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わたしは今、何故かお城のような大豪邸にいる。
わたしは仕事で偶然やって来た街でとある男性に会い、そのままここに連れられてきてしまったのだ。
(どうしてこんなことに?)
何故かわたしを見初めたらしい侯爵様は、わたしのことを妻だと言う。
(頭、大丈夫なのかな)
妻じゃないと否定したわたしに何故か突然のプロポーズ。
さっきから『何故か』のオンパレード。
容姿抜群でお金持ちの王子様や貴族に見初められ、溺愛されてプロポーズだなんてお話の中の世界みたい。
憧れるようなシチュエーションだったはずなのに……。
(実際に自分の身に起こると怖いよ! 何か裏があるの?)
コンコンと部屋のドアをノックする音。「入ってもよろしいでしょうか?」と声がする。
「どうぞ」
「失礼します。お茶はいかがでしょうか?」
「ありがとう」
部屋に入ってきたメイドのはわたしの専属メイドらしい。しかも、わたしが来る前からずっとわたしの専属メイドだそうだ。
(意味がわからない)
「茶葉とお湯をいただければ自分でしますよ」
「いえいえ。そういうわけにはまいりません。わたしはお嬢様の専属メイドですから」
「その、専属メイドってどういうことなんでしょうか? いまいち理解できないと言いますか……」
わたしの言葉に専属メイドのリズも困った顔をする。
「そうですよね。わたしも気持ちはよくわかります。わたしもある日突然、この部屋の管理を任され、この部屋に来る方に仕えよと言われましたから。しかも、そのあと五年も誰もこないのです」
リズは遠い目をする。
なんだか申し訳ない。
「なんだかごめんなさい」
「いえ。私はようやくお世話にする方が現れて本当に嬉しいんですよ」
笑顔で言ってくれるが、「主もいないのに専属メイドって本当に肩身が狭くて……」とぽつりといったのをわたしは聞き逃さなかった。
「本当にごめんなさい」
「謝らないでください。お嬢様に悪いことなど何もありませんし、感謝することしかないんですから」
「本当に?」
「もちろんです。部屋を任される専属メイドなので、お給料も良いですし。それに侯爵様もあんなに笑顔でびっくりですよ。おかげで屋敷の中の空気もすごくいいんです。侯爵様には笑うための表情筋がないのかとみんな思っていたくらいですから」
わたしと会話しながらもリズはお茶の用意を進めてくれた。専属メイドに指名されるだけあって、手際が良い。
「どうぞ」
「リズも一緒にどう?」
用意されたカップは二つ。一つにだけお茶が注がれている。
「申し訳ありませんが遠慮いたします」
「え、でも、カップは……」
お茶に付き合ってくれるのかと思ったのに残念だ。
「それはその……。そろそろ……」
リズがちょっと困った顔をすると部屋のドアをノックする音がした。
「やっぱりいらっしゃいましたね」
「どういうこと?」
わたしが疑問を口にすると同時に、部屋ドアが少し開いた。
「アメリア。一緒にお茶でもどうだい?」
ドアの隙間から噂の侯爵様が顔を出す。
(そういうことね)
わたしは心の中でげんなりした。でも、主張したいことがあるから丁度良かったのかもしれない。
「侯爵様。返事を待たずにドアを開けられるのは……」
リズがわたしのために勝手にドアを開けてくれるなと主張してくれる。
「あぁ、着替え中かどうかはわかるから問題ない。安心してくれアメリア」
(えっ? わかるの? 怖いんですけど……)
「え、えぇっと……どうしておわかりに?」
わたしは思わず訊いてしまった。
「それはもちろん愛の力だよ」
笑顔で言う侯爵様。
(普通に気持ち悪いんですけど……)
わたしは思わず引きつった顔になる。リズも同様だ。
「冗談だよ。気配でわかるから」
(いや、それも普通に怖いですから)
「それより、一緒にお茶を……あぁ、準備は出来ているようだね。嬉しいよ、アメリア。僕を待っていてくれたんだね」
「違います」
わたしは思わず即座に否定した。が、侯爵様は何も聞こえなかったように隣に座った。
(無視ですか。もう面倒だわ。考えないようにしよう。それより、今日こそ話を聞いてもらわないと!)
