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最終日①

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その日、シーラは夢を見なかった。

こんな軽やかな気分で朝を迎えたのはいつ以来だろう。

体もスッキリしている。

朝の支度ではなんとなくいつもより明るい色の服を選んでみた。

コンコン

…アレンかしら?

「はい」

「お嬢さん、エドガーです」

…違った。
シーラはガッカリした自分に驚いた。
気を取り直し、

「どうぞ」

「失礼します。本日、旦那様がご帰宅なさります」

「そう」

「旦那様からこちらが届きました」

エドガーは手紙を出してきた。

シーラは手紙を受け取り読み始めた。
そこには一言だけ書いてあった。

“帰ったらお前の意思を確認する。”

シーラはバーニーのことだとわかった。

「お父様に手紙の返事を…」

「いらないと仰ってました。帰ったら聞くと」

無駄なことが嫌いなお父様らしい。
お父様がこの婚約を良しとしていないことは明白で、偏にひとえに私のために我慢しているのだ。

「エドガーありがとう」

「では、私はこれで」

「あ、ね、ねぇ、今日アレンは?」

「アレンなら休みを取らせています。長期仕事の後ですからね。後ほど顔見せにくると思いますよ」

普段は厳しい顔が多いエドガーがニコッと笑った。

「そ、そう。それならいいの。ありがとう。私、朝ご飯食べてくるわ」

シーラは急に照れくさくなってその場から逃げ出した。

——

「こんなんじゃだめだわ…」

午前中、何も手に付かなかったシーラが庭のベンチでボソボソと独り言を言っていると、

「どうしたの?」
目の前にひょいとアレンが現れた。

「~~~!」
シーラが言葉にならないほど驚いていると、

「あはは。そんなに驚く?」
アレンが涙を流して笑ってたので、シーラは睨んだ。

「あははっ。ははっ。ごめんごめん。これ、お詫びのスイーツとお土産だよ。渡してなかったから」

アレンは最近流行りのスイーツ店のケーキと木箱を渡した。

あら?ここ、行ってみたかったとこだわ。
こないだ話したこと覚えていてくれたんだ。
それだけのことなのに、無性に温かい気持ちが込み上げてきた。

「ありがとう。お詫びって?」

「ん?驚かせたお詫びだよ」

スイーツを横に置き、木箱を開けると細かい細工が施してある髪飾りが入っていた。

「きれい…」

「だろ?シーラは普段髪飾りはつけないけど、たまにはいいかなって。シーラの髪に合うと思ったんだ」

私のことを考えて…
それだけなのに、こんなに嬉しいなんて…
そのことを考えると頬が赤く染まった。

「ありがとう。大切にするわ」

「使ってくれたら嬉しいよ」

盗み見たアレンはニコニコしていた。

その時、玄関のほうがから騒がしくなった。
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