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紅清様の指先が、俺の両手首に軽く触れた。
ビーッと伸ばしたセロテープが、俺の皮膚の上にカサカサッと頼りなく張り付いていく。
粘着力の弱いセロテープを、器用にくるくると巻き付けて俺の手首を束ねながら、紅清様が気遣うように顔を覗き込んできた。
「きつくない? かゆかったりする?」
縛っている最中ですら、紅清様は俺に優しい。
この方は、どこまで俺に甘いのだろう。
またまた視界がじわっとぼやけてしまう。
「全然きつくないですっ。――と言うより、緩くないですか? ちょっと動いたら取れちゃいそうですよ」
罰と言うには、余りに軽い。
俺は正直に縛りが緩いことを申告した。
もう二度と、紅清様の信頼を裏切りたくない。
紅清様に対して、誠実でありたいと心から思っているからだ。
そんな真剣な決意を胸に言ったのだけれど、紅清様は俺の言葉を聞くやいなや、ぷっと吹き出して笑い声を上げた。
「あはははは! 動いても取れないくらいきつく縛るなんて、罰ゲーム超えちゃうでしょ! 身動きできない拘束なんて危ないんだから、俺にも、他の誰かにも絶対にさせちゃダメだよ? まったく! 玄夜はいい子すぎるから心配になっちゃうなー!」
軽く笑い飛ばしているけれど、俺の身を案じてくれる声音は本気で。
胸の奥がぎゅっと温かく締め付けられた。
「…こ、こんなこと紅清様以外にさせませんよっ!」
慌ててそう言うと、紅清様は嬉しそうに目尻をゆるめた。
「なら良かった。――じゃぁ、罰ゲーム開始ね。俺が傍迷惑な同級生に電話して戻ってくるまで、セロテープで手首縛ったまま、いい子で待っていることっ! 俺が戻ってくるまでセロテープを巻き付けたままでいられたら、玄夜の勝ちで、晴れて無罪放免! お茶しながら、うちのバカな同級生がしでかしたことを全部説明するからね」
書斎の椅子に座っている俺の頭をぽんぽんと優しく撫でると、紅清様が扉に向かって歩き出してしまったので、俺は焦って呼び止めた。
「……あ、あの、紅清様! ちょっとお待ちください! 罰ゲームってこれだけですか!? 俺にあまりに有利すぎませんか!?」
思わず声が裏返った。
だって、だって!
こんなのほとんど勝ち確で、罰ゲームになんてなってないから!
「あはははは! 有利で何が不満なんだよ! 玄夜ってば、きつーいお仕置きでもされたいの?」
振り返った紅清様が、面白そうに笑って言った。
「い、いえ! そういう意味ではないんですけど、あんまりに俺に有利だと、反省しているって伝わらない気がしましてっ! 大恩ある紅清様に、どうしてあんなに失礼なことをしてしまったのか、自分で自分が許せないんです! だから、きっちり罰を与えて頂きたいって思ってしまいまして……」
「玄夜は真面目だなぁ! もう十分反省しているように俺には見えるよ。――けど、そうだなぁー、玄夜がそれじゃ気が済まないって言いうなら、ゲーム性高めちゃおうかっ!」
「ゲ、ゲーム性ですか?」
紅清様の真紅の瞳が、きらりと楽し気に光った。
悪戯を思いついた少年のように笑うと、机の上から不要な書類を一枚抜き取って、その裏側に黒ペンでさらさらと文字を書き始めた。
「?」
パソコンの液晶画面の向こう側。
何を書いているのか俺からは手元が見えない位置で、ペン先が紙を走る音だけが聞こえた。
書き終えると、紅清様は文字が見えないように紙を四つ折りにして、パソコンのキーボードの上にそっと置いた。
手首を縛られた俺の、すぐ目の前だ。
「俺が戻ってくるまでに、この紙に書いてあることを言ったりやったりしていたら、玄夜の負けー! 俺の言うことを何でも一つきかなきゃいけない――っていうのはどう?」
「えぇ!? ……は、はいっ! もちろん、それでいいですっ!」
少しだけ、心がぞわぞわっと粟立った。
何が書かれているのか、まるでわからないからだ。
紅清様が男の色香が漂うような笑みを浮かべて、俺の髪をくしゃくしゃと掻き混ぜた。
「よし、決まり! どっちが勝っても負けても、パソコンを見た件は終わりだぞ。俺もその条件じゃなきゃ、罰ゲームやってやらないからな?」
「…紅清様ぁ」
年上の立場ある男の。
全てを許して包み込んでくれる眼差しに、胸がどくっと甘く疼いた。
卑劣なことをした俺なんか、ゴミのように捨てられたって文句が言えないのに。
こんな優しい終わらせ方をしてくれるなんて!
「…紅清様、ありがとうございます!」
改めて。
ギュっと主人に心臓を鷲掴みにされて。
一瞬、呼吸が止まった。
縛られた両手首の先からじくじくと熱が沸き上がって、身体中に波紋のように広がっていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※サークル『擬人化色劇団』の作品は、色を擬人化した当サークル専属劇団員が演じている設定です。
→詳細はサイトへ
【CAST】
表紙:執事役 幹影玄夜(黒)
裏表紙:ご主人様役 朱鷺紅清(赤)
《赤×黒 他の主演作》
【完結】ドS天使の下僕になったオレは、絶頂調教で武器と化す~生贄と呼ばれた元兵士のふぁんたじぃで気持ちぃはじめて~
《黒受け 他主演作》
【青×黒】Mission ~ケンカップルの尊い日常~【束縛世話やき大学生社長×負けん気不器用大学生】
ビーッと伸ばしたセロテープが、俺の皮膚の上にカサカサッと頼りなく張り付いていく。
粘着力の弱いセロテープを、器用にくるくると巻き付けて俺の手首を束ねながら、紅清様が気遣うように顔を覗き込んできた。
「きつくない? かゆかったりする?」
縛っている最中ですら、紅清様は俺に優しい。
この方は、どこまで俺に甘いのだろう。
またまた視界がじわっとぼやけてしまう。
「全然きつくないですっ。――と言うより、緩くないですか? ちょっと動いたら取れちゃいそうですよ」
罰と言うには、余りに軽い。
俺は正直に縛りが緩いことを申告した。
もう二度と、紅清様の信頼を裏切りたくない。
紅清様に対して、誠実でありたいと心から思っているからだ。
そんな真剣な決意を胸に言ったのだけれど、紅清様は俺の言葉を聞くやいなや、ぷっと吹き出して笑い声を上げた。
「あはははは! 動いても取れないくらいきつく縛るなんて、罰ゲーム超えちゃうでしょ! 身動きできない拘束なんて危ないんだから、俺にも、他の誰かにも絶対にさせちゃダメだよ? まったく! 玄夜はいい子すぎるから心配になっちゃうなー!」
軽く笑い飛ばしているけれど、俺の身を案じてくれる声音は本気で。
胸の奥がぎゅっと温かく締め付けられた。
「…こ、こんなこと紅清様以外にさせませんよっ!」
慌ててそう言うと、紅清様は嬉しそうに目尻をゆるめた。
「なら良かった。――じゃぁ、罰ゲーム開始ね。俺が傍迷惑な同級生に電話して戻ってくるまで、セロテープで手首縛ったまま、いい子で待っていることっ! 俺が戻ってくるまでセロテープを巻き付けたままでいられたら、玄夜の勝ちで、晴れて無罪放免! お茶しながら、うちのバカな同級生がしでかしたことを全部説明するからね」
書斎の椅子に座っている俺の頭をぽんぽんと優しく撫でると、紅清様が扉に向かって歩き出してしまったので、俺は焦って呼び止めた。
「……あ、あの、紅清様! ちょっとお待ちください! 罰ゲームってこれだけですか!? 俺にあまりに有利すぎませんか!?」
思わず声が裏返った。
だって、だって!
こんなのほとんど勝ち確で、罰ゲームになんてなってないから!
「あはははは! 有利で何が不満なんだよ! 玄夜ってば、きつーいお仕置きでもされたいの?」
振り返った紅清様が、面白そうに笑って言った。
「い、いえ! そういう意味ではないんですけど、あんまりに俺に有利だと、反省しているって伝わらない気がしましてっ! 大恩ある紅清様に、どうしてあんなに失礼なことをしてしまったのか、自分で自分が許せないんです! だから、きっちり罰を与えて頂きたいって思ってしまいまして……」
「玄夜は真面目だなぁ! もう十分反省しているように俺には見えるよ。――けど、そうだなぁー、玄夜がそれじゃ気が済まないって言いうなら、ゲーム性高めちゃおうかっ!」
「ゲ、ゲーム性ですか?」
紅清様の真紅の瞳が、きらりと楽し気に光った。
悪戯を思いついた少年のように笑うと、机の上から不要な書類を一枚抜き取って、その裏側に黒ペンでさらさらと文字を書き始めた。
「?」
パソコンの液晶画面の向こう側。
何を書いているのか俺からは手元が見えない位置で、ペン先が紙を走る音だけが聞こえた。
書き終えると、紅清様は文字が見えないように紙を四つ折りにして、パソコンのキーボードの上にそっと置いた。
手首を縛られた俺の、すぐ目の前だ。
「俺が戻ってくるまでに、この紙に書いてあることを言ったりやったりしていたら、玄夜の負けー! 俺の言うことを何でも一つきかなきゃいけない――っていうのはどう?」
「えぇ!? ……は、はいっ! もちろん、それでいいですっ!」
少しだけ、心がぞわぞわっと粟立った。
何が書かれているのか、まるでわからないからだ。
紅清様が男の色香が漂うような笑みを浮かべて、俺の髪をくしゃくしゃと掻き混ぜた。
「よし、決まり! どっちが勝っても負けても、パソコンを見た件は終わりだぞ。俺もその条件じゃなきゃ、罰ゲームやってやらないからな?」
「…紅清様ぁ」
年上の立場ある男の。
全てを許して包み込んでくれる眼差しに、胸がどくっと甘く疼いた。
卑劣なことをした俺なんか、ゴミのように捨てられたって文句が言えないのに。
こんな優しい終わらせ方をしてくれるなんて!
「…紅清様、ありがとうございます!」
改めて。
ギュっと主人に心臓を鷲掴みにされて。
一瞬、呼吸が止まった。
縛られた両手首の先からじくじくと熱が沸き上がって、身体中に波紋のように広がっていく。
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※サークル『擬人化色劇団』の作品は、色を擬人化した当サークル専属劇団員が演じている設定です。
→詳細はサイトへ
【CAST】
表紙:執事役 幹影玄夜(黒)
裏表紙:ご主人様役 朱鷺紅清(赤)
《赤×黒 他の主演作》
【完結】ドS天使の下僕になったオレは、絶頂調教で武器と化す~生贄と呼ばれた元兵士のふぁんたじぃで気持ちぃはじめて~
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