七竈 ~ふたたび、春~

菱沼あゆ

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ぬらりひょんの宝

困った人たちが集合してきました

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 みんなで人体模型を眺めに行ったり、ぼんやり授業を受けたりしているうちに、放課後になり、七月は自宅に帰った。

 橋本から連絡があり、夕食も出すし、迎えに行くと言われたのだが、なにもかもが緊張しそうなので、すべて断り、コンビニ弁当を食べて、バスで市長公舎まで行った。

 既に外は暗くなっている。

 砂利を踏んで間近に見上げると、鬱蒼とした木々に囲まれた市長公舎は相変わらず、なにか出そうだった。

 いや、出てるけど。

 建物に灯りは灯っているが、人の気配はない。

 広いから感じられないだけかもしれないな、と思いながら、七月は、よし、と気合を入れる。

 妖怪より、幽霊より、その何故か市長に協力している前市長の妹とやらが怖い、と思いながら、今にも線が切れそうな古いチャイムを鳴らすと、
「七月ちゃーん? 入ってー」
と忙しげな橋本の声が遠くから聞こえてきた。

 ガラガラと引き開ける昔風の引き戸に手をかけたとき、自分のものではない手がそこに被さり、勝手に戸を開けた。

 えっ、と振り返る。

「入るぞ、橋本」

 槻田が真後ろに立っていた。

「先生っ」
と声を上げると、もう先生はやめろ、という顔をする。

「なんで、此処に居るんですか?」

「いや、……英嗣が様子を見に行ってやれと言うから」

 新幹線で来た、と言う。

「言ってないよ」
とにやにや笑う声がすぐ側でした。

 英嗣が脇に立っている。

「お前が高岡の話をしに来たんだろ?」

「そう。
 僕は高岡市長と七竃の話をしに行っただけ。

 七月ちゃんの様子を見に来いなんて言ってないからね」

 僕のせいにしないでよ、と笑っている。

「おー。
 槻田じゃないか、どうした」

 しばらくすると、なかなか入って行かなかったせいか、橋本が玄関までやってきた。

 何故か腕まくりをし、手に雑巾を持っている。

「仕事、休んだのか?」

「休めない。
 朝には帰る」

「高岡がこの子を泊めるって聞いたから、心配で来たんだろ」
と橋本はあの人懐こい顔で笑ってみせる。

「心配しなくても、一癖も二癖もあるおばさんたちが何人も……」

「橋本くん、聞こえてるわよ」

 腰に手をやり、現れたのは、着物を着た美しい女だった。

 ちょっと英嗣の母親と雰囲気が似ている。

貞生さだおさん」

 はは、と橋本は悪びれもせず、笑っていた。

「矢部七月さんと、高岡の友達で、矢部さんの許嫁の、槻田さんです」

「槻田くんは知ってるわよ」
と貞生と呼ばれた女は言う。

「お久しぶりです」
と槻田も頭を下げていた。

「あれ? 前の市長の妹さんが泊まりに来られるって聞いたんですけど」

 この人がそうなんだろうか。

 なんで、先生が知ってるんだろう、と思っていると、貞生は、
「ちょっと、貴美たかみさんと私を一緒にしないでよ」
と言ってくる。

「私は、高岡真澄ますみの叔母よ」

 あー、高岡市長の……

 そういえば、そっくりですね……。

 顔も性格も、と思った。

「やだー、槻田くん、警察に戻ったって聞いたけど。
 いいの? 高校生と付き合って」

「……許嫁なので」
と槻田は高岡市長の拵えた嘘に便乗する。

「へー、どちらのお嬢さん?」

「仙石さんの姪御さんですよ」
と笑って橋本が答える。

 さすが、よく調べてあるな、と思った。

 へー、仙石さんのね、とマジマジと貞生に見られる。

 あの市長と同じ、目線だ。

 怖いよ、とつい、槻田の後ろに隠れ気味になる。

 おい……という目で槻田に見られた。



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