54 / 244
【黒の創造召喚師 ―Closs over the world―】
第049話 交錯する思惑⑥
しおりを挟む
「まぁここの席で、ああだこうだ言ってても仕方がない。みんなこっちの生活にも慣れてきたようだし、ここらで本格的に仕事をしますかね……」
話を一通り聞き終えたツグナは、リリアとシルヴィが見ているその場で左腕から魔書を引き抜き、お目当ての従者を召喚する。向こうの世界で幾度となく彼の《創造召喚魔法》を目にしている二人にとって、魔書《クトゥルー》による召喚の儀式は真新しいものではない。
「さぁて、こっちの世界での初仕事だ。頼むぜ――ニア」
魔書を開いた彼が召喚したのは、これまでに何度も陰ながら主を助けてきた隠密・偵察特化の従者であるニアだ。
「ふふっ……やっと私の出番ですか。転生前の主の世界――場所がいずことなろうとも、この力は我が主とともに」
青白い燐光が晴れた後に顕現したニアは、白髪に尖った犬耳、二股に分かれたふさふさの尻尾が特徴の女性である。固有スキルに「従属同調」を持つ彼女は、自らの血を飲ませた人間以外の動物や昆虫類を従属させ、その感覚に彼女が同調できるスキルを持つ。
「あぁ、宜しく頼むよ。それで呼び出して早々だが、仕事だ」
「はい。それで、どのようなことでしょうか?」
彼の言葉に、二つ返事で承諾したニアは、早速とばかりに主たるツグナから手がかりとなる情報を得ようと訊ねる。当初はその発言に子供っぽいきらいがあったニアだったが、成長しレベルアップするにつれてそうした子供っぽい発言は徐々に消えていった。
「あぁ、それは――」
ニアの発言を受け、ツグナは改めて遭遇した魔物の特徴を述べると共に、先ほどのリリアとのやり取りで見え始めた「敵」――その黒幕のおぼろげな姿までをも含めて伝える。
「……なるほど。主の話から察するに、私の能力及びスキルでもってしてもその全体像をすぐに調べ上げるのはむりそうですね」
「そうか。俺の方でも情報が入り次第、伝えるようにはする。とりあえず、分かる範囲から手をつけてみてくれ」
「承知しました。ではそのようにいたします。それでは、まず手始めにこの世界における私の『手駒』を増やすことから手をつけましょう」
ニアはそう言い残すと、夜の闇に溶けるようにスッとその姿を消した。
「ふむ。まずは情報収集というワケか?」
ツグナとニアとの会話を聞き流していたリリアが、ポツリと訊ねる。
「まぁね。まずは調べる取っ掛かりを得ようかなって思ってね」
「だが、調べるにしても、もっと効率的な方法があるのではないか? この世界にはそういった調査や分析に長けた道具があるだろう?」
普段からテレビやPCを始めとしたネットワークに触れているリリアが、彼の言葉に重ねて問いかける。だが、彼女から投げかけられた質問に対し、ツグナは頭を横に振りながら答えた。
「確かに調べるのに便利な道具はあるよ。ただし、情報統制が敷かれている可能性があるし、道具を使いこなすにはある程度の技術が必要になるからね。それなら、すぐに動かせるニアを向かわせて調べさせた方がいいかなと思ってさ。俺が現場へ行こうにも、おそらくそこには警察の人たちが大勢いるだろうから、目をつけられるかもしれない。そうなると色々動きづらくなるだろうしね……」
「なるほど。確かに情報は鮮度が命だ。ネットの検索画面に『魔煌石』と打ち込んでも、よくてファンタジー小説の文章を拾ってくるだけだろうしな」
「あー、まぁ……ね」
リリアはツグナの説明に納得顔で頷く。そんな彼女のセリフを、ツグナは「まさか、ネット小説を読み耽って、変な知識を入れてないよな?」と若干心配を覚えつつも何とか返事をする。
「さて、と。これでまず一手か……あとは――」
