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396.不穏1

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誠一はプレーヤーに語り続けていた。
四六時中、ログインするプレーヤーでないことは承知していた。
すれ違ってしまえば、情報を上手くプレーヤーから引き出せない恐れがあった。

『もし、時間に余裕があれば、アクセスしてきてください』
何十回目かの語り掛けでついにプレーヤーが返信をしてきた。
真っ暗な闇が覆い、物音一つしない深夜であった。
誠一は心に念じて、語り掛けていたが、それが自然、声となっていた。

大学での調査の件も気になっていたが、
今は、プレーヤーイベントの件を優先した。

『もしかして、そちらの掲示板でプレーヤーによる
イベント開催の告知がありませんでしたか?』
プレーヤーからの返信がなく、時間だけが経過した。
誠一は何らかの答えを促すために続けた。

『理由は定かではありませんが、複数のプレーヤーの
キャラクターから接触がありました』

『どんな小さいことでもいいんです。
何か情報があれば、教えてください』

プレーヤーが沈黙してから時間にして数十分が経過していた。

『Title:ヴェルトール王国 アルフレート・フォン・エスターライヒ狩猟祭開催中』

『これが掲示板に掲載されています。
正直に言いますと、知人が突然、これを立ち上げました。ごめんなさい』

プレーヤーの答えは誠一の予想していたことを
裏付けした答えであった。
ダンブル派、その他の勢力からの監視でないことが分かり、
気分がすっきりした。
無論、NPCでない以上、強力なキャラクターが
自分に襲ってくるだろう。取り敢えず正直に話してくれたことへ
お礼を伝えることにした。

『そうですか、教えてくれてありがとうございます。
これで理由も分かりましたし、少しすっきりしました。
知人の方に中止をして貰うことはできませんか?』

『本当にごめんなさい。
ちょっと、色々とあって今、その人と話せないんですよ』

誠一は自分がプレーヤー同士のトラブルに巻き込まれたなと想像し、
これ以上、プレーヤーを刺激しないように話題を変えようと思った。
何かを言おうとした時、突然、アイテムが天井の暗闇から落ちて来た。

「これは」

誠一は、受け取った足袋を見て、驚きの声をあげた。

上位魔人討伐報酬:瞬足の足袋

ファウスティノの持つ天体球戯の杖や剣豪の持つ刀ほどではないが、
相当珍しいアイテムであった。確か縮地が何度か使えるようになるはず。
それとプレーヤーからすれば、あまり実感のない機能であるが、
地味に足の疲れを軽減する効果はありがたかった。

『ごめんなさい。これはお詫びと言うのも変ですが、
私のボックスに入りっぱなしになっていたアイテムです。
使ってください。それと貯まっている回復薬等々を送ります』

誠一の驚きが収まる前にばらばらと色々な無課金アイテムが
落ちて来た。
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