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妖怪の出る屋敷
ぬらりひょんが出る
しおりを挟む「ぬらりひょんが出るんだそうよ」
三橋たちにくらいいいだろうと思い、翌日の昼休み、七月は昨夜の話をしていた。
窓際の三村の席でお弁当を食べているときだ。
「……俺に票が入れられるなら、その市長には入れなかったが」
と三橋が呟く。
「もうすぐ投票できるようになるじゃない」
と言いながら、七月はパックのコーヒー牛乳を飲む。
食堂前の自動販売機で買ったものだ。
ちなみにメニューはコンビニ弁当。
コンビニ弁当、昨日の夕飯の残り、食堂のパン、が日々回っている昼ご飯だ。
三橋たちの立派なお弁当が羨ましい。
立派と言えば、いつか、仙石さんちの法事に行った帰りにお膳を持たされて。
その残りの腐りそうにないものをお弁当として詰め合わせようとして、英嗣に止められた。
『お腹下すからっ』
と言われて。
「あの家でお茶飲んでるとさ。
横に軍人さんが普通に座ってたりするのよ」
と言うと、ひっ、と二人が息を呑む。
4:44のもうひとつの世界を見たせいか、三橋もリアルに想像できるようだった。
「あれは放っておいていいから、ぬらりひょんを探せって言われてもねー」
「居ることを証明することはできるけど、居ないことを証明するのは、ほぼ不可能って言わないか?」
と三橋が言ってくる。
「んー。
まあ、今回はそこまで複雑でもないけど。
あの家の中に、今現在、居ないことがだいたいわかれば、いいみたいだから」
「それにしても、お前に泊まり込めってのは……」
と三橋が顔をしかめる。
「妖怪って、夜出るとでも思ってるんじゃないの?
いや、私も妖怪には会ったことないから、知らないけどさ」
妖怪っぽい生きた人間ならたくさん見るんだが、と得体の知れない英嗣の母や、なにを考えているのかわからない校長などを思い浮かべる。
「でもさー、前市長ってさ。
如何にも市長って感じで、冗談とか言いそうにないし。
妖怪の話なんてしそうにもないんだけど」
そう言う三村に、
「へえ、よく知ってるね、三村くん」
と七月が言うと、
「ごめん。
市長って、市長だから、よくテレビにも出てるよね」
と当たり前なことを言われる。
「ごめん。
見てないのよ、ニュースとか」
「お前、どうせ、お笑い番組とかしか見てねえんだろ」
と決めつけて三橋が言ってくる。
「それより、槻田が居ないからって、新しい男に、ひょいひょいついてくんじゃねえぞ」
「誰よ、新しい男って」
「いや~、今の話の流れからいって、高岡市長じゃない?」
と三村が笑う。
「莫迦じゃないの?
そんなことより、その市長公舎のぬらりひょんと七竃の一件は関係ないみたいなのよ。
なんで急に市長が七竈を切るなんて言い出したのか気になるから、ちょっと探りを入れてみようと思ってるんだけど」
「お前が、ぬらりひょんの一件を解決できたら、切らないでくれるって言ってるんだろ?」
七月はそこで考え込む。
いっそ、あの木はなくなった方がいいのではないかとも思うからだ。
だが、それを決めていいのは、恐らく自分ではないし、あの市長でもない。
決めていいのは、呪っている人間と、呪われている人間だけだ。
「で?」
「ん?」
「槻田先生から、そのあと、電話あったの?」
と三村が訊いてくる。
「あ、あったわよ」
橋本に送られ、家に帰った途端、計ったように電話がかかってきた。
監視カメラでもあるのかと思ったほどだ。
普段あまりしゃべらないくせに、高岡はなんの用事でお前と居たのかとしつこいくらい問い詰めてきた。
少し赤くなったこちらの顔を見、三村は、
「矢部さんって、可愛いね」
と言って笑う。
「もう~っ。
三村くんって、実は誰より女たらしなんじゃないのー?」
そう言い、揉めているのを、三橋が面白くもなさそうに眺めていた。
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