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「ごはんを食べるくらい、ちゃんとしてよ。それも人並みにできないなんてことになったら、朔也、もう戻ってこられなくなるよ? お姉ちゃん、そんなの嫌だからね。なにがなんでも食べてもらうから」
敗因は、余計な一言を言ってしまったこと。
人並みにできないと、もう戻ってこられない――。
コントローラーを床に叩きつけた。鈍い衝突音が鳴り、いくつかの軽量のごみが宙に躍った。輝夜は肩を竦め身を竦め、見開いた瞳で弟を見据える。憤怒に滾る双眸が視線を撥ね返す。無意識に強く噛み合わされた奥歯が軋る。
「……お前が」
口にしかけていた言葉が止まる。二秒弱の間を挟んで継がれる。
「お前が邪魔をするから、いつまで経っても塔に上れないじゃないか!」
今度は拳を床に叩きつけた。叫ぶ朔也の口から唾が飛ぶ。
「出て行けよ、邪魔者! 足手まとい! お前なんか――死んでしまえ!」
瞬間、容器の底が抜けて中の液体が一気に流出するように、輝夜の顔から一切の表情が消え失せた。
感情的に言葉を吐き散らした一秒前の過去も忘れて、朔也は息を呑んだ。原因は、発言のおぞましさを自覚したからなのか、姉が見せた表情の変化なのか、自分でも分からなかった。
輝夜は回れ右をし、弟の視野からフレームアウトした。階段をゆっくりと下りる足音が遠ざかっていく。追いかけたい気持ちはあったが、朔也の両足は鋲でとめられたように動かない。
数十秒にわたって立ち尽くしたのち、彼は散乱するごみを避けながらドアのところまで行き、閉めた。昼食のトレイは廊下に置いたままにした。食事をする気分ではなかったし、空腹でもなかった。
ゲームの続きを始めたが、まったく身が入らない。
なんでこんなに静かなのだろう、と思う。ゲーム音はうるさいくらいなのに、それ以上に外界の静寂が強烈な存在感を放っている。静けさの中に身を置く輝夜のことを否応にも意識してしまう。姉は物理的にもそうだが、それ以上に精神的に孤立し、追い詰められている気がしてならない。
下に下りてみようか、と思い始める。
料理は冷めていて食べる気がしないから、新しく作ってもらうことにした。言い分としてはそんなところだろうか。あるいは、正直に「謝りに来た」と言ってもいい。集中しきれないまま時間を消費するくらいなら、いつも通りを崩す方が心理的に楽だ。
敗因は、余計な一言を言ってしまったこと。
人並みにできないと、もう戻ってこられない――。
コントローラーを床に叩きつけた。鈍い衝突音が鳴り、いくつかの軽量のごみが宙に躍った。輝夜は肩を竦め身を竦め、見開いた瞳で弟を見据える。憤怒に滾る双眸が視線を撥ね返す。無意識に強く噛み合わされた奥歯が軋る。
「……お前が」
口にしかけていた言葉が止まる。二秒弱の間を挟んで継がれる。
「お前が邪魔をするから、いつまで経っても塔に上れないじゃないか!」
今度は拳を床に叩きつけた。叫ぶ朔也の口から唾が飛ぶ。
「出て行けよ、邪魔者! 足手まとい! お前なんか――死んでしまえ!」
瞬間、容器の底が抜けて中の液体が一気に流出するように、輝夜の顔から一切の表情が消え失せた。
感情的に言葉を吐き散らした一秒前の過去も忘れて、朔也は息を呑んだ。原因は、発言のおぞましさを自覚したからなのか、姉が見せた表情の変化なのか、自分でも分からなかった。
輝夜は回れ右をし、弟の視野からフレームアウトした。階段をゆっくりと下りる足音が遠ざかっていく。追いかけたい気持ちはあったが、朔也の両足は鋲でとめられたように動かない。
数十秒にわたって立ち尽くしたのち、彼は散乱するごみを避けながらドアのところまで行き、閉めた。昼食のトレイは廊下に置いたままにした。食事をする気分ではなかったし、空腹でもなかった。
ゲームの続きを始めたが、まったく身が入らない。
なんでこんなに静かなのだろう、と思う。ゲーム音はうるさいくらいなのに、それ以上に外界の静寂が強烈な存在感を放っている。静けさの中に身を置く輝夜のことを否応にも意識してしまう。姉は物理的にもそうだが、それ以上に精神的に孤立し、追い詰められている気がしてならない。
下に下りてみようか、と思い始める。
料理は冷めていて食べる気がしないから、新しく作ってもらうことにした。言い分としてはそんなところだろうか。あるいは、正直に「謝りに来た」と言ってもいい。集中しきれないまま時間を消費するくらいなら、いつも通りを崩す方が心理的に楽だ。
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