神の住まう島の殺人 ~マグマとニート~

菱沼あゆ

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白地図と最後の事件

この似非坊主がっ!

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「ところで、お前は結局誰なんだよ」
と佐古が茉守に訊いてくる。

「この島に渡ったときは、菊池茉守で。
 さっきまで山村瑞樹だったんですけどね」

 また名前なくなっちゃいました、ととりあえず茉守な茉守は言う。

「ところで、佐古さん、刑務所に行ったんじゃなかったんですか?」

「……俺が行ったみたいだろ。
 あいつを連れてっただけだ。

 っていうか、いきなり刑務所行かないからな」
と言う佐古たちにニートが棒アイスを持ってくる。

 ほんとうに気の利くニートの人だ、と茉守は思った。

 そのとき、庭をいきなりジイさんがよぎった。

 こちらに気づいて戻ってくる。

「おったのかね。
 コピー機借りるよ」

「どうぞー」
とマグマが言う。

「コピー機?」
と茉守が訊き返すと、

「ああ、本堂にある部屋に置いてんだ。
 檀家さんたちが使ってる。

 基本、寺のお知らせ用にだが。
 まあ、少々なら私用でもオッケーってことになっている。

 だから、寺の人間が居ないときも、勝手に使っていいことになってるんだ。

 年寄りがそんな大量に印刷したりしないしな」

「まあ、俺たちは大量にしてたけどな」
と佐古が言い出す。

「テスト前にニートのノートを」

「そうだったな」

「お前がコピーしてたから、部数増やしてもらってただけだが」
とマグマに佐古は言う。

「きっちりしてそうですね、ニートさんのノート」

 そこで、ふと気づいて、茉守は訊いた。

「そういえば、二枚目の『ツギ ハ オマエダ』って、どんなプリンターで印刷されてたんですか?」

「あー、あれか。
 何処の機種だったかな。
 確か鑑識が送ってきてたな」

 此処のだったりしてな、と佐古は笑いながら、スマホを見る。

 そのまま本堂に歩いていった。

 マグマがその後ろ姿を見送りながら言う。

「そういえば、此処、誰でも入れて印刷できるな。
 身近過ぎて気づかなかったが」

 すぐに佐古は戻ってきた。

「鑑識が言ってたのと同じ機種だった。
 まあ、よくある古い奴だからな。

 一応、写真撮って、ほんとに同じか送ってみたよ」

 そう軽く言うと、縁側に一旦、置いたアイスを食べ始める。

 すぐに電話がかかってきた。

「あ、庄田さん、お疲れ様で……」

 怒鳴り声が電話越しに聞こえてくる。

『なんてもの送ってきやがるっ。
 誰も気づかなかったのかっ?』

「えっ?
 本当に該当の機種でしたかっ?」

『印刷機の後ろの窓に霊が写ってるっ。
 よく確認しろよっ。
 見ちまったじゃねえかっ。

 あと、マグマに言っとけ。

 寺なんだろっ。
 成仏させとけ、この似非えせ坊主っ!』

 大変な二次被害ですね、と茉守はマグマを見たが、佐古とマグマに叫ばれる。

「おい、菊池茉守っ」

「おい、名無しっ!
 なんだかんだで、全部てめえのせいだろっ」

 ちょっとスマホに触っただけなのにあんまりだ……と茉守は思った。


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