転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

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127.探索訓練8

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3人がしょうもない言い争いをしていると、
ロジェから叱責が飛んできた。
「いい加減にしないか。
さっさと巨大スライムの魔石を回収して、戻るぞ。
最早、ここは単なる洞窟だ」

誠一はそう言われて、周囲を見渡した。
確かに先ほどと雰囲気が違っていた。
洞窟からは何も感じなかった。
薄暗く、肌寒い、ただそれだけだった。

「迷宮は、消失する。
それは単なる洞窟や遺跡に戻るだけだ。
いずれ復活することがあるかもしれないが、稀だ。
一体、どのくらいの年月がかかるか誰にも分からない。
さっさと街に戻るぞ」
ロジェの言葉に従い、誠一たちは、戻る準備を始めた。


帰りは、すっかりご機嫌の直ったヴェルが終始、
笑いを振りまいていた。

その反面、頬を膨らませて、仏頂面のシエンナであった。
「なによう、人の顔を覗き込んで!
まったく、アルのせいでもあるんだから!」

「いや、その頬を膨らませたシエンナも
随分と可愛いなっ思って。
頬に食べ物を溜めてるリスみたいで可愛い」

「ぐっ、褒めてくれてるのは分かるけど、
他のこうもっと言いようがないの。
本当にアルもヴェルも駄目ね」

ヴェルと同列にされ、納得のいかない誠一は、
少し大人の実力を見せることにした。
すすっとシエンナの隣に移動すると、
さりげなく肩に手を回した。
「称号の件は、申し訳ないと思う。
ごめん、何か僕にできることがあれば、
いつでも言って」
シエンナの耳元で囁いた。

誠一の熱い吐息がシエンナの耳元にかかった。

「はわわっーちょ、何をいきなり。
そっそう、あれれっあれをお願いしようかな。
はわわっー」
頬を真っ赤に染めて、
呂律の回らないシエンナだった。
ふっ、ちょろいと思いながら、
誠一はさりげなくシエンナから離れた。

シエンナの謎発言を聞き、ヴェルが振りむいて、
真っ赤な顔のシエンナを見た。
「おいおい、顔が真っ赤じゃねーか。
もしかして、酒でも飲んだのか?
酔っぱらった兄貴みたいに
何を言ってるか分からないぞ」

「うっうるさい!
あんたはもう、どうしてそう、間が悪いのかなぁ!」

「ちょっとーアル君。
純情なシエンナにあれはちょっとないんじゃないかな。
同性として、見過ごせないかな。
その気はあるの?」
キャロリーヌが誠一の隣に移動してきて、
厳しく追及してきた。
恐らく誠一の内心など、お見通しなのだろう。
それを見越しての厳しい糾弾であった。

言葉に詰まった誠一は、なるべくキャロリーヌと
視線を合わさないようにしながら、歩いた。

薄暗い中で互いに無言であった。

どうやら前衛の騒ぎも収まったようで、
洞窟内は足音が響く程度であった。

「不気味な静けさですね。
何というか迷宮であった時の方が
まだ、マシな気がします」

誠一の言葉にキャロリーヌは、
ため息をついて応じた。
「はあ、まあいいけど。
チーム内での恋沙汰は気を付けないと、破綻するわよ。
今は、リシェーヌがいないから、いいけどね。
アル君は、大人びているようで
そうじゃないから、気を付けなよ」

「そうそう、静けさね。
これが本来のありようなんでしょうね。
大自然が生み出す静けさや闇は、
時に人をいいようもない恐怖へ誘うわ」

誠一は同意を示す様に頷いた。

洞窟を抜けると、外は夜であった。

吸い込まれるような闇、光は天空の星々だけ、
そんな気持ちの良い環境も一度、道に迷えば、
恐怖を生み出す以外、何物でもなかった。

誠一は街の明かりが無性に恋しくなっていた。
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