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367.交渉3

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庭園に出るとジェイコブは木剣を受け取り、
キャロリーヌの前で奇声を発しながらぶんぶんと振り回した。
誠一から見れば、その動作は緩慢であった。
しかし、ジェイコブの取り巻き達は、拍手喝采の嵐であった。

「そうだな。まずは、配下の者たちで手合わせを行おうではないか!
勇将の下に弱卒無しだ。我が精鋭の力を見せておこう」
ジェイコブの言葉に呼応して、戦士風の男が前に出てきた。

「ロジェさん、すみませんが、よろしくお願いいたします」
誠一はロジェに頼むしかなかった。
「仕方あるまい。舐められるのは、得策でないしな。
しかし部下にはそれなりの者たちを揃えているようだな。
油断せずに手合わせに臨むとするか」
ロジェは木剣を受け取り、構えた。開始の合図が
ジェイコブより発せられると、激しく木剣の打ち合う音が響いた。

「貴様、中々やるな」
相手の言葉にロジェが応じた。

「おまえもな」

しばらく拮抗状態が続いていた。
誠一は、周囲に魔術を阻害するような障壁がないことを
確認すると、手合わせを見るふりをしながら、
ジェイコブを鑑定眼で観察した。
全てを容易に閲覧することができてきまった。
レア度は、SRであり、レベルもそれなりに高く、
称号も多く獲得していた。

クラスSR、残虐・拷問行使・舞踊・礼儀作法・剣士・鈍足・精力絶倫・騎乗・貴族の矜持・享楽主義


先天的に持っていた称号かそれとも後天的に得たものか分からないが、
碌でもない称号ばかりであった。
唯一、剣士の称号が役に立ちそうであった。

ロジェの手合わせはお互いに引き分けとして終了した。
「アルフレート君、分かっていると思うが、上手くやってくれ。
相手に花を持たせつつ、舐められないように立ち回ってくれ」

ロジェの言わんとすることは、理解できたが、
言うは易く行うは難しであった。

「アルフレート、木剣を手に取り前に出なさい。
剣聖の称号を授かったわしが稽古をつけてやる」
ジェイコブの口上を聞いて、誠一は、首を傾げてしまった。
剣聖?確か剣士だったはずと思い、ジェイコブの取り巻きを観察すると、
やんややんやの大騒ぎであった。

誠一は事情を察した。

ジェイコブには自分の持つ称号が分かっているはずだった。
どうやら鑑定士に取り巻きが言い含めて、
剣士の称号を剣聖と上手く説明させたのだろう。
「アルフレート、君が鑑定眼を持っているなら、
我の称号を見るがよい。
剣士の裏に隠れた剣聖の称号が見えるであろう」

手加減なしの大振りの一撃が誠一を襲った。
誠一は難なくその一撃を受けた。

「むっ中々、やるな!むうんむうん!」
続けて、木剣を振り回し、誠一に襲うがかすりもしなかった。
ジェイコブの表情が開始1分も経たずに険しい様相となった。
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