七竈 ~ふたたび、春~

菱沼あゆ

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ぬらりひょんの宝

スキャンダルに巻き込まれるのはごめんだ

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 橋本は、七月が使う部屋を掃除してくれていたようだった。

「此処、此処。
 此処が一番妖怪が出そうだから」
と少し離れのようになっている和室に連れていってくれる。

 えーと……。

 その説明のされ方で、此処に泊まりたいという人が居たら、見てみたい、と思っていた。

 和箪笥に文机。

 あとは壁に古い丸時計があるだけのシンプルな部屋だ。

「布団は押入れね。
 昼間、吉川さんたちが干してくれてたみたいだから」

 吉川さんというのが家政婦さんのようだった。

 誰かが廊下を歩いてくる音がする。

 貞生ではない。

 男の足音のようだ。

 高岡が顔を覗ける。

「槻田、来てたのか」

 特に驚く様子もなく、高岡はそう言った。

 橋本が振り返り、笑う。

「あれ? 市長。
 迎えに行きましたのに」

「いい。
 タクシーで帰った」

 ……駄目だな、この運転手。

 高岡は、ちらとこちらを確認し、
「で?
 槻田も此処に泊まるのか?」
と言ってくる。

「泊まるわけないだろ。
 七月の様子を見に来ただけだ」

 まあ、泊まってけ、と高岡は言う。

「お前も見えるんだろう?

 だが、この部屋には泊まるなよ。
 俺までスキャンダルに巻き込まれるのはごめんだからな」

 その発言に、なんだかんだ言っているが、やっぱり友達だな、と思う。

 槻田が霊が見えることを知っているようだった。

 周りの人間に彼がそれを話すことはないのに。

「じゃあ、酒の用意を」
と機嫌よく出て行こうとする橋本の襟首を高岡が掴む。

「酔ってどうする。
 妖怪が見られないだろうが」

「七月ちゃんは呑まないからいいじゃん」

「いいから、洋間の準備をしておけ」
と言いながら、高岡は壁の時計を見る。

貴美たかみさんが、十時には来るから」
と溜息をつく。

 その態度から、やはり、貴美さんというのが前市長の妹のようだと察した。

 ちらと貞生と家政婦の笑い声がする方を窺いながら、高岡は言う。

「仲が悪いんだ、貴美さんと叔母さんは……。
 高校の同級生らしくて。

 狭い町だったからな」

「じゃあ、一緒に来なくても」
と七月が言うと、

「市長が俺に代替わりしたのに。
 自分よりなんで、貴美さんの方が先に市長校舎に泊まるのかと叔母さ……貞生さんが」
と言い直す。

 おばさんと言うと怒られるようだ。

 まあ、確かに綺麗な人だが。

 しかし、その二人がどちらが先に泊まるかで揉めるのも変な話だと七月は思う。

 婚約者の人が泊まるのならともかくも。




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