七竈

菱沼あゆ

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ラジヲ

寝るまで気になるっ!

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 休み時間、階段で七月は、牧田陽菜に出くわした。

 ちょうどいい、と思う。

「ねえ」
と下から上がってくる彼女に呼びかけると、彼女は、はあ!? という顔で見返してくる。

 いつもの出会い頭の威嚇だ。

 だが、前ほど小憎らしい感じはなかった。

 コミュニケーション的な匂いを感じる。

「駄目か……」
と呟き、手すりをを掴んで行こうとすると、いきなり襟を捕まれた。

 くえっ、と背後から不意打ちで絞められたニワトリのような声を出してしまう。

「何が駄目かなのよ。
 私の何が駄目なのよっ。

 思わせぶりにしゃべりかけて、消えようとしてんじゃないわよっ。
 寝るまで気になるわっ」
と一気にまくし立てる陽菜に、

「……寝るまでなんだ」
と苦笑いを返す。

 気になって眠れないとかはないのね。

 うらやましい性分だ、と思ったが、昨日、いろいろ考えながらも、爆睡していた自分が言えたことではないかもれしない。

 延々と悪夢にはうなされたが。

「いやいやいや。
 三橋くんがね」

 少し迷って、その名を出した。

 その方が陽菜が真剣に聞いてくれるか、逆上するか。
 どっちになるかわからなかったからだ。

「……み、三橋くんが、何っ?」

 つっけんどんな言い方だが、攻撃的になると言うより、照れているようだ。
 可愛いな、と思いながら、七月は続けた。

「何か良くない思考を続けていたら、悪い霊にとり憑かれたって言うのよ」

 陽菜の顔が不安げに曇る。

「あ、今は大丈夫なんだけどね。
 でも、まあ、こっちに移んないかなあと思って、いろいろ悪いことを考えてみようとしたんだけど」

「ちょっと待って。
 その過程で、なんであんた私に話しかけたの?」

「えっ?」
と言いながら、七月は笑って誤摩化そうとした。

「私に話しかけたら、またロクでもないこと言うから、自分が、この野郎~っと思うと思ったんでしょ」

「でも今、睨まれても、なんにも感じなかったよ」

 素直にそう言うと、陽菜は顔を近づけ、
「じゃあ、放課後まで待ってなさいよ。
 あんたが私を殴り殺したくなるくらいの血も凍るような罵詈雑言考えとくから」
と言う。

「いやいや。
 そんなことしてたら、牧田さんの方が先にとり憑かれちゃうから」

「陽菜」

「はい?」

「陽菜でいいわよ、七月。
 ナナツキとは呼ばないわよ」

 ……それは呼んでくださらなくて結構です。

「考えたんだけど。
 三橋くんがあんたを好きな間は、彼って、ずっと不毛なのよね。

 ってことは、彼はフリーのままってことでしょ?」

「はあ……」

「じゃあ、今は、その方がいいかとも思って」

 ポジティブだ、と思いながら、その顔を見ていると、陽菜は、くすりと笑い、

「いやいや。
 世の中いろんなことが起こるなってわかったからね。

 私にも一発逆転とかあるんじゃない? と思って」
と少しこちらの口調を真似つつ言う。



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