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129.次の訓練1

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翌日、誠一たちは道中、
何事もなくテルトリアの街に到着した。

「さて、そろそろ、モリス商会の隊商が
王都に戻ると思うが、アルフレート君、
君はどうするつもりかい?」
ロジェは隊商の護衛として、スターリッジと
戻る予定であった。

「ここに留まって、幾つか迷宮探索に向かうつもりです。
本当はロジェさんやキャロリーヌさんに
同行して貰うと有難かったのですが」
誠一としては、学ぶべきことが
多いロジェとキャロリーヌと共に
探索に向かいたかったが、契約を反故にすることは
冒険者としての信用に関わるため、諦めた。

「おい、アル。俺もここに残るぞ。
それに付き合うわ。俺は片道だけの契約だしな。
なあ、アルいいだろ?」

「私も同行するわ。
知らぬ間に差を付けられるのも癪だし。
これに座学と魔術を教えるのはアルだけじゃ、大変でしょ」

ヴェルとシエンナは、誠一と一緒に
残ることを選択したようであった。
二人が残ることにかなりホッとした誠一だった。

「おまえら3人か!無茶しそうで不安だな。
かといって俺は残れないし。
お目付け役なしでは許可できない」

「何で兄貴が決めんだよ。俺らのことだろ!」

ごつん、鈍い音がヴェルの頭の上から、響いた。
その音を聞いた誠一もシエンナもロジェに
従うことにした。

「先輩冒険者の言うことはきちっと聞け。
このひよっこが!」

「では、こういたしましょう。
シエンナお嬢様が残るので、私も残ります。
ロジェさん、あなたに隊商を率いて貰います。
護衛は元々、雇うつもりでしたので、
よろしくお願いします」
それまで黙っていたスターリッジの提案であったが、
何故かキャロリーヌがすぐに賛同した。
「それ賛成―。じゃ、私も残ると言うことで、よろしくー」

「では、そういうことにいたしましょう」
スターリッジが最終的にまとめた。

誠一たち3人は事の成り行きについて行けずに只、
頷くだけであった。

二日後には、ロジェは王都に向けて出発した。
そして、残ったメンバーは、スターリッジを除き、
次の探索先の検討と座学、魔術の勉強を始めた。

ヴェルはシエンナにしごかれており、
キャロリーヌはギルドに顔を出していた。

誠一は3人に実家の書庫に向かうと伝えて、
屋敷に向かった。
この時ばかりは心配そうに誠一を見ながら
2人ともただ、頷くだけで誠一を送りだした。

 屋敷に到着すると、門番は誠一を
一瞥するだけで通した。
屋敷の中庭から、激しい剣撃の音が聞えて来た。
歩みを止めて、音のする方を見ると、
例の剣豪にラムデールが激しく撃ちかかっていた。
誠一と視線が合った瞬間、ラムデールの剣が
事もなげに弾き飛ばされた。

「これはこれは、客人ですな。
おもてなしをしなければ、
エスターライヒ家の恥となります。
ラムデール、さっさと、準備なさい」

「いやあの、アレは」
何かを言いかけたラムデールを剣豪が遮った。

「四の五、言わない。それより行動なさい。
長兄の帰宅を祝うのは当たり前でしょう」

剣豪の反論を許さぬ態度にラムデールは
ぶつくさと言いながら、屋敷へ向かった。
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