BL短編集②

田舎

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弟×兄のオメガバ

弟×兄のオメガバ 前半

代々αを排出し、世襲制により子(α)を次期村長にすることで長く繁栄してきた一族。
その家でβとしてうまれてきた兄と、実弟(α)のBL。

・弟α→兄βの近親相姦です。
地雷にご注意ください

α→竜胆(リンドウ)
Ω→槐(エンジュ)

===================




「おにいちゃん……?」
「……っ」

代々αを排出させ、後に世襲制でαの子を村長にすることで長く繁栄してきた一族。その家でβとしてうまれてきた槐と6つ離れた弟の竜胆。
今日は本家から迎えがやってきた。竜胆を引き取るために。


「なんでお別れなんて言うの!?いやだ、一緒がいい!お兄ちゃんと離れたくない!」
「…ごめんな。俺はβだから本家には入れないんだ。だけど竜胆はαだから……これからは美味しいもの食べられるし綺麗な着物を着せてもらえるぞ、玩具だって沢山」
「そんなのいらないっ、欲しくない!!ぼく、お兄ちゃんと一緒がいい!」

まだ第二性別も家の仕来りも理解できない弟は泣いて嫌がったが仕方がない。この家にうまれてきた以上、抗えない運命なのだ。
βと判明して以降も冷遇され続けてきた槐にはそれが痛いほど分かっていた。

竜胆は、とても俺の大事な弟だ。
だけどお前は、兄でもβなんかに未練などあってはならない。お前が、将来立派な村長になるためにも…。


「俺は、お前を弟だと思ったことはない」

しがみつく弟の手を払った瞬間はズキッと胸が痛んだ。
けれど心を鬼にしなくては。

「―――――っ、にい、ちゃ」
「いっつも泣き虫でワガママばっかの竜胆なんて、俺だっていらない!」

弟を置いたまま走って一人家の中に入ると、ビシャっと乱暴に戸を閉めた。
そして間もなく聞こえる、わぁぁぁん!!と叫ぶ泣き声からぎゅうっと耳を塞いだ。


(ごめんな…)

何度も心の中で傷つけたことを謝った。
親にも誰にも縋れない幼い弟が、唯一信頼できる存在だった…、俺だって竜胆がいてくれたおかげで寂しくなかったのに。

(でも、これからは幸せになれ、竜胆)



あれからいくつも季節が巡った。
本来、αがうまれるまで何人もの弟か妹ができるはずのために建てられた家には俺以外だれもいない。竜胆が早々にαと分かったおかげだ。
しかしずっとこの家で暮らせるわけではない。
今年で槐は15になる。来年になれば村から追い出されるだろうと覚悟していた。
女ならば他所の村に嫁がされ、男ならば出稼ぎに出されるのだ。骨肉の争いなど起きぬよう、これも家の仕来りだった。

しかし父親からは何の連絡もこず、17を過ぎても槐は村の畑を耕すか田んぼと家畜の世話をする毎日だった。
そのうち本家と村人達の生活用品等を売りに来る行商人に、竜胆が"勉強も決められた事にも逆らわず従うので、お兄ちゃんをあの家に置いて欲しい"と、両親に頼んでいた事を知った。
聞いて槐はボロボロと泣いた。



また季節は過ぎた。
その間も二人は父親に禁じられ会うことは許されなかった。祖父母に続き伏せっていた母親が亡くなった葬式にすら、βである槐は顔を出すことは許されなかった。
けれど長く顔を会わせることもなかったせいか、とくに悲しい感情はなかった。


(俺、なんでこの村にいるんだろ…)

槐は23歳、すっかり大人になっていた。
槐は父親から竜胆に会う事を禁じられた他にも、許可なく村外へ行くこと、嫁取りも禁じられていた。

村にいても馴染めず、友達もいない。
楽しい事も自由を感じることもなかった。
ならいっそ村の外に出た方が幸せなんじゃないか…?と思うようになっていた。


「あの、行商人さん!お願いがあります!」

幼い頃は野犬や狼、熊が怖くて森を抜けるのが怖かったが、働くようになった今は十分でなくとも蓄えはあった。
この金で商人の荷台に乗せてもらえないだろうか?と頼んだのだ。
すると金を見た行商人は、「隣村までなら」と承諾してくれたのだった。
嬉しくて心が弾んだ。


父親は何も言わないだろう。そもそも村から追い出したいと願っていた存在が勝手に消えてくれるのだ。
弟とはもう何年も会えてはいない。不出来な兄がいなくなれば、つらい決まりに従う理由もなくなる。

(さようなら、竜胆…)

今まで迷惑かけてごめん、と沢山のことを謝って感謝した置き手紙。
いつ気付いてくれるかは分からないが。


こうして、弟のいる村から旅立った槐
 
  ーーーーーーだったのだが。










「何勝手な真似をしてるの?兄さん」
「……、ッ、え…」

気絶していたのか…?
目が覚めたのは冷たい床の上。閉め切られた部屋は真っ暗で、行灯の明かりだけが仄暗く部屋を照らしている。

「り、りんどう…、なのか?」
「そうだよ。久しぶりだね、兄さん」

そこには大きく成長し、自分よりもずっと背の高くなった弟の姿があった。
しかし兄さんと呼ばれても弟の瞳に明るさはなく、冷たく自分は顔は冷酷な父親を彷彿させた。
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