わたしは仕事で偶然やって来た街でとある男性に会い、そのままここに連れられてきてしまったのだ。
(どうしてこんなことに?)
何故かわたしを見初めたらしい侯爵様は、わたしのことを妻だと言う。
(頭、大丈夫なのかな)
妻じゃないと否定したわたしに何故か突然のプロポーズ。
さっきから『何故か』のオンパレード。
容姿抜群でお金持ちの王子様や貴族に見初められ、溺愛されてプロポーズだなんてお話の中の世界みたい。
憧れるようなシチュエーションだったはずなのに……。
(実際に自分の身に起こると怖いよ! 何か裏があるの?)
コンコンと部屋のドアをノックする音。「入ってもよろしいでしょうか?」と声がする。
「どうぞ」
「失礼します。お茶はいかがでしょうか?」
「ありがとう」
部屋に入ってきたメイドのはわたしの専属メイドらしい。しかも、わたしが来る前からずっとわたしの専属メイドだそうだ。
(意味がわからない)
「茶葉とお湯をいただければ自分でしますよ」
「いえいえ。そういうわけにはまいりません。わたしはお嬢様の専属メイドですから」
「その、専属メイドってどういうことなんでしょうか? いまいち理解できないと言いますか……」
わたしの言葉に専属メイドのリズも困った顔をする。
「そうですよね。わたしも気持ちはよくわかります。わたしもある日突然、この部屋の管理を任され、この部屋に来る方に仕えよと言われましたから。しかも、そのあと五年も誰もこないのです」
リズは遠い目をする。
なんだか申し訳ない。
「なんだかごめんなさい」
「いえ。私はようやくお世話にする方が現れて本当に嬉しいんですよ」
笑顔で言ってくれるが、「主もいないのに専属メイドって本当に肩身が狭くて……」とぽつりといったのをわたしは聞き逃さなかった。
「本当にごめんなさい」
「謝らないでください。お嬢様に悪いことなど何もありませんし、感謝することしかないんですから」
「本当に?」
「もちろんです。部屋を任される専属メイドなので、お給料も良いですし。それに侯爵様もあんなに笑顔でびっくりですよ。おかげで屋敷の中の空気もすごくいいんです。侯爵様には笑うための表情筋がないのかとみんな思っていたくらいですから」
わたしと会話しながらもリズはお茶の用意を進めてくれた。専属メイドに指名されるだけあって、手際が良い。
「どうぞ」
「リズも一緒にどう?」
用意されたカップは二つ。一つにだけお茶が注がれている。
「申し訳ありませんが遠慮いたします」
「え、でも、カップは……」
お茶に付き合ってくれるのかと思ったのに残念だ。
「それはその……。そろそろ……」
リズがちょっと困った顔をすると部屋のドアをノックする音がした。
「やっぱりいらっしゃいましたね」
「どういうこと?」
わたしが疑問を口にすると同時に、部屋ドアが少し開いた。
「アメリア。一緒にお茶でもどうだい?」
ドアの隙間から噂の侯爵様が顔を出す。
(そういうことね)
わたしは心の中でげんなりした。でも、主張したいことがあるから丁度良かったのかもしれない。
「侯爵様。返事を待たずにドアを開けられるのは……」
リズがわたしのために勝手にドアを開けてくれるなと主張してくれる。
「あぁ、着替え中かどうかはわかるから問題ない。安心してくれアメリア」
(えっ? わかるの? 怖いんですけど……)
「え、えぇっと……どうしておわかりに?」
わたしは思わず訊いてしまった。
「それはもちろん愛の力だよ」
笑顔で言う侯爵様。
(普通に気持ち悪いんですけど……)
わたしは思わず引きつった顔になる。リズも同様だ。
「冗談だよ。気配でわかるから」
(いや、それも普通に怖いですから)
「それより、一緒にお茶を……あぁ、準備は出来ているようだね。嬉しいよ、アメリア。僕を待っていてくれたんだね」
「違います」
わたしは思わず即座に否定した。が、侯爵様は何も聞こえなかったように隣に座った。
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