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ラジヲ
ナニカがいるっ!
しおりを挟む来る、来ない。
来ない、来る。
花占いかよ、と三橋は自分で自分の心の声に向かい、突っ込んだ。
塀の陰に身をひそめる。
じっとそのエントランスを見つめていた。
人が通るたびに、誰かを待っている風を装ったりするのが莫迦莫迦しくなり。
もう帰ろう。
このまま此処に居たら、なけなしのプライドすらも何処かに抜け落ちていく感じがする、と思ったとき、その人影は現れた。
槻田だ。
なんとも言えない気持ちで、その姿を見送る。
向こうは向こうで、考え事をしているようで、こちらには気づいていなかった。
気がついたら、後をつけていた。
教師の後ろを適度な距離を取りながら歩いて行く制服姿の男。
完全に危ない奴だな、と自分で思いながらも、その歩みを止められなかった。
それにしても、なんで、俺、こいつの後つけてんだろうな。
そんなことしたって、どうにもならないのに。
ただこうして、何かが頭の中でまとまるのを待っているのだろうか。
そんなことを思いながら、何度目かの角を曲がったとき、気づいた。
誰かが自分の後ろをついて来ていることに。
振り返ってみたが、気配だけで、誰も居ない。
なんだ?
誰かが俺を尾行してる?
いや、でも、俺は槻田を尾行しているわけだから。
もしかして、そいつは槻田を尾行していて。
俺はその間に挟まっているだけだとか?
だとするなら……
殺されるっ!?
思考が飛躍し、凄い勢いで振り返ってみたが、やはり誰も居なかった。
その人気のない道を見ていると、足早にサラリーマンが今自分たちが来た道を歩いていった。
だが、もちろん、なんの関係もなさそうだった。
前を向き、しばらく槻田の後を追って行くふりをして――
突然、後ろに向かって走り出してみる。
だが、自動販売機近くに居た女子中学生を驚かせてしまっただけだった。
「ああ、ごめん」
と言って、三橋は槻田の尾行に戻る。
一体、なんなんだ?
気のせい?
俺のノイローゼ?
っていうか、これだけ意味不明な動きをしているのに気づかないあの男はなんなんだっ、と三橋は槻田に八つ当たりをする。
ひたひた……
ひたひたひた……
なんとなく忍ばせてしまう自分の足音に、誰かの足音が被っている気がする。
ひたひた……
ひたひたひたひた……
っていうか、追いついて来てるしっ!
相手の方が一秒間の歩数が多くなっている。
振り返り振り返り、足を速めた。
だが、やはり、それらしき人物は居ない。
ナナツキッ!
また俺に何か付けやがったかっ!?
三橋は、まず真っ先に七月を疑った。
まあ、日頃往生というやつだろう。
どんどん歩みは速くなり、横にその気配が並んだときには、駆け出していた。
見えないけど、なんか横に居るっ!
「おいっ、三橋っ?」
異様な形相で追い越していった自分を槻田の声が呼び止めようとする。
何をやってんだが、本末転倒だっ、と思ったが、足は止まらなかった。
気がついたら、その足音から逃げるように、四つ辻に飛び出していた。
「わあああああああっ」
鼻先をトラックが掠めていく。
「大丈夫か?」
落ち着いた声に、なんだ、この野郎と思いながら、槻田を振り返るが、彼が自分を助けてくれたことは明白だった。
いや――
もう一人。
槻田とは別に、自分の腕を掴んでいるモノが居る。
槻田の指の横に、違う指の感触を感じていた。
そちらを見、槻田を見上げる。
槻田は彼の横、誰も居ない空間を見ていた。
今、槻田に訊けば、何か教えてくれそうだったが、訊くのも癪だった。
その手で掴むなっ、と腕を振って振りほどき、そのまま行こうとしたが、振り返り、一応叫んだ。
「……どうもっ!」
どうも、なんなんだろうな。
日本人的な曖昧な表現だ、と自分で思ったが、今はそれ以上、何も言いたくなかった。
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