次の手をどうするか、その詳細を思案しつつ、ツグナはコーヒーのお代わりをシルヴィに頼むのであった。
話を一通り聞き終えたツグナは、リリアとシルヴィが見ているその場で左腕から魔書を引き抜き、お目当ての従者を召喚する。向こうの世界で幾度となく彼の《創造召喚魔法》を目にしている二人にとって、魔書《クトゥルー》による召喚の儀式は真新しいものではない。
「さぁて、こっちの世界での初仕事だ。頼むぜ――ニア」
魔書を開いた彼が召喚したのは、これまでに何度も陰ながら主を助けてきた隠密・偵察特化の従者であるニアだ。
「ふふっ……やっと私の出番ですか。転生前の主の世界――場所がいずことなろうとも、この力は我が主とともに」
青白い燐光が晴れた後に顕現したニアは、白髪に尖った犬耳、二股に分かれたふさふさの尻尾が特徴の女性である。固有スキルに「従属同調」を持つ彼女は、自らの血を飲ませた人間以外の動物や昆虫類を従属させ、その感覚に彼女が同調できるスキルを持つ。
「あぁ、宜しく頼むよ。それで呼び出して早々だが、仕事だ」
「はい。それで、どのようなことでしょうか?」
彼の言葉に、二つ返事で承諾したニアは、早速とばかりに主たるツグナから手がかりとなる情報を得ようと訊ねる。当初はその発言に子供っぽいきらいがあったニアだったが、成長しレベルアップするにつれてそうした子供っぽい発言は徐々に消えていった。
「あぁ、それは――」
ニアの発言を受け、ツグナは改めて遭遇した魔物の特徴を述べると共に、先ほどのリリアとのやり取りで見え始めた「敵」――その黒幕のおぼろげな姿までをも含めて伝える。
「……なるほど。主の話から察するに、私の能力及びスキルでもってしてもその全体像をすぐに調べ上げるのはむりそうですね」
「そうか。俺の方でも情報が入り次第、伝えるようにはする。とりあえず、分かる範囲から手をつけてみてくれ」
「承知しました。ではそのようにいたします。それでは、まず手始めにこの世界における私の『手駒』を増やすことから手をつけましょう」
ニアはそう言い残すと、夜の闇に溶けるようにスッとその姿を消した。
「ふむ。まずは情報収集というワケか?」
ツグナとニアとの会話を聞き流していたリリアが、ポツリと訊ねる。
「まぁね。まずは調べる取っ掛かりを得ようかなって思ってね」
「だが、調べるにしても、もっと効率的な方法があるのではないか? この世界にはそういった調査や分析に長けた道具があるだろう?」
普段からテレビやPCを始めとしたネットワークに触れているリリアが、彼の言葉に重ねて問いかける。だが、彼女から投げかけられた質問に対し、ツグナは頭を横に振りながら答えた。
「確かに調べるのに便利な道具はあるよ。ただし、情報統制が敷かれている可能性があるし、道具を使いこなすにはある程度の技術が必要になるからね。それなら、すぐに動かせるニアを向かわせて調べさせた方がいいかなと思ってさ。俺が現場へ行こうにも、おそらくそこには警察の人たちが大勢いるだろうから、目をつけられるかもしれない。そうなると色々動きづらくなるだろうしね……」
「なるほど。確かに情報は鮮度が命だ。ネットの検索画面に『魔煌石』と打ち込んでも、よくてファンタジー小説の文章を拾ってくるだけだろうしな」
「あー、まぁ……ね」
リリアはツグナの説明に納得顔で頷く。そんな彼女のセリフを、ツグナは「まさか、ネット小説を読み耽って、変な知識を入れてないよな?」と若干心配を覚えつつも何とか返事をする。
「さて、と。これでまず一手か……あとは――」
次の手をどうするか、その詳細を思案しつつ、ツグナはコーヒーのお代わりをシルヴィに頼むのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。