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「でも、詳しくないとか言っておいて、びっくりするくらいセンスがいい子とか普通にいるからね。まりりんがどのくらいおしゃれかを知りたいから、当日は一番かわいく見える服を着てきてよ。ファッションチェックしてあげる」
「着飾ってこいという意味? それは、なんていうか……」
「なに怖気づいてるの? お出かけするときにせいいっぱいおしゃれするって、普通でしょ。別に、どんな格好してきても笑わないよ。絶対に笑わない。だから日曜日は絶対に気合い入れてよね」
「笑わない? ……ほんとに? がんばりたいとは思うけど、所詮はわたしのセンスだから、玲奈が見たらどう思うかわからないよ」
「そんなの、誰の場合でも同じでしょ。とにかく日曜日の朝は、精いっぱいおしゃれをして待ち合わせ場所まで来ること。わかった?」
「わかった」とおうむ返しに返事をすると、玲奈は「楽しみにしてる」と言って別の話題に移った。
夕食を終えてからずっと、もうじき就寝時間だというのに、隼人は机の上の片づけばかりしている。
隼人が机上の混沌を解消するのは、物理的なスペースを確保するためではなく、己の精神を落ち着けるためだ。とはいえ、今宵のそれは退廃的すぎると我ながら思う。ブロックスライディングパズルの要領で、いくつかの物の位置を次から次へとランダムに替えていくのなら、まだ片づけている感を出せる。しかし今日は、A地点に置かれているペン立てと、B地点に投げ出されている数学の参考書の位置を、延々と交換しているだけ。
あまりにも心配事が大きすぎると、独自に考案した精神統一方はまるで役に立たないのだと、彼は思い知った。
隼人をこんなにも悩ませているのは、湯田真理愛と神宮寺玲奈のこと。
神宮寺玲奈は川真田樹音のグループに属している。裏表のある性格も、裏の性格の悪辣さも、玲奈の幼ななじみである彼は熟知している。真理愛と玲奈は本来、仲よくなるはずがない者同士であり、仲よくなってはならない者同士でもある。
それなのに、二人は日々関係を深めている。
その果てに真理愛に待ち受けている未来が、彼女にとって幸福なものだとは隼人には思えない。
ただ、真理愛は少なくとも、誰かに強制されて玲奈と仲よくしているわけではなさそうだ。それに、真理愛とは単なるクラスメイトの関係でしかない隼人が干渉するのも、不自然だ。
だから彼は、机の上のペン立てと参考書の位置を入れ替える。何度も、何度でも入れ替える。
明日以降、たとえ入れ替える物品を変更したとしても、ひたすら入れ替えつづけるという行為自体はやめないのだろう。
頭の一隅でそう思いながら手を動かしつづけた。
「着飾ってこいという意味? それは、なんていうか……」
「なに怖気づいてるの? お出かけするときにせいいっぱいおしゃれするって、普通でしょ。別に、どんな格好してきても笑わないよ。絶対に笑わない。だから日曜日は絶対に気合い入れてよね」
「笑わない? ……ほんとに? がんばりたいとは思うけど、所詮はわたしのセンスだから、玲奈が見たらどう思うかわからないよ」
「そんなの、誰の場合でも同じでしょ。とにかく日曜日の朝は、精いっぱいおしゃれをして待ち合わせ場所まで来ること。わかった?」
「わかった」とおうむ返しに返事をすると、玲奈は「楽しみにしてる」と言って別の話題に移った。
夕食を終えてからずっと、もうじき就寝時間だというのに、隼人は机の上の片づけばかりしている。
隼人が机上の混沌を解消するのは、物理的なスペースを確保するためではなく、己の精神を落ち着けるためだ。とはいえ、今宵のそれは退廃的すぎると我ながら思う。ブロックスライディングパズルの要領で、いくつかの物の位置を次から次へとランダムに替えていくのなら、まだ片づけている感を出せる。しかし今日は、A地点に置かれているペン立てと、B地点に投げ出されている数学の参考書の位置を、延々と交換しているだけ。
あまりにも心配事が大きすぎると、独自に考案した精神統一方はまるで役に立たないのだと、彼は思い知った。
隼人をこんなにも悩ませているのは、湯田真理愛と神宮寺玲奈のこと。
神宮寺玲奈は川真田樹音のグループに属している。裏表のある性格も、裏の性格の悪辣さも、玲奈の幼ななじみである彼は熟知している。真理愛と玲奈は本来、仲よくなるはずがない者同士であり、仲よくなってはならない者同士でもある。
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ただ、真理愛は少なくとも、誰かに強制されて玲奈と仲よくしているわけではなさそうだ。それに、真理愛とは単なるクラスメイトの関係でしかない隼人が干渉するのも、不自然だ。
だから彼は、机の上のペン立てと参考書の位置を入れ替える。何度も、何度でも入れ替える。
明日以降、たとえ入れ替える物品を変更したとしても、ひたすら入れ替えつづけるという行為自体はやめないのだろう。
頭の一隅でそう思いながら手を動かしつづけた。
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