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神隠し
鳴り続けるチャイム
しおりを挟むやばいな~。
例のドラマ、予約してたか自信ないのに。
そんな暇なことを考えながら、安西久美は早足で廊下を歩いていた。
先生、あと一人しか残ってないよ。
最後になって、警備のロックするのやだしなあ。
急がなきゃ。
久美は突然痛み出したお腹を抱えて、職員用トイレに駆け込んだ。
だが、腹痛は治まらず、トイレから出られない。
その間に、幻聴を聞いた気がした。
忙しげに何度も鳴るチャイムの音。
チャイムの設定がしてある時計が狂ってしまったかのように――。
「阿呆か、お前はっ。
午前四時でよかったろうがっ」
時計回し過ぎだ、と三橋に怒鳴られながら、七月は夜の廊下を歩く。
朝と夜、どっちの4:44にしようかと。
チャイムのセットしてある時計をぐるぐる動かしてしまって、何度もチャイムを鳴らしてしまったのだ。
「まあいいじゃん」
「よくねえよ。
あっちの世界で鳴らす分には構わんが、回してる間はまだ普通の学校じゃねえか」
校長が溜息をつき、
「チャイムが壊れたとでも言っておきますよ
と言っていた。
自分たちに手を貸すと決めたときから、多少の面倒事が起こるのは覚悟していたようだった。
「ところで、此処はどっちなんでしょうねえ」
と窓の外を見ながら校長が呟く。
「空間が歪む感じがあった?」
と七月は三村に訊いた。
「わかんないねえ。
矢部さんが好き放題やってるのを見て慌ててるうちに、全部終わってたっていうか」
言うなあ、三村くんも、と思ったとき、霊が言ってきた。
「他の霊に出逢ったら訊いてみりゃいいじゃねえか」
「そうは言うが、全部愛想のいい霊ばかりじゃあるまい」
「……今、誰が答えた?」
と七月が振り向くと、三橋が、
「俺だよ。
霊じゃないぞ」
と言う。
「……今、私の通訳なしで、この人と話したわね?」
「おおっ!
そういえば、見えているっ!」
トイレの霊の姿に、今更ながらに驚く三橋を見ながら、
「気づくの遅いよ」
と三村が言っていた。
「しかしですね……」
と不安そうに校長が困った事実を告げてくる。
「矢部さんが学校の時計、丸ごと動かしてしまいましたからね。
あっちこっちで空間が繋がった可能性もあるわけです。
他に、こっちに引き込まれてる人が居なきゃいいんですけどねえ」
「ええーっ。
誰も居ないの確認して始めましたよね?」
「一応、見ましたけど。
何事にも取りこぼしというものはあるものです」
さすが校長細かいな、と思っていたが、実際、取りこぼしていた。
各階、それぞれが見回ったのだが。
男は男子トイレ、女は女子トイレしか見ていなかった。
そして、職員用トイレのある階を見回ったのは、七月ではなかったのだ。
「……ま、私の得意な取り越し苦労でしょうね。
とりあえず、無事にこっちに来られたことを喜びましょうか」
と校長は言う。
「じゃあまず、えっと――
槻田先生を捜そうか」
と言った三村を、三橋が厭そうに見ていた。
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