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530.大会戦2

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 誠一の振り下ろしたメイスをその敵兵は短槍の柄で受けた。
柄はメイスにより破壊されて、メイスはそのまま肩口を叩き潰した。

「ぎゃあああ、痛てえよ」
その兵は地面に倒れて、転がりながら叫び声をあげた。
誠一は敵兵に止め刺すべく、近づきメイスを振り上げた。

「みっ見逃してくれよ。村には帰りを待つ妻と
3歳の娘がいるんだ。助けてくれ」
純朴そうな顔を痛みに歪めながら、必死にその兵は懇願した。

誠一は、敵兵と目が合った。
振り上げたメイスが振り下ろされることはなかった。
誠一は、敵兵に止めを刺すことを躊躇した。

「ひゃっはー。糞ボケが死ね」
折れた槍を左手で掴み、誠一の脇腹を殴りつけた。
死角になる横合いから別の兵が誠一の頭部を戦棍で殴りつけようとした。
何とか防御したが、殴られた勢いは吸収できずに誠一は地面を転がった。

「こいつは俺の得物だ。手を出すな」

「右腕が効かないだろが、そこに突っ伏してろ。俺が殺す」

誠一に止めを刺すべく二人の兵が俊敏に近づいた。
慌てて立ち上がり、防御姿勢を取る誠一だった。

「バカが」

「馬鹿が」

敵兵から放たれたバカという言葉に混じって、
聞き覚えのある声で馬鹿と言う言葉が聞えた。

「荒ぶる炎よ、全てを燃やし尽くし、世界を再生しろぉーフレイムチャージ」

そして誠一にとって馴染のある必殺の一撃の放たれる声が聞えた。
不死鳥を模った炎が誠一の前に立つ二人の敵兵を薙ぎ倒した。

「アル、しょうもない詐術に引っ掛かるなんて、らしくないぞ」

「そうです。ヴェルに比べて、ださださなのです」

男女二人からの強烈なダメ出しを受けた誠一だったが、
その表情は戦場に身を置いているにも関わらず、頬が緩んでいた。

「遅い!」

「ふん、よく言うわ。
おおおっ、我が友、アルフレート・フォン・エスターライヒが
背中を預ける漢、ヴェルナー・エンゲルス。ここに推参」

ヴェルが期待一杯の目をアミラに向けた。

「ええっ。えっとその竜公国が将、カスペール・グロウの一人娘にして、
ヴェルナー・エンゲルスの将来の妻カスペール・アミラ。ここに推参」

ヴェルがアミラと言い合いを始めてしまった。
誠一は苦笑した。気を引き締めるために大音声で誠一は叫んだ。

「二人ともおかえり。
うおおおっ!アルフレート・フォン・エスターライヒが
主宰するクランがこの戦、戦勝に導く!いくぞ」

3者3様の大音声が戦場にこだますると、
敵軍の後方へ巨大な腕が空より振り下ろされた。
味方は歓声を上げ、押され気味の戦線を盛り返した。
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