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563.閑話 とある料理店での情景1

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千晴は清涼との約束の時間まで部屋の掃除、洗濯に費やした。
どうせ合流して向かう先はいつもの居酒屋。
最低限の化粧と服装で十分だと思い、それらに左程の時間をかけずに家を出た。

「少し早かったかな」
千晴は待ち合わせ場所で所在無げに立っていた。
流石に待ち合わせまでの時間を惜しんで
『ヴェルトール王国』をプレイするほどはまってはいなかった。

時間を確認すると待ち合わせの時刻まであと僅かであった。
駅の方へ目を向けると、千晴はぎょっとしてしまった。

清涼が歩いていた。何故か分からないが、それなりにしっかりとした
カジュアルスーツで身を固めていた。
いやいやいや、居酒屋で軽く飲むだけでしょと
心の中で清涼の服装につっこみをいれる千晴であった。
既に日も落ち暗くなり、街の外套や店のネオンが点灯し始めていた。
それらの点き始めの光はカメラのフラッシュのようで
眩しさのあまり千晴は右手で目を覆った。
「こんなに眩しかったかな」
手で明かりを遮りながら、結構な大きさの声で呟いた。

「いや、そう言われても。もしかして僕のことを言っているのかな」

「ふぁっ」
手を下ろすとそこには清涼が立っていた。

誤解は早めに解いておいた方が良いと千晴は思い、即座に言った。
「ふぇ、いやいや違いますから、街の明かりのことですから」

してやったりという顔で清涼は頷いていた。
「千晴、落ち着いて。分かっているからさ」

「ふうう、こんばんは清涼さん」

「予約の時間もあるし、そろそろ行こうか」

んんん、どういうことだろう。
普段の行きつけの居酒屋ならば予約なしでも
全く問題ないはずであった。
彼の隣を歩きながら,敢えて予約と言った清涼の言葉に
千晴は嫌な予感がした。

「あの清涼さん。いつもの居酒屋はそこの通りを左ですけど」

「あっああそうだね。でもまあ、今日は別のところに行こう」
若干、きょろきょろとしならが歩く清涼であった。

千晴は清涼の服装と自分の服装を比較して、
願わくばお洒落な料理店に清涼がチョイスしていませんようにと
祈るばかりであった。

「ここ、今日はここさ。驚いただろう、千晴」

千晴はお店を前にして、固まってしまった。
サプライズの仕方が間違っている。
この服装で入るかと思うと、清涼に対するあきれ果てた気持ちと
恥ずかしさが相まって、立ち尽くしてしまった。
「せっ清涼さん、こういったお店に行くときは
前もって伝えて頂かないと。
あのその女性にも準備がありますので」

「あっ気にしないでも大丈夫だよ。個室を予約しているからさ。
じゃないと流石に僕もパッドをテーブルに広げられないからさ。
それにここは家族で懇意にしているお店だから
そう緊張しなくても大丈夫」

いいとこのお坊ちゃんだと思っていたが、
自分の想像以上の家庭の息子なのかもしれないと千晴は思った。
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