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ぬらりひょんの宝
古い家同士、なにかご存知かと
しおりを挟む「それで、なんで私に相談するのよ」
と英嗣の母に七月は言われた。
次の日の放課後、この間の礼を兼ねて、英嗣の家を訪ねて行ったのだ。
數葉に、ぬらりひょんのことを訊いてみるためだ。
七竃もだが、あちらも請け負ったんだった、と思い出したからだ。
三橋が聞けば、安請け合いするなと言うところだろうが。
「いえ、古い家同士、なにかご存知かと」
「あっちは名士といっても田舎者よ」
と數葉は切って捨てる。
ひいいいっ。
やっぱりこの人が一番怖い、と七月は思った。
相変わらず、英嗣を殺したのと同じ湯呑みと茶托を出してくるこの神経も。
だが、それがなんだか今は安心できた。
恐ろしい高岡に会ってしまったので、更に恐ろしいものの下に隠れたいというか。
「ぬらりひょんね。
市長公舎もあの巳波の家も出そうね、そんな間抜けなものが」
ほほほほほ、と數葉は笑う。
……なんか楽しそうだ。
嫌いなのだろうかな、市長と前市長が、と思った。
だが、その笑いを止める一言を言ってしまう。
「英嗣さんは、なにかに気づいてるようなんですが、話してくれないんですよね」
あ、しまった、と思ったが、遅かった。
英嗣の話題は危険だった。
そして、何故か、今日は英嗣さん、中まで付いて来てないし。
數葉は英嗣に会いたかっただろうに。
數葉さんの顔を見たくないのか。
死んでから反抗期なのだろうかな、あの人。
生きてる間にやればよかったのに、反抗期。
素直に毒薬なんて飲んでないで。
笑いを止めた數葉は、鼻で笑って言う。
「ともかく、七月さん、あんな家とうちを一緒にしないでちょうだい。
あんな陰惨な古い屋敷と」
いや、此処なんか、陰惨で殺人事件まで起きてますよね、おかあさま、と思ったが、言わなかった。
「ぬらりひょんの宝ね。
巳波の家はああ見えて困窮してるから、海軍のお宝なんて見つかってたら、弥太郎はきっと持ち出して使ってるわ」
「そうなんですか」
「七月さん、親戚に議員とか居るでしょ。
仙石の身内なんだから。
選挙に金がかかるの知ってるでしょうに」
まあ、それはそうなんだが。
「あんなもの、金で地位を買ってるようなものよ」
え~と……と思ったが。
確かに。
不正を働かなくとも、ただ選挙に出るだけで、金がかかるし。
市長のように通ればいいが。
何度も落ちれば、家も傾く。
「私は政治家が嫌いなの」
いやあの、政治家居ませんでしたっけ? この家、と思ったのだが、黙った。
なにも言わずにやり過ごしたほうがいい気がしたからだ。
英嗣もこうして、感情を飲み込む癖がついてったんだな、と思う。
今は吐き出したいだけ、吐き出しているようだが……。
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