないのか?」
その問いへの回答は当然否定になる・・・ただ、汚れた私の様な女が義之さんの伴侶になる訳にはいかない。
「話をお聞きになられたのでしたら・・・」
「だから、言わんで良い。
わしは那奈さんの気持ちを聞かせてもらいたい」
「・・・義之さんのことを、愛しています」
真剣な眼差しで問いへの答えしか許さないという意思が感じられたので、搾り出すように声を出した。
「ならば良いではないか。
なに、那奈さん自身に落ち度があったわけではないし、中条家もわしの恩人を新しい家族に迎えられて喜ぶのではないか?
なぁ、義之君」
「はい、宗一郎様が恩人とおっしゃる那奈を両親も祖父も歓迎しますし、拒むはずがありません」
伊集院様が言外に後ろ盾になるから心配しないようにと言う説明をしてくれて義之さん。
「あの・・・本当に・・・義之さんと一緒になっても・・・迷惑をかけることはないのでしょうか?」
「ああ、それだけはわしが保証しよう」
「那奈!」
私は力が抜けてその場で崩れてしまったら義之さんが駆け寄り立たせてくれた。
「もういい・・・もう大丈夫だから・・・今度こそ余計なことは考えずに俺と結婚してくれ」
義之さんはそのまま私を抱きしめてくれて感極まって涙が溢れてきてしまった。
音にならないかすれた声で義之さんの名前を呼び胸に顔をうずめしばらくそうしていた。
落ち着いてくると、伊集院様もいらっしゃることを思い出して急に恥ずかしくなってしまい、義之さんの胸を押して身体を離そうとしたけれど抵抗され、小声で伊集院様がいらっしゃることを言うと意図を察して離れてくれた。
「申し訳ございません。つい勢いで、お恥ずかしいところをお見せしてしまいました」
「いや、いいんじゃよ。命の恩人に礼を返せたと満足しておる。
それにしても、ずいぶんと熱い抱擁じゃったな、かかっ」
義之さんは取り繕うように頭を下げながらお詫びの言葉を述べると、伊集院様は笑いながら流してくださった。
話が終わると義之さん達はそのまま帰っていき、私も職場へ戻った。
義之さんがまだ私とやり直したいと思っていてくれたからそれは良かったけれど、落ち着いてから考えれば一度白紙になった話をもう一度やりなおすことになるから、考えないといけないことは多い。
特に凪沙はまだひとりにさせるのは心配だし、そもそも私が養育者になると言ってご両親から引き取ったのだから無責任な事はできない。
あまりに急な話だったので今でも本当に手を取って良いのかという困惑もしているし、改めて本当に義之さんや中条の皆様にご迷惑をかけないのかという不安もある・・・けれど、義之さんを拒むことができなかった・・・今は義之さんと添い遂げさせてもらえる様に手を差し伸べていただいたことに感謝しかない。
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