文字の大きさ
大
中
小
1 / 5
1.
わたしは今、何故かお城のような大豪邸にいる。
わたしは仕事で偶然やって来た街でとある男性に会い、そのままここに連れられてきてしまったのだ。
(どうしてこんなことに?)
何故かわたしを見初めたらしい侯爵様は、わたしのことを妻だと言う。
(頭、大丈夫なのかな)
妻じゃないと否定したわたしに何故か突然のプロポーズ。
さっきから『何故か』のオンパレード。
容姿抜群でお金持ちの王子様や貴族に見初められ、溺愛されてプロポーズだなんてお話の中の世界みたい。
憧れるようなシチュエーションだったはずなのに……。
(実際に自分の身に起こると怖いよ! 何か裏があるの?)
コンコンと部屋のドアをノックする音。「入ってもよろしいでしょうか?」と声がする。
「どうぞ」
「失礼します。お茶はいかがでしょうか?」
「ありがとう」
部屋に入ってきたメイドのはわたしの専属メイドらしい。しかも、わたしが来る前からずっとわたしの専属メイドだそうだ。
(意味がわからない)
「茶葉とお湯をいただければ自分でしますよ」
「いえいえ。そういうわけにはまいりません。わたしはお嬢様の専属メイドですから」
「その、専属メイドってどういうことなんでしょうか? いまいち理解できないと言いますか……」
わたしの言葉に専属メイドのリズも困った顔をする。
「そうですよね。わたしも気持ちはよくわかります。わたしもある日突然、この部屋の管理を任され、この部屋に来る方に仕えよと言われましたから。しかも、そのあと五年も誰もこないのです」
リズは遠い目をする。
なんだか申し訳ない。
「なんだかごめんなさい」
「いえ。私はようやくお世話にする方が現れて本当に嬉しいんですよ」
笑顔で言ってくれるが、「主もいないのに専属メイドって本当に肩身が狭くて……」とぽつりといったのをわたしは聞き逃さなかった。
「本当にごめんなさい」
「謝らないでください。お嬢様に悪いことなど何もありませんし、感謝することしかないんですから」
「本当に?」
「もちろんです。部屋を任される専属メイドなので、お給料も良いですし。それに侯爵様もあんなに笑顔でびっくりですよ。おかげで屋敷の中の空気もすごくいいんです。侯爵様には笑うための表情筋がないのかとみんな思っていたくらいですから」
わたしと会話しながらもリズはお茶の用意を進めてくれた。専属メイドに指名されるだけあって、手際が良い。
「どうぞ」
「リズも一緒にどう?」
用意されたカップは二つ。一つにだけお茶が注がれている。
「申し訳ありませんが遠慮いたします」
「え、でも、カップは……」
お茶に付き合ってくれるのかと思ったのに残念だ。
「それはその……。そろそろ……」
リズがちょっと困った顔をすると部屋のドアをノックする音がした。
「やっぱりいらっしゃいましたね」
「どういうこと?」
わたしが疑問を口にすると同時に、部屋ドアが少し開いた。
「アメリア。一緒にお茶でもどうだい?」
ドアの隙間から噂の侯爵様が顔を出す。
(そういうことね)
わたしは心の中でげんなりした。でも、主張したいことがあるから丁度良かったのかもしれない。
「侯爵様。返事を待たずにドアを開けられるのは……」
リズがわたしのために勝手にドアを開けてくれるなと主張してくれる。
「あぁ、着替え中かどうかはわかるから問題ない。安心してくれアメリア」
(えっ? わかるの? 怖いんですけど……)
「え、えぇっと……どうしておわかりに?」
わたしは思わず訊いてしまった。
「それはもちろん愛の力だよ」
笑顔で言う侯爵様。
(普通に気持ち悪いんですけど……)
わたしは思わず引きつった顔になる。リズも同様だ。
「冗談だよ。気配でわかるから」
(いや、それも普通に怖いですから)
「それより、一緒にお茶を……あぁ、準備は出来ているようだね。嬉しいよ、アメリア。僕を待っていてくれたんだね」
「違います」
わたしは思わず即座に否定した。が、侯爵様は何も聞こえなかったように隣に座った。
(無視ですか。もう面倒だわ。考えないようにしよう。それより、今日こそ話を聞いてもらわないと!)
わたしは仕事で偶然やって来た街でとある男性に会い、そのままここに連れられてきてしまったのだ。
(どうしてこんなことに?)
何故かわたしを見初めたらしい侯爵様は、わたしのことを妻だと言う。
(頭、大丈夫なのかな)
妻じゃないと否定したわたしに何故か突然のプロポーズ。
さっきから『何故か』のオンパレード。
容姿抜群でお金持ちの王子様や貴族に見初められ、溺愛されてプロポーズだなんてお話の中の世界みたい。
憧れるようなシチュエーションだったはずなのに……。
(実際に自分の身に起こると怖いよ! 何か裏があるの?)
