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ぬらりひょんの宝
高岡の犬か
しおりを挟むなんだかんだ言っているうちに、結局、宴会が始まった。
それも、七月の部屋で。
「で、槻田はいつ結婚するんだ?」
と相変わらず、なにも考えてなさそうな橋本が言ってくる。
「誰が結婚するって言った?」
と槻田は言ったが、
「だって、相手、もう居るじゃん」
なにを待つことがあるのか、と七月を指さし、橋本は言う。
「七月はこれから、まだ大学に行ったり、就職したりするんだ」
うわー、先生口調になってきた。
この人、先生の方が天職だったのでは、と思ってしまう。
「でも、それ待ってたら、きっと別れるよね」
うっ。
「これって、あれ?
もしかして、槻田が女子高生を弄んで捨てるって話?
おい、という顔を槻田がした。
「いや、七月ちゃんが大学生になったら、視野が広がって、お前が捨てられるか。
今は唯一近くに居る大人の男、しかも先生だから、よく見えてるだけかもしれないしねー」
……橋本さん、恐ろしい人だ。
此処まで先生に簡単に、それも悪気もなく、言葉の刃を向けられる人間が居ただろうか。
悪い人でないだけに、槻田もなにも言えないらしく黙って、酒を呑んでいた。
それを高岡が少し可笑しそうに見ている。
意外といい組み合わせだな、この三人、と思っている間に、自分は呑んでもいないのに、なんだか眠くなり、うとうととしていた。
「あれー?
彼女寝ちゃったよー」
と橋本が言う。
槻田は自分の肩に寄りかかるようにして寝ている七月を見下ろした。
「可愛いねえ、女子高生って」
と橋本が微笑ましげに言うと、高岡が鼻で笑う。
「最近の女子高生のなにが可愛い」
お前、なにがあった……と思ったのだが、橋本は、
「いやー、でも、この子は可愛いよー。
さすが、慎重な槻田が選んだだけのことはあるね」
と感心したように言ってくる。
いや……こいつこそが、誰より恐ろしい女なんだが。
だがまあ、確かに、こうして寝ていると、ただ可愛い。
思わず、微笑みそうになったとき、
「襲うなよ」
と高岡が言ってくる。
市長公舎で問題を起こすなと言いたいようだ。
だったら、俺たちを呼ぶなよ、と思っていると、高岡は、
「……気に入らないな」
と呟いた。
「なにが?」
と橋本が問うと、高岡は、まだ寄りかかったまま寝ている七月をコップを持つ手で指差し、
「お前だけが好きな相手と結婚するとか。
僕があのつまらない女と結婚するって言うのに」
と言い出す。
橋本が廊下の方を見ながら、
「貴美さん、居るよー」
と緊張感なく笑いながら言ってくる。
「貴美さんだってわかってる」
と言う高岡に、橋本は、
「いいじゃん。
金も権力も手に入るんだからー。
なにかは犠牲にしないとねー」
と軽い口調だが、まあ、そりゃそうかもな、と思えることを言っていた。
「大丈夫だよ。
このカップルも別れるかもしんないじゃん」
おい、橋本……。
それでなくとも不安なのに。
お前、高岡の犬か。
それにしても、こんなに騒がしかったら、妖怪が居たとしても、出てこられないような気がするんだが、と思う。
ところで、さっきから、飲みすぎたせいか、トイレに行きたくなっていたのだが、寝ている七月を置いて、席を立つのに抵抗があり、我慢していた。
すると、ちらと廊下の方を見た視線に気づいただけで、高岡が言った。
「行って来い。
俺は子供には興味ない。
橋本は俺が見張っとく」
「どういう意味?
ねえ、それ、どういう意味?」
と橋本が騒いでいた。
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