七竈 ~ふたたび、春~

菱沼あゆ

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ぬらりひょんの宝

怖いよ、この人……

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 ピンポーン。

 居ません。

 ピンポーン。

 業者にしてはしつこいな。

 ピンポーン。

 ……まさか、高岡市長じゃないだろうな。

 ピンポーン。

「近所迷惑だよ、七月ちゃん」
と頭の上に座っていた英嗣がドアの方を窺い、言う。

 英嗣にはドアの向こうに誰が居るのか、見えているのだろうな、と思いながら、やれやれ、と七月はまだ敷いていたコタツから這い出した。

 ドアを開け、七月は、
「すみません。
 うたた寝してました」
とそこに立っていた人物に向かい、言った。

「暇というのはいいものだな」
と嫌味をぶちかましたあとで、ほら、と高岡は、駅前のスイーツの店の袋をくれる。

「あ、ありがとうございます」
と、さすがにそこは礼を言うと、

「職業病だな。
 お前のようなものにまで気を使うのが癖になっているとは」
と自分で自分を憂う。

 自分でなに言ってんですか。

 そして、何故、勝手に靴を脱いでいますか、と思っている間に、勝手に上がり込んだ高岡は、ふーん、と室内を見回し、
「パトロンでも居そうないい部屋だな、女子高生」
と言ってきた。

「ああ、居るか、槻田が」

「いや、あの、槻田先生に出会う前から住んでますからね、此処。

 っていうか、女子高生の一人暮らしのところに来ていいんですか、市長」
と言うと、

「大丈夫だ。
 仙石さんと此処で密会してることにする。

 それに、今、お前一人じゃないだろう」
と振り返り言う。

「誰か居るんだろ」
と英嗣が居る辺りを見る。

 ひいっ。

「……見えないんじゃなかったんですか、市長」

「見えない。
 だが、お前の視線が先程から、ちらちらと動いているからな」
と確実に英嗣の居る場所を狙って視線を固定する。

「怖いよ、この人……」

 さすがお兄ちゃんのお友達、と見えないはずなのに、凝視されて、英嗣が苦笑いしていた。

 高岡は、ちらとコタツを見、
「まだコタツ敷いてるのか。
 どんだけ寒がりだ」
と文句を言い出す。

「いやー、花冷えですかねー。

 朝晩は冷えるんですよ。
 それに、コタツに入るの、なんというか、至福の時なんで」

 めんどくさいこともいろいろと忘れられます、と言うと、
「めんどくさいことって俺のことか」
と言ってくる。

 よくおわかりで、と七月は思った。



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