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懐胎
しおりを挟む「ゲホッ、・・・何ですか?」
「正直に答えて、」
真剣な顔をしてこちらをみる先輩。
「?」
「それって・・・妊娠?」
「え・・・」
身体全身が心臓なのかと思うくらいドキッとした。
そこから鳴り止まない。
「え、何言ってるんですか、そんなわけ」
「いや、誤魔化さないで。パティ妊娠してるね? パティがくる前にいた先輩がまさにそんな感じだったんだから。」
先輩はベッドの横にあった椅子に座って目線を合わせる。
ジッと見つめられてしまえば嘘が言えなくなる。
「・・・」
「パティ、せめて私にはちゃんと話して。」
「・・・まだ、わからないんです、けど・・」
「月のものはどれくらい来てないの?」
「もともと不順だったんで、多分2~3ヶ月です。」
「行為があったのは?」
「まだ、2ヶ月も経ってないかと。」
「そっか。 病院は?」
「まだ・・・」
「じゃあ診てもらおう。」
先輩は椅子から立ち上がる
「え。」
「行くよ!連れて行ってあげるから。」
「はい。」
着替えをして先輩と私はこっそり屋敷から出た。
先輩に言わなかったら病院に行って確かめられなかったし、言ってよかったな。
産院に着いて診察してもらう。
診察室に入って女性の先生でホッとした。
診察台に乗って診察してもらった。
「妊娠していますね。まだ初期ですから安静にして下さい。 流産や他にも問題がある可能性があるのでまた来週来てください。」
「・・・ありがとう、ございます。」
妊娠・・・
やっぱりって言う気持ちと、どうしようっていう気持ちでいっぱいになる。
診察室を出て先輩の元に行く。
「・・妊娠してたのね?」
私の顔をみて察したようで、確信をもって聞いてきた。
「はい。」
「場所、移動しようか。」
会計を済まし外へ出る。
近くの個室のあるカフェに入り個室に入る。
とりあえず、飲み物を注文して飲み物が運ばれるまではお互い何も話さなかった。
飲み物が来て、店員さんが下がる。
「・・・私は、おめでとうって言っていいの、かな?」
沈黙を破ったのは先輩だった。
「ありがとう、ございます。」
「嬉しそうじゃないなー。私の先輩はとっても幸せそうだったのに。」
そう言って先輩は紅茶を口に含む。
「さっき言ってた先輩はね、結婚生活の足しにする為に屋敷に仕事をしに来てたの。 だから毎日夕方になると自宅に帰ってたんだけどね。妊娠がわかってつわりが酷くなって辞めたの。パティの症状が先輩にそっくりだったからもしかしてーって思ったんだよね。」
「そう、だったんですか。」
「そう。でも、先輩はとっても嬉しそうだったから、パティのその複雑そうな顔がね。」
「すみません。」
「違うの違うの!気を悪くしたならごめんね。 ・・その子のお父さん、誰か聞いても良い?」
「・・・」
「無理に聞くつもりはないけれど、せっかく授かった命だから、皆んなで喜びたい。」
そう言われてお腹を押さえる。
「先輩。」
言うか悩んでいると先輩から尋ねられる。
「私の憶測なんだけど。 もしかして、身分が違う方の子だから喜べない?」
ドキッー
身体が跳ねる。
「・・・やっぱりかー」
「あの、この事は旦那様には。」
「パティ、ダメだよ。 旦那様に言わなきゃ。」
「でも、私はあまりに身分が違いすぎます。」
「そのつわりはどうするつもり? 間違いなく今以上に酷くなってくるよ? パティが言わなくてもいずれバレるし、旦那様がそんなに薄情な方だと思う?」
「パティ、旦那様にこの事を話して。 言いにくいなら私も付き添うし。それに今の時期は身体を大事にしなくちゃいけないんだから、今みたいな力仕事も多い事は出来るだけ避けなきゃ。」
「はい。」
とりあえず、これ飲んだら屋敷に帰ろう。と言われ、屋敷に戻りまた部屋のベッドで横になり天井を見ていた。
そして思う。
これからどうしよう。
旦那様に言ったら・・・
この子はどうなるんだろう。
そんな事ばかり考えて妊娠していると言われて喜んであげられない自分が嫌になる。
「ごめんね、喜べなくて。」
涙が横に流れて枕カバーが濡れる。
「ごめんね。」
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