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531.大会戦3

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女王バリーシャは、本陣で指揮を執っていた。
近頃、王を僭称したジェイコブ・ジェルミラが冒険者を
中心とした傭兵隊を相手に当初、優位に進めていたが、
傭兵隊が押し返していた。

 あの無能者がそれなりに戦線を維持しているところを見ると、
優秀なブレーンがいるかダンブル派からのテコ入れが
あったと見るべきだろうと判断した。
バリーシャは数の優位をもって押し切るつもりであったが、
各所、戦況は膠着状態に陥っていた。

「なかなか理想通りにはいかぬな。
反乱軍の前線には既に一線級の面々が顔をだしているのだな」

宮廷魔術師第一席のジルベルトール・カルザティが
バリーシャの呟きに応じた。
「それ故に反乱軍は戦線を何とか維持しているのでしょう。
特にナサレノ、バルフォード、レドリアンの指揮する軍は
精強で我が軍は推され気味です。
ジェイコブの方は時間が経てば、その内崩れるので
傭兵部隊に任せておいて問題はございません。うー本読みたい」
フード全体を揺らしながら、フードの奥から
ぼそぼそと声が発せられた。
軍に帯同して長らく本を読んでいないために
禁断症状を抑えるのに一杯一杯のようであった。

「レドリアンの奴め。奴は我自ら当たるべきか」
バリーシャの呟きにアーロンが反応した。
「旧友の誼で私が向かいましょうか」

「いや、エスターライヒ家は勝敗の帰趨で活躍して貰う」
バリーシャの言葉に食い下がることなく
さっと引き下がるアーロンであった。

「しかし、4席、5席では荷が重いでしょうね。
ここは仕方ありません。私が向かいましょう」
やれやれと言う感じでカルザティが腰を上げた。

戦場の最前線でナサレノ率いるダンブル皇帝軍は、
火が吹き上がるような勢いでヴェルトール王国軍の
本陣へ向けて攻め立てていた。
無論、ナサレノが先陣をきって王国軍の兵をなぎ倒していた。
その勢いがダンブルの軍に推進力を与えていた。

ナサレノが倒した名のある貴族、将軍は数知れずであった。
王国軍の十重二十重に構らえた陣は薄皮を剥くように容易に撃破された。

「何とも手応えのない戦だ」
真紅の鎧に身を包み、真紅の大剣を振るう戦士ナサレノは
呼吸を整えるとぼやいた。

「やれやれどうもナージャ殿は育成には
向いていないようでござったか。
碌でもない男に育ったものよのう」

その声にナサレノは反応した。

「その声はオニヤか。くくっ、貴様に会えるとはこれは僥倖。
ナージャの前で恥をかかせたことを後悔するんだな」

剣豪は呆れたようにぼやいた。
「貴公がまだ小さい子供の頃のことでござろう。
なんとも執念深い漢よ。
それだからごろつきのようなことをしているのだろうな」

それ以上、2人は言葉を交わすことはなかった。
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