コンコンと部屋のドアをノックする音。「入ってもよろしいでしょうか?」と声がする。
「どうぞ」
「失礼します。お茶はいかがでしょうか?」
「ありがとう」
部屋に入ってきたメイドのはわたしの専属メイドらしい。しかも、わたしが来る前からずっとわたしの専属メイドだそうだ。
(意味がわからない)
「茶葉とお湯をいただければ自分でしますよ」
「いえいえ。そういうわけにはまいりません。わたしはお嬢様の専属メイドですから」
「その、専属メイドってどういうことなんでしょうか? いまいち理解できないと言いますか……」
わたしの言葉に専属メイドのリズも困った顔をする。
「そうですよね。わたしも気持ちはよくわかります。わたしもある日突然、この部屋の管理を任され、この部屋に来る方に仕えよと言われましたから。しかも、そのあと五年も誰もこないのです」
リズは遠い目をする。
なんだか申し訳ない。
「なんだかごめんなさい」
「いえ。私はようやくお世話にする方が現れて本当に嬉しいんですよ」
笑顔で言ってくれるが、「主もいないのに専属メイドって本当に肩身が狭くて……」とぽつりといったのをわたしは聞き逃さなかった。
「本当にごめんなさい」
「謝らないでください。お嬢様に悪いことなど何もありませんし、感謝することしかないんですから」
「本当に?」
「もちろんです。部屋を任される専属メイドなので、お給料も良いですし。それに侯爵様もあんなに笑顔でびっくりですよ。おかげで屋敷の中の空気もすごくいいんです。侯爵様には笑うための表情筋がないのかとみんな思っていたくらいですから」
わたしと会話しながらもリズはお茶の用意を進めてくれた。専属メイドに指名されるだけあって、手際が良い。
「どうぞ」
「リズも一緒にどう?」
用意されたカップは二つ。一つにだけお茶が注がれている。
「申し訳ありませんが遠慮いたします」
「え、でも、カップは……」
お茶に付き合ってくれるのかと思ったのに残念だ。
「それはその……。そろそろ……」
リズがちょっと困った顔をすると部屋のドアをノックする音がした。
「やっぱりいらっしゃいましたね」
「どういうこと?」
わたしが疑問を口にすると同時に、部屋ドアが少し開いた。
「アメリア。一緒にお茶でもどうだい?」
ドアの隙間から噂の侯爵様が顔を出す。
(そういうことね)
わたしは心の中でげんなりした。でも、主張したいことがあるから丁度良かったのかもしれない。
「侯爵様。返事を待たずにドアを開けられるのは……」
リズがわたしのために勝手にドアを開けてくれるなと主張してくれる。
「あぁ、着替え中かどうかはわかるから問題ない。安心してくれアメリア」
(えっ? わかるの? 怖いんですけど……)
「え、えぇっと……どうしておわかりに?」
わたしは思わず訊いてしまった。
「それはもちろん愛の力だよ」
笑顔で言う侯爵様。
(普通に気持ち悪いんですけど……)
わたしは思わず引きつった顔になる。リズも同様だ。
「冗談だよ。気配でわかるから」
(いや、それも普通に怖いですから)
「それより、一緒にお茶を……あぁ、準備は出来ているようだね。嬉しいよ、アメリア。僕を待っていてくれたんだね」
「違います」
わたしは思わず即座に否定した。が、侯爵様は何も聞こえなかったように隣に座った。
(無視ですか。もう面倒だわ。考えないようにしよう。それより、今日こそ話を聞いてもらわないと!)
感想
あなたにおすすめの小説
守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
【完結】ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意に気付かない。
「一生側に」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
どうせ愛されない子なので、呪われた婚約者のために命を使ってみようと思います
愛されずに育った少女が、唯一優しくしてくれた婚約者のために自分の命をかけて呪いを解こうとするお話。
ご都合主義のハッピーエンドのSS。
小説家になろう様でも投稿しています。
お姉様、わたくしの代わりに謝っておいて下さる?と言われました
「お姉様、悪いのだけど次の夜会でちょっと皆様に謝って下さる?」
突然妹のマリオンがおかしなことを言ってきました。わたくしはマーゴット・アドラム。男爵家の長女です。先日妹がわたくしの婚約者であったチャールズ・
サックウィル子爵令息と恋に落ちたために、婚約者の変更をしたばかり。それで社交界に悪い噂が流れているので代わりに謝ってきて欲しいというのです。意味が分かりませんが、マリオンに押し切られて参加させられた夜会で出会ったジェレミー・オルグレン伯爵令息に、「僕にも謝って欲しい」と言われました。――わたくし、皆様にそんなに悪い事しましたか? 謝るにしても理由を教えて下さいませ!
【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。
大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて……
さっくり読める短編です。
異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。
この二人の政略結婚に異議ある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ。
ルーシャン公爵令嬢シェリルはウェイン伯爵令息ノアに一目惚れし、宰相を務める祖父に彼との政略結婚を頼み込んだ。
政略結婚を理由に大好きな人と結婚する直前の公爵令嬢が、あまりの罪悪感に耐えかねていたところに、まさかの出来事が起こって!?
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。