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365.交渉1
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客間に通された誠一たちは、既にそこで1時間程度が経過していた。
「まったく待たせる男って最悪よね。
アル、これってまあ、あれでしょ」
キャロリーヌの言わんとすることを誠一も理解していた。
誠一はこれも交渉術のうちの一つだろうと思ったが、
待たされる側は、気分の良いものではなかった。
ドアのノックもなしに突然、太めの男が客間に入ってきた。
「少し待たせたようだの。
その分、諸君が飲んだことも無い様な香しき茶を十分に楽しめただろう」
誠一たちの前のテーブルにはカップらしきものは何も置いてなかった。
「ジェイコブだ。ダンブル陛下より貴様との交渉を承っている」
氏や爵位をジェイコブは名乗らなかった。
誠一を見下しており、名乗るまでもない小物と思っているのだろう。
誠一は慌てて立ち上がり、挨拶をしようとすると、
ジェイコブが制した
「よいよい、礼儀を知らぬ無学浅慮の輩の無礼だ。
許す、そのまま、名乗れ」
のけぞるジェイコブにこのまま、一礼をして
名を名乗るとどうにも拝跪しているようにも
見えなくもなかった。
誠一がどう対応したものか苦慮していると、
隣に座るキャロリーヌが徐に立ち上がった。
「こちらは我らが主のエスターライヒ家が
長子アルフレート・フォン・エスターライヒ様でございます。
後ろに控えるのは、ロジェ・エンゲルス、
私はキャロリーヌ・エンゲルスと申します。
以後、お見知りおきを」
キャロリーヌは挨拶をすると、一礼した。
ジェイコブは彼女の大きく開く胸元に釘付けであった。
優雅な立ち振る舞の後にキャロリーヌは着席した。
ジェイコブは石像のように固まったまま、キャロリーヌの胸元から
視線が動かなかった。
ジェイコブの後に控える使用人が耳元で何かしら囁いていた。
我に返ったジェイコブは慌てて着席したが、
視線は相変わらずキャロリーヌの上から下を舐め回していた。
一向に話をしないジェイコブに誠一のほうから切り出した。
「ジェイコブ様、ダンブル陛下からのお話しとは
どのようなご用件なのでしょうか?」
キャロリーヌを眺めるのに忙しいジェイコブは、
取ってつけたように話始めた。
「おお、そうだそうだ。アルフレート殿には良い話になるだおう。
北関でのいざこざは聞き及んでいる。
我が陣営に与するなら、エスターライヒ家の家督と
領地を与えよう。
領地については奪還後となるだろうが、
爵位は活躍すれば、早々に陛下より下賜されると
思っていれば良いだろう。どうだ!」
一気呵成に捲し立てた後は、また、キャロリーヌを眺めるのに
夢中であった。
誠一は唖然とした。
ダンブル派には碌な人材がいないのか、
それとも自分を軽く見ているのか、そうとしか思えなかった。
少なくともこの交渉に限って言えば、ダンブルの将来に
明るいものを見出すことは難しかった。
このような男が交渉の場に出して、将来を託す気になる者たちが
いるのか甚だ疑問であった。
特に会話もなく、時間だけが経過していた。
ジェイコブは、それを気にした風もなくキャロリーヌの
短いスカートから覗く太腿に気をとられていた。
「まったく待たせる男って最悪よね。
アル、これってまあ、あれでしょ」
キャロリーヌの言わんとすることを誠一も理解していた。
誠一はこれも交渉術のうちの一つだろうと思ったが、
待たされる側は、気分の良いものではなかった。
ドアのノックもなしに突然、太めの男が客間に入ってきた。
「少し待たせたようだの。
その分、諸君が飲んだことも無い様な香しき茶を十分に楽しめただろう」
誠一たちの前のテーブルにはカップらしきものは何も置いてなかった。
「ジェイコブだ。ダンブル陛下より貴様との交渉を承っている」
氏や爵位をジェイコブは名乗らなかった。
誠一を見下しており、名乗るまでもない小物と思っているのだろう。
誠一は慌てて立ち上がり、挨拶をしようとすると、
ジェイコブが制した
「よいよい、礼儀を知らぬ無学浅慮の輩の無礼だ。
許す、そのまま、名乗れ」
のけぞるジェイコブにこのまま、一礼をして
名を名乗るとどうにも拝跪しているようにも
見えなくもなかった。
誠一がどう対応したものか苦慮していると、
隣に座るキャロリーヌが徐に立ち上がった。
「こちらは我らが主のエスターライヒ家が
長子アルフレート・フォン・エスターライヒ様でございます。
後ろに控えるのは、ロジェ・エンゲルス、
私はキャロリーヌ・エンゲルスと申します。
以後、お見知りおきを」
キャロリーヌは挨拶をすると、一礼した。
ジェイコブは彼女の大きく開く胸元に釘付けであった。
優雅な立ち振る舞の後にキャロリーヌは着席した。
ジェイコブは石像のように固まったまま、キャロリーヌの胸元から
視線が動かなかった。
ジェイコブの後に控える使用人が耳元で何かしら囁いていた。
我に返ったジェイコブは慌てて着席したが、
視線は相変わらずキャロリーヌの上から下を舐め回していた。
一向に話をしないジェイコブに誠一のほうから切り出した。
「ジェイコブ様、ダンブル陛下からのお話しとは
どのようなご用件なのでしょうか?」
キャロリーヌを眺めるのに忙しいジェイコブは、
取ってつけたように話始めた。
「おお、そうだそうだ。アルフレート殿には良い話になるだおう。
北関でのいざこざは聞き及んでいる。
我が陣営に与するなら、エスターライヒ家の家督と
領地を与えよう。
領地については奪還後となるだろうが、
爵位は活躍すれば、早々に陛下より下賜されると
思っていれば良いだろう。どうだ!」
一気呵成に捲し立てた後は、また、キャロリーヌを眺めるのに
夢中であった。
誠一は唖然とした。
ダンブル派には碌な人材がいないのか、
それとも自分を軽く見ているのか、そうとしか思えなかった。
少なくともこの交渉に限って言えば、ダンブルの将来に
明るいものを見出すことは難しかった。
このような男が交渉の場に出して、将来を託す気になる者たちが
いるのか甚だ疑問であった。
特に会話もなく、時間だけが経過していた。
ジェイコブは、それを気にした風もなくキャロリーヌの
短いスカートから覗く太腿に気をとられていた。
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