七竈 ~ふたたび、春~

菱沼あゆ

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ぬらりひょんの宝

全部七竃のせいにして

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 久美は校長に見つかったせいか、早々に校長室前を逃げ出していた。

 逃げ足の速さは相変わらずだな、と思っていると、中から高岡が出てきた。

 反対側を向いて、校長と話していて、こちらを見ていない。

「ともかく、七竃は早急に」

 待て、と七月は高岡の腕を掴んでしまう。

 おっとしまった、と手を離したとき、高岡が振り返った。

「あ、えーと。
 すみません、市長」
と無礼を謝る。

 校長に教頭まで居たからだ。

 高岡は、にやりと笑い、
「ずいぶん気安く俺に触るようになったが、気があるんじゃないのか」
と言ってくる。

 あーりませんーっ。

 高岡は教頭に向かい、
「彼女は、僕がお世話になってる人の姪御さんなんで、昔から良く知ってるんですよ」
としゃあしゃあと笑顔で嘘をついていた。

「ああ、そうなんですか」
と教頭は頷く。

 今のは、仲がいい上でのやりとりだと判断したようだった。

 教頭が教務主任に呼ばれて行ってしまい、校長と高岡だけが残った。

「市長、私が協力したら、七竃は切らないでくれるんじゃなかったんですか?」

「そう言ったな」

「だって、今……」

「話は最後まで聞け、矢部七月。
 周囲に、阿呆な生徒が……

 ま、お前みたいな生徒が入り込まないよう早急に柵をしてくれと頼んだだけだ」

「そうですか……」
と少しほっとする。

「おかしな奴だな。
 お前こそが、あんなものはいらないと思ってるんじゃないのか?」

「そうかもしれません。
 でも、すべての謎が解けないまま終わるのも嫌だし。

 七竃で繋がっている人たちが消えてしまうのも嫌です」

 おねえちゃんや、先生たちと、繋がりが消えるのも嫌だ。

「高岡市長こそ、七竃が消えたら、青い男も居なくなって、ひよりさんを探すことも出来なくなるかもしれませんよ」

 高岡はなにも言わず、ただ考えていた。

 なに考えてんのかなあ、と思う。

 この人、本当にひよりさんを探したいのかな。

「わかった。
 実は市長がひよりさんを殺していて、全部七竃のせいにして、隠蔽したい」

「お前……思ってることが全部口から出てるが大丈夫か。
 俺が本当に殺人犯だったら、即座にお前を殺すぞ」
と言われる。

 まあ、本気で思っていないからこそ、口から出たのだが。

 そのとき、昇降口に橋本の姿が見えた。
 それに気づいた高岡が言う。

「お前の戯言に付き合ってる暇はない。

 校長、お手間とらせてすみませんでした。
 ありがとうございました」
と高岡は、校長には丁寧に頭を下げる。

 ついでのように、ちらと情のない目でこちらを見たあとで、
「あとで行くからな」
とぼそりと言った。

 あとでって、いつですか。
 行くって、何処にですか。

 はは、と半笑いのまま、七月は固まる。

 校長が、大変そうですね、という目でこちらを見ていた。



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