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366.交渉2
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「アルフレート様、少し補足させて頂けますか?」
ジェイコブの後方に控える使用人であった。
ジェイコブは、一瞬、むすっとした表情をしたが、直ぐにそれを消した。
そして、発言を促した。
「アルフレート様、先ほどのジェイコブ様のお話は
最低限の褒賞となります。
ご活躍次第では、それ以上の領地や恩賞を
得ることになりましょうぞ。
それに魔術院での評判は聞き及んでいます。
皇帝陛下は、将来、アルフレート様に国の柱石になることを
望まれています。
また、交渉の全権を任せられているジェルミラ子爵家の当主であられる
ジェイコブ様は、皇帝陛下のご親族でございます」
誠一は、ダンブル一派にもそこそこに話の分かる参謀が
いることは彼の説明から伺い知ることは出来た。
一門に連なる者を中立地地帯とは言え、迎えに出した。
ダンブル派の人物の能力は別としても彼等の本気度が窺えた。
「ご説明ありがとうございます。
ダンブル陛下のご厚遇、平に感謝いたします」
誠一は大袈裟に感謝を示した。
「おう。そうだ、感謝しろ。
して、グレートウォールへの入城だが、兵を揃えて、
堂々たる一軍の将として入城して貰う。
どうもそれが良いらしいと参謀殿が言っていた。
兵は金で適当に雇う。金は心配するな。俺様が準備してやる」
それは、自分がダンブル派に与したことを広く城の内外に
伝聞させるためであった。
誠一はダンブル派の参謀の能力を警戒した。
恐らくロジェとキャロリーヌもその表情から同じであることを
伺い知った。
「私の様な者への過度なご厚意、ありがとうございます。
しかしながら、何分、若輩者故に兵を率いたことがありません。
この件、少し考えさせて頂けないでしょうか?」
誠一は目一杯、へりくだってジェイコブに伝えると、
始めてジェイコブが誠一の方をまじまじと見つめた。
「そっそうなのか。精強で知られるエスターライヒ家の長子が
魔術師を目指すとかおかしなものだと思っていたが、
そう言う事情であったか。よかろう。
あまり待てないが、少し時間をくれてやろう」
誠一が更に大仰に謝辞を述べると、ジェイコブは
満更でもないような表情で鷹揚に頷いた。
「そうだ、そろそろ食事の時間だな。
聞くところによれば、従者の二人も名の知れた冒険者であったな。
昼食の前に少し揉んでやろう。
アルフレート、我が直々に少し鍛えてやろう。
何、心配するな、怪我をしない程度に手は抜く。
おい、木剣を用意しろ」
そう言うとジェイコブは立ち上がり、
何故かキャロリーヌをエスコートするように
手を彼女に差し伸べた。
キャロリーヌは僅かだかピクリとひくついたが、
にこりと笑って、左手を彼に委ねた。
「むふう、キャロリーヌ殿。
そうだそうだ、心配せずともアルフレートに
怪我をさせることはありません。
貴婦人を怖がらせるようなことは紳士としていたしませぬ」
その得意げな物言いに頷くのが精一杯のキャロリーヌだった。
ジェイコブの後方に控える使用人であった。
ジェイコブは、一瞬、むすっとした表情をしたが、直ぐにそれを消した。
そして、発言を促した。
「アルフレート様、先ほどのジェイコブ様のお話は
最低限の褒賞となります。
ご活躍次第では、それ以上の領地や恩賞を
得ることになりましょうぞ。
それに魔術院での評判は聞き及んでいます。
皇帝陛下は、将来、アルフレート様に国の柱石になることを
望まれています。
また、交渉の全権を任せられているジェルミラ子爵家の当主であられる
ジェイコブ様は、皇帝陛下のご親族でございます」
誠一は、ダンブル一派にもそこそこに話の分かる参謀が
いることは彼の説明から伺い知ることは出来た。
一門に連なる者を中立地地帯とは言え、迎えに出した。
ダンブル派の人物の能力は別としても彼等の本気度が窺えた。
「ご説明ありがとうございます。
ダンブル陛下のご厚遇、平に感謝いたします」
誠一は大袈裟に感謝を示した。
「おう。そうだ、感謝しろ。
して、グレートウォールへの入城だが、兵を揃えて、
堂々たる一軍の将として入城して貰う。
どうもそれが良いらしいと参謀殿が言っていた。
兵は金で適当に雇う。金は心配するな。俺様が準備してやる」
それは、自分がダンブル派に与したことを広く城の内外に
伝聞させるためであった。
誠一はダンブル派の参謀の能力を警戒した。
恐らくロジェとキャロリーヌもその表情から同じであることを
伺い知った。
「私の様な者への過度なご厚意、ありがとうございます。
しかしながら、何分、若輩者故に兵を率いたことがありません。
この件、少し考えさせて頂けないでしょうか?」
誠一は目一杯、へりくだってジェイコブに伝えると、
始めてジェイコブが誠一の方をまじまじと見つめた。
「そっそうなのか。精強で知られるエスターライヒ家の長子が
魔術師を目指すとかおかしなものだと思っていたが、
そう言う事情であったか。よかろう。
あまり待てないが、少し時間をくれてやろう」
誠一が更に大仰に謝辞を述べると、ジェイコブは
満更でもないような表情で鷹揚に頷いた。
「そうだ、そろそろ食事の時間だな。
聞くところによれば、従者の二人も名の知れた冒険者であったな。
昼食の前に少し揉んでやろう。
アルフレート、我が直々に少し鍛えてやろう。
何、心配するな、怪我をしない程度に手は抜く。
おい、木剣を用意しろ」
そう言うとジェイコブは立ち上がり、
何故かキャロリーヌをエスコートするように
手を彼女に差し伸べた。
キャロリーヌは僅かだかピクリとひくついたが、
にこりと笑って、左手を彼に委ねた。
「むふう、キャロリーヌ殿。
そうだそうだ、心配せずともアルフレートに
怪我をさせることはありません。
貴婦人を怖がらせるようなことは紳士としていたしませぬ」
その得意げな物言いに頷くのが精一杯のキャロリーヌだった。
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