神の住まう島の殺人 ~マグマとニート~

菱沼あゆ

文字の大きさ
27 / 75
海に浮かぶ証拠と第三の殺人(?)

触るなよ、女子大生

しおりを挟む
 
 砂浜に行くと、那須だけではなく、佐古が居て、渋い顔をしていた。

 昨日、あれからまた橋を調べに来て遅くなったので、実家に泊まったのだと言う。

 すると、お年寄りが早朝の散歩で妙な物が見つけたと騒ぎ出して、それが那須に伝わり、佐古にも連絡が行ったのだと言う。

「どうした?
 閉鎖的な場所は嫌だと島を出て行ったくせにまだ居たのか」
と言ったマグマに、佐古が噛み付くように言い返している。

「こう事件が頻発したら、仕方ないだろうがっ」

「……お前を実家に帰したいお前の親がやってんじゃないだろうな、連続殺人」

 ああ、最初の奴は死んでねえのか、とマグマが言ったとき、那須が言った。

「いや~、あの女性、やっぱり服毒自殺じゃないかもしれないって話になって、警察は頭抱えてんだよ」

 那須が、
「これが砂浜に打ち上げられたんだ。
 海を漂っていたらしい」
と指差した先には、白い紙があり、そこにはこう書いてあった。

「ツギ ハ オマエダ」

 茉守が読み上げると、倖田が言う。

「この間の奴の予備じゃないのか」

「なんだ、予備って」
と那須が訊く。

「俺は忘れたりなくしたりのミスがないよう、大事な書類とかメモ書きはふたつ用意して、別のところに入れとくぞ」

「じゃあ、お前が犯人な」
と海越しにあの橋を忌々しげに見ながら、佐古が言う。

「俺は社会人としての心得を語ってんだろっ」

「っていうか、それ以前に、これ手書きっぽいフォントだが、印刷だろっ」

 前のとは違うぞ、と言う佐古に、
「わからないぞ。
 此処に、フォントのような文字を書く女が居る」
とマグマは茉守を手で示したあとで、

「お前が犯人か?」
と真顔で訊いてきた。

「いえいえ。
 この件は違います」
と茉守も真顔で返して、

「どの件なら犯人なんだよっ」
とマグマと佐古に叫ばれる。

「言葉の綾ですよ」

 茉守は倖田と同じことを言い、さっきまで満ちていたのか、濡れている砂の上を歩いていった。

 鑑識が到着するまでそうしておくつもりなのか。

 その紙は波打ち際に置かれたままになっていた。

 おや? と茉守は身を乗り出して見る。

「なんか下に薄く書いてありますよ」

「触るなよ、女子大生」
とすぐに近くに居た佐古が茉守を制する。

 大丈夫です、と言って、茉守はその濡れた白い紙の前にしゃがんだ。

「どうした?
 またかき氷屋のシロップでもついてたか」

 そう言いながら、マグマが側に来た。

「海を漂ってたんなら、流れ落ちたりするんじゃないのか」
とニートも来て、上から覗き込む。

「ほら此処」
と茉守はその文字の下を指差した。

「ツギ ハ オマエダ」の下には、鉛筆で薄く書かれた矢印があった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

七竈 ~ふたたび、春~

菱沼あゆ
ホラー
 変遷していく呪いに終わりのときは来るのだろうか――?  突然、英嗣の母親に、蔵を整理するから来いと呼び出されたり、相変わらず騒がしい毎日を送っていた七月だが。  ある日、若き市長の要請で、呪いの七竃が切り倒されることになる。  七竃が消えれば、呪いは消えるのか?  何故、急に七竃が切られることになったのか。  市長の意図を探ろうとする七月たちだが――。  学園ホラー&ミステリー

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...