転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

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850. 万能の霊薬3

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『エリクサーだと回復するんでしょ。一個、持っているけど』
誠一の心に神の啓示が下った。誠一はそれどころではなかった。

『聞こえてないみたいね。仕方ないか。
まあ、約束は守って貰うけど、報酬を前倒しで渡すから』

誠一に向かって虹の7色が天より降り収束した。
それは奇跡が起きたことを知らしめる輝きだった。

誠一の右手に一つの小瓶が握られていた。
小瓶の中の液体は常に7色に変化し、
一つの色に落ち着くことがなかった。

 右手で握っているこの小瓶の中身が
万能の霊薬エリクサーであることを誠一は直感した。

その瞬間、誠一の感情は爆発した。

これでリシェーヌに会える。

これ以外のことは、全て誠一の心から消え去った。

誠一は立ち上がり天を仰いだ。

瞳からは涙が止め止めもなく流れた。

そして、心の底から千晴に礼を伝えた。

こんこん、誰かに胸を叩かれ、誠一は現の世に引き戻された。
「アル、千晴様か?何て言っていた」
それはヴェルからの誠一への問いかだった。

「えっいや、エリクサーを下賜されたよ」
現実に引き戻された誠一は、剣豪の方へ目を向けた。
右手で小瓶を握りしめた。
エリクサーを使えば、剣豪の身体の毒を浄化し、
致命的な腹部の傷を癒し、失われた血を補填するだろう。

しかし、そうなれば、万能の霊薬は失われ、
リシェーヌに会うことは出来なくなる。

誠一の感情は揺さぶられた。

「それでどうするんだ。
アル、千晴様から託されたその霊薬をどう使うんだ」

「ヴェル、落ち着いて。
アル、先生は霊薬でしか助からない。どうするの」
ヴェルとシエンナが誠一を見つめた。

「えっええ、いやその」
誠一の言葉が淀んだ。

たった今、誠一は剣豪に命を助けられた。
それだけでなくこの世界で何とか生き抜くために
剣豪から鍛えられた。

剣豪には感謝してもしきれないほどの大恩のある誠一だった。

『くそくそっ』
誠一は心の中で呻いた。
思っては駄目だと心で思いながらも心に湧き上がる
感情を抑えられなかった。
『せめて、剣豪が息を引き取った後で
千晴がエリクサーを渡せば、これほど悩まずに済んだものを』

誠一は千晴が懊悩する自分を見てほくそ笑んでいる姿を想像した。
ここで鬼谷十四郎を犠牲にして、リシェーヌに再会しても
彼女はそれを良しとせず、他者を犠牲にした自分の存在を許せずに
自分の前から姿を消すことは容易に想像できた。

誠一自身もその再会を心から喜べないような気がした。

「アルフレート様、いいのです。あの娘に使いなさい。
ごふぅ、某は少し長く生き過ぎました。
ごぼっ、辞世の句は適当に考えてください」

ふと、誠一は剣豪の前で晒した数々の汚点を
思い出して、くすりと笑った。
鬼谷十四郎が亡くなれば、剣豪の前で晒した汚点を
知る者はこの世から誰一人いなくなる。
そんなことが誠一の脳裏に過った。
それはこの世界で生きていくには何故か少し寂しく思えた。
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