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容疑者マグマと第二の殺人
犯人はマグマ
しおりを挟む「大変でしたね、ニートさん」
マグマはニートにねぎらいの言葉を無表情にかけている茉守を見て驚く。
こいつにも、そんな普通の感覚があったのかと思って。
「せっかく綺麗に描いてらしたのに」
と言う茉守は死体ではなく、砂紋を見ていた。
……やはり、ずれている。
駆けつけた騒がしい事件現場でマグマは渋い顔をしていた。
前回と違い、今回は、困ったことがふたつもあるからだ。
ひとつは、今回は、被害者が最初から明らかに死んでいて。
殺人事件で間違いないと言うこと。
もうひとつは――
「遺体は、本条署の飯沼署長です」
と警官が報告している声が聞こえてくるが。
そう。
被害者が警察関係者で、そして……。
「誰か、飯沼署長を恨んでいた人物に心当たりがあるか」
と最近、本条署に来た刑事が訊く。
「マグマさんですかね?」
「マグマさんですかね?」
「マグマだろ」
「マグマさん……」
待てこらっ、とマグマは叫んだ。
「こいつと衝突してたの、俺だけじゃねえだろっ。
っていうか、何故、わざわざ此処に来て死ぬ~っ」
とマグマは死んでまで自分に喧嘩を売ってくるような小太りの死体を見下ろし叫んだ。
「あ~っ。
せめて、なにかいい思い出でも思い出して。
容疑が晴れるよう、署長のために涙してみようと思ったが、なんにも思い浮かばね~っ。
こいつ、ほんとうに、俺にロクでもないことばっかり言ってたよっ」
とマグマは頭を抱える。
「まあ、ひとりの部下に対してだけ、態度が悪いということはないでしょうからね。
周りの人間に対してもそうだったはず。
ということは、容疑者は他にもたくさんいらっしゃるのでは?」
そう小首をかしげながら言う茉守の言葉が援護射撃になる気がして、ホッとしたが。
茉守は続けて、その場に居る警官たちにこう訊いた。
「その恨みに思っていらっしゃる皆さんの中で、署長を一番恨んでたのは、どなたなんでしょう?」
「マグマ」
「マグマさん」
「マグマだろ」
「マグマのちょっと強引な捜査方法に関して、クレームを入れられたとき。
署長が、わしは知らんとマグマを切り捨てたから、やめるハメになったって聞いたが」
「じゃあ、犯人はマグマさんで」
と茉守が振り向く。
「てめっ。
人がせっかく案内してやってるのに、恩を仇で返すなーっ。
ってか、メモとるなっ。
てめえは墓を調べに来たんだろうがっ。
刺されたが生きてる奴と、まだ墓に埋まっていない死体のことしか書いてなくないかっ?」
そこで近くに居た若い刑事、相田が、ちょっと赤くなりながら、茉守に話しかける。
「前の事件から、ずっとメモ取られてるんですか?
参考にさせてください」
「どうぞ」
と茉守が渡すと、
「教科書みたいな文字ですね」
綺麗ですね、と相田が褒める。
「よく見るフォントを目指して書きました。
読みやすそうだったので」
とか二人で話している。
遠目に見たら、可愛らしいカップルのようにも見えたが。
それにしては、茉守が無表情すぎた。
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