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消えずの火と第一の殺人
フラれたようだな
しおりを挟む「橋、大盛況のようだ」
電話を切った倖田がこちらにやって来ながら言う。
「事件のせいで」
「災厄が押し寄せてきてますね」
と茉守は言った。
自分ひとりが渡っただけで、災厄が来ると言われたのに。
そんな大量に渡ってきたら、災厄だらけになるのでは、と思いながら、できたばかりの橋を見下ろす。
確かに、人が増えている。
「おい、お前、今日は島から出られないぞ」
と茉守は倖田に言われた。
「何故です?」
「事件、全然解決しそうにないから。
第一発見者のお前も足止めだ」
「そうなんですか。
宿の用意はしてないですが」
「じゃあ、うちに泊まるか?」
と倖田が訊いてきた。
「心配するな。
俺は居ない。
島の方の家に今居るのは、手伝いのばあさんだけだ」
「うちでもいいぞ。
飯でも作ってくれるのなら」
とマグマも言う。
「マグマさんちも誰も居ないんですか?」
「うちの親たちは俺に寺を任せて、旅に出てる。
離れにはニートが居るが」
茉守は少し考え、
「ごはんですか……。
カップ麺なら作れる気がします」
と言った。
「考えないと、カップ麺も作れねえのかよっ」
どんなお嬢様だっ、と叫ばれていたようだが、ふと気づいて、かき氷屋、というか、売店の裏に行く。
そこで、じっとなにもない空間を見つめていると、ニートが来た。
「なにか居るのか?
被害者の霊か?」
と訊いてくる。
「いえ。
生きてても、魂抜けてくることあるみたいなんですけど。
今は見ないですね」
そうか、と言うニートを見つめ、茉守は問う。
「ニートさんも霊が見えるのではないですか?」
「いや……たまに白い影みたいなのが見えることはあるが、それだけだ」
「あの、ニートさん」
と呼びかけたあとで、茉守は少し考え、
「いえ、後でいいです」
と言った。
「……そうか」
と言って、ニートは去っていった。
「おい」
とマグマが茉守に呼びかけてくる。
「お前、どっち泊まるんだ?」
「えーと、じゃあ、マグマさんのお寺にお邪魔させていただいてもいいですか?
神の住む島のお寺に興味があるので」
と茉守は言った。
茉守がニートとかき氷屋の前に居る警官のところに行くのをマグマは見ていた。
「俺はフラれたようだな」
と倖田はなんの感慨もなさそうな口調で言ったあとで、
「あの女、お前に気があるんじゃないか?」
と言ってくる。
マグマは、警官と話している茉守を見ながら、ないだろう、と言う。
「うちにしたのは、なにか考えがあるんだろうよ」
「考え?」
「……あいつが、ホンモノの災厄でなければいいが」
とマグマは茉守の足首に巻かれた包帯を見る。
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