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真理愛はひたすら待った。少なくとも一時間は経ち、二時間が近づき、そろそろ日付が変わるころだろうか。かたい床の上に長時間同じ姿勢でいるのは苦痛だが、あと少しの辛抱だ、と自らに言い聞かせる。
さらに半時間ほどが経っただろうか。
複数人の笑い声が重なったときは、真理愛にもかろうじて聞こえていたが、それすらも途絶えてもう随分経つ。家族が不在という状況、周囲には民家の一軒もないという環境、さらには樹音たちの性格を考え合わせれば、遅い時間帯なのを理由に話し声を抑えたとは考えにくい。疲れや眠気から話し声の音量が低下しているのだとすれば、すでに日付は変わっているのだから、談笑に固執せずに就寝したはず。
時は満ちた。
真理愛は静かに体を起こし、立ち上がる。まずはナップザックからすみれ色のワンピースを取り出し、身に着ける。右手に荷造り紐を切るのに使ったナイフ、左手にナップザックから取り出した金属製のハンマーを握りしめ、物置部屋から出る。
閉じ込められる前よりも暗さと静けさが増している。その場に佇んで全神経を研ぎ澄ませる。人が活動する気配は感じられない。物置部屋にいるあいだに目はすっかり闇に慣れたので、移動に支障はない。
和室の襖は閉ざされていた。隙間から明かりは漏れていない。間近まで来ても、物音も気配も感じられない。
和室の前を素通りし、トイレに入る。
明かりは点けない。ドアのロックはかけない。ドアに貼りつく。入ってきた者の頭部にハンマーを打ち下ろすイメージ。右手に凶器を握りしめ、振るってみる。一つうなずき、ハンマーを握る力はそのままに両腕を垂らす。深く長く息を吐く。
就寝直前に小用を足した者も多いだろうから、次なる利用者の来訪までには間が空くかもしれない。だからといって、油断から攻撃が遅れる、あるいは正確性を欠いた攻撃になり、殺し損ねれば面倒だ。体力と腕力に自信がない真理愛は、不意打ちの一撃をいかに効果的にくり出せるかが重要になってくる。ただ、そうはいっても、いつ始まるかわからない惨劇の開幕まで、緊張感と攻撃態勢を維持しろというのは無謀な要請だ。
置かれている状況の難しさ、求められている心構えの難しさを、いざ本番を迎えて、真理愛はひしひしと実感する。緊張感は、物置部屋で紐を切ろうと悪戦苦闘していたときを上回っている。
待ち受けている未来は、大願の成就か。
それとも、惨めな破滅か。
――鏖にしてやる。
さらに半時間ほどが経っただろうか。
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時は満ちた。
真理愛は静かに体を起こし、立ち上がる。まずはナップザックからすみれ色のワンピースを取り出し、身に着ける。右手に荷造り紐を切るのに使ったナイフ、左手にナップザックから取り出した金属製のハンマーを握りしめ、物置部屋から出る。
閉じ込められる前よりも暗さと静けさが増している。その場に佇んで全神経を研ぎ澄ませる。人が活動する気配は感じられない。物置部屋にいるあいだに目はすっかり闇に慣れたので、移動に支障はない。
和室の襖は閉ざされていた。隙間から明かりは漏れていない。間近まで来ても、物音も気配も感じられない。
和室の前を素通りし、トイレに入る。
明かりは点けない。ドアのロックはかけない。ドアに貼りつく。入ってきた者の頭部にハンマーを打ち下ろすイメージ。右手に凶器を握りしめ、振るってみる。一つうなずき、ハンマーを握る力はそのままに両腕を垂らす。深く長く息を吐く。
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それとも、惨めな破滅か。
――鏖にしてやる。
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