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図書館の天啓③
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美咲は他人と口頭でコミュニケーションをとれない状態に陥ってはいたが、誰かに胸中を吐露したい気持ちはきっとあったに違いない。はけ口を失ったことで、思いはむしろ日ごとに膨らんでいたはずだ。
長らく目的を果たせずにいたが、溜め込まれる一方の欲求は、やがて抑え込むのも限界に近づいた。「のどかが相手ならば」と判断し、意識的に解き放った。我慢しきれずにあふれ出してしまった、ではなくて。
「溜め込む……。蓄積……」
つぶやきが無意識に唇の外に出ていた。のどかは耳聡いほうだが、偶然にも間近で響いた、甲高いクラクションのせいで聞きとれなかったらしく、無反応だ。
大きな一撃が美咲を打ちのめしたのではなく、小さなダメージが蓄積された結果が美咲の現状ではないか――綿貫弥生はそう推理していた。
小さな罪の積み重ね。その結果の、不登校・ひきこもり・沈黙。その結果の、のどかに想いを打ち明けるという行為。どのような罪であれば、吉村美咲をそのような状態にまで追い込めるのだろう? 美咲が想いを打ち明ける相手は、必ずしものどかである必要はなかった。その可能性も考慮に入れなければならないとなると、あまりにも取り留めのなさに考察を放棄したくなる。
弥生が罪を犯したと仮定しても、極論を言えば、美咲が類稀なる図太い神経の持ち主だった場合、美咲は自分の殻に閉じこもることはなかった。
原因は加害者ではなく、被害者にあるかもしれない、という観点。加害者すらも自覚していないような加害行為に傷つき、心を閉ざす美咲にこそ非がある、という意味ではなくて。
美咲から話を聞きたい、という思いがぐんぐん膨らんでいく。
すでに草太朗直々に弥生に聴取を行い、引き出せるものは引き出し終えている。美咲の周辺の人物に対する聞きとりも、同じく完了している。したがって、あとは本丸である美咲本人を残すのみ。
聞けるものなら聞いたほうがいい、ではなくて、話を聞かなければならない。
ただ、現状、美咲はのどか以外の人間に心を開こうとしない。
美咲は今、自分の殻に閉じこもる理由をのどかに告げるか否か、迷っている。事情を話せば決心してくれる保証は、残念ながらどこにもない。のどかがいくら我慢強く待ったとしても。打ち明けるように、言葉巧みに誘導したとしても。
なんらかの策を講じて、本人に直接話を聞く以外の方法で美咲の心を解明するしか、道を切り拓くことはできないのだろうか?
長らく目的を果たせずにいたが、溜め込まれる一方の欲求は、やがて抑え込むのも限界に近づいた。「のどかが相手ならば」と判断し、意識的に解き放った。我慢しきれずにあふれ出してしまった、ではなくて。
「溜め込む……。蓄積……」
つぶやきが無意識に唇の外に出ていた。のどかは耳聡いほうだが、偶然にも間近で響いた、甲高いクラクションのせいで聞きとれなかったらしく、無反応だ。
大きな一撃が美咲を打ちのめしたのではなく、小さなダメージが蓄積された結果が美咲の現状ではないか――綿貫弥生はそう推理していた。
小さな罪の積み重ね。その結果の、不登校・ひきこもり・沈黙。その結果の、のどかに想いを打ち明けるという行為。どのような罪であれば、吉村美咲をそのような状態にまで追い込めるのだろう? 美咲が想いを打ち明ける相手は、必ずしものどかである必要はなかった。その可能性も考慮に入れなければならないとなると、あまりにも取り留めのなさに考察を放棄したくなる。
弥生が罪を犯したと仮定しても、極論を言えば、美咲が類稀なる図太い神経の持ち主だった場合、美咲は自分の殻に閉じこもることはなかった。
原因は加害者ではなく、被害者にあるかもしれない、という観点。加害者すらも自覚していないような加害行為に傷つき、心を閉ざす美咲にこそ非がある、という意味ではなくて。
美咲から話を聞きたい、という思いがぐんぐん膨らんでいく。
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聞けるものなら聞いたほうがいい、ではなくて、話を聞かなければならない。
ただ、現状、美咲はのどか以外の人間に心を開こうとしない。
美咲は今、自分の殻に閉じこもる理由をのどかに告げるか否か、迷っている。事情を話せば決心してくれる保証は、残念ながらどこにもない。のどかがいくら我慢強く待ったとしても。打ち明けるように、言葉巧みに誘導したとしても。
なんらかの策を講じて、本人に直接話を聞く以外の方法で美咲の心を解明するしか、道を切り拓くことはできないのだろうか?
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