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消えずの火と第一の殺人
危機感がない
しおりを挟む仕事の電話が売店の電話にかかってきたりして忙しげな倖田の側を離れ、茉守はマグマのところに行った。
「あの人、意外に、すごい政治家になりそうですね」
と倖田の後ろ姿を見ながら言う。
「だろうな。
抜け目ないし。
……意外に見る目あるし」
さっき、あなたのこと褒めてましたよ、と言おうかと思ったが、やめた。
マグマは茉守の手にある白地図を見、
「……ついに『犯人』まで観光名所に」
と呟いたあとで言う。
「そういえば、お前、倖田がニートを前科者と言っても驚かなかったな」
「ニートさんは、すごく優秀な人に見えます。
コミュニケーション能力に問題があるようにも見えません。
なにかあって、此処に閉じこもったのだろうとすぐにわかりました」
「なるほど。
だが、ニートはコミュニケーション能力に問題はないかもしれないが、あのツラだから、すぐに問題起こすぞ。
勝手に惚れた女が大騒ぎしたり。
倖田なんて、イケメンで政治家だから、妙な女が寄ってこないよう、いろいろ立ち回ってるようだが。
ニートはモテてる自覚がないから、危機感ないしな」
「マグマさんは大丈夫なんですか?」
「俺がモテると思うのか?」
「はい。
頼りがいがありそうです」
「口説いてんのか……」
いいえ、とあっさり言うと、マグマは笑う。
実際、客観的に判断して、そう思っただけだ。
「俺に女なんぞ寄ってこない。
今の時代、優しい男の方がいいんだそうだ。
ところで、あのシロップのシミはなんだったんだろうな。
まあ、あの紙が今回の事件と関係あるかはわからないが」
子どもがふざけて書いたものがとばされたのかもしれないし、とマグマは言う。
「あ、テーブルは汚れてませんでしたが。
カウンターには、少量のイチゴシロップがついてましたよ」
と通りすがりのマグマと顔見知りらしい警官が教えてくれた。
「だが、カウンターで書いてたらかき氷屋に気づかれるだろ」
と警官の後ろから現れたニートが言う。
「じゃあ、かき氷屋が犯人だ」
そうマグマが言ったとき、ちょうど事情聴取に警察に連れていかれるところだったかき氷屋が近くを通った。
「だから、なんで、あなたがたは私を犯人にしたがるんですか!」
もうかき氷は作りませんっ、と拗ねてしまう。
黙って、かき氷屋を見ていた茉守は真剣な顔で言った。
「それは困りますね。
ものすごく美味しかったです、あのかき氷」
急いで事件、解決しましょう、と警察に断りもなく、宣言する